第23話 続・休日、ポニーテールを触ってイチャイチャする話

「あー、堪能したわ! 日々の疲れが吹き飛んだみたい」

「それは何よりだよ……」


 ここは俺の部屋。

 今日は休日なので昼過ぎから優愛ゆあが遊びにきている。


 で、ベッドで膝枕をしてくれたのだけど、なんか俺の頬っぺたが好き放題にいじくりまわされ、優愛の方が得した感じになっていた。


 その優愛はベッドから下り、爽やかに伸びをしている。


「これ、いいわね。これから生徒会の仕事が忙しくなるだろうし、わたしのエネルギー充電法として積極的に採用したいわ」


「待って。逆に俺のエネルギーが吸い取られてる気がするんだけど……」


 ベッドに座り込み、俺は頬をさすりながら抗議する。

 すると優愛がニヤニヤしながら顔を覗き込んできた。


「そーんなこと言って。本当はわたしに膝枕してもらえて嬉しかったくせに」

「う……っ」


 図星を突かれて、つい言葉に詰まってしまった。


「そ、そんなことは……っ」

「そんなことはー?」


 ニヤニヤ顔でまた頬っぺたをつつかれた。

 つんつん、と細い指が攻め立ててくる。


「ほらほらどうなの? 正直に白状しちゃいなさい」

「うぅ……っ」


 そんなことない、と突っぱねることはできる。

 でも意地を張っても優愛には筒抜けだろうし、無意味に否定するのも大人げない。


 結果、俺は肩を落として白状するしかなかった。


「そんなことは……」

「ことはー?」


「……あるけれども」

「でしょー?」


 お嬢様はご満悦である。


「うんうん、真広まひろはそうやって素直にしてる方が可愛いわよ?」

「いや俺、男子だし。可愛いとか言われましても……」


「あら、この藤崎ふじさき優愛に可愛がられるのよ? 男子も女子も関係なく、光栄なことじゃない?」


「なんて安定の上から目線……」

「ふふん、実際わたしは人類の上位数パーセントに入るくらいに優秀だもの」


 優愛は胸元に手を当てて胸を張る。

 もう絶好調に有頂天だった。


「ふう、騒いだらちょっと暑くなってきちゃった」

「飲み物のおかわり持ってこようか?」

「平気よ。髪くくっちゃうから」


 そう言うと優愛はスカートのポケットからヘアゴムを取り出した。


 え、と思っているうちに明るい色の髪が手早く結ばれて……ポニーテールが出来上がった。


 お、おお……。


「? なに? どうしたの?」

「いや……」


 ちょっと照れくさくなってしまい、俺は視線を逸らす。


「優愛がポニーテールにしてるの、初めて見たなと思って……」


「そうだっけ?」

「うん、そうだよ」


 どこかで見ていたら、絶対に忘れるわけない。


 不思議だ。

 好きな子のポニーテールってなんでこんなに魅力的なんだろう?


「えっと……優愛、ちょっと後ろ向いてくれない?」


「? どうして?」

「いいからいいから」

「変な真広」


 不思議そうな顔をしつつ、背中を向けてくれた。

 途端、ポニーテールの毛先が目の前で揺れ、おお……っとちょっと感動してしまう。


 ベッドから立ち上がり、俺は手を伸ばす。

 揺れる毛先を摘まみ、ちょっと引っ張ってみた。


「えい」

「ふあっ!?」


 後ろ髪を引っ張られ、優愛がびっくりした顔で振り向いてくる。


「こらこら、何してるの!? イタズラ罪で訴えて勝って賠償請求するわよ!?」

「それについては示談でお願いしたいです」


「示談してあげるけど! でもいきなり女子の髪を引っ張るのはやめなさい。びっくりするでしょ!」


 とりあえず示談してもらえた。

 じゃあ次はいきなりじゃない方向でいってみよう。


「ポニーテールで遊んでいい?」

「いいけど……好きなの? ポニーテール」


「どうやらそうみたい。如月きさらぎ先輩がたまに言う『あたい見ちゃった、新世界!』って感じだ」


「その感じはわたしにはサッパリだけど……」


 ヘアゴムで結ばれたところに触れ、ポニーテールを左右に振ってみる。

 毛先が涼しげに右に左へ揺れていき、大変奥ゆかしい。


「おー」

「楽しいの? それ」


「かなり楽しいよ」

「わたしには理解不能な世界だわ……」


 と言いつつ、好きにさせてくれる辺り、優愛は優しい。

 そうして夢中でポニーテールで遊んでいると、俺はふと気づいた。


 ……うなじである。


 楽しげに揺れる毛先の向こう、白い首筋がとても眩しかった。


 ポニーテールも初めてなので当然、優愛のうなじを見るのも初めてだった。普段か隠れている部分を見てしまい、妙にソワソワしてくる。


「ねえねえ、あのさ、優愛」


 呼びながら軽くポニーテールを引っ張る。


「髪で呼ばないの。なあに?」

「うなじ、触っていい?」

「へっ!?」


 素っ頓狂な声を上げ、手でガードされてしまった。


「ダメなの?」

「ダメ……ではないけれど、でもなんかダメな気がするでしょ!?」


「そうかな?」

「そうよ!」


 うん、言われてみれば、毛先で遊ぶのとはちょっと意味が変わってきてしまう気がする。


 ただ優愛がこうやってNOを言うってことは……逆に考えると、頬っぺたの件をやり返せるチャンスだ。


「わかった。じゃあ、うなじは触らないからガードは解除して」

「なんかやけにあっさり引き下がったわね……」


 ちょっと警戒しつつも、素直に手が離れていく。

 その隙を狙い、指先でスーッとうなじをなぞってみた。


「ひゃんっ!?」


 跳ねるように優愛の体が反応した。


「わ、すごい可愛い声」

「ば、ばかばか! ダメな気がするって言ったでしょ!? 訴訟よ、訴訟!」


「示談でお願いしたいです」

「示談にしてあげるけど!」


「ついでにもう一回触ってみていい? 今の優愛の声、もっかい聞きたい」

「はあ? ダメに決まってるで……ひゃんっ!?」


 素早くまたなぞったら、また可愛い声が飛び出してきた。


 うわぁ、楽しいなこれ!

 俺の頬っぺたを触ってた時の優愛の気持ちがわかった気がする。


「真広、あなたねえ……っ」

「ごめんごめん」


 お嬢様がお怒りモードになりそうだったので、すかさず後ろから抱き締めた。


「許して? お願い」

「~~っ! なんか都合よく甘えてくるし!」


「甘えろって言ったのは優愛の方だよ?」

「それはそうだけどっ」


 むーっとむくれつつも、優愛の頬はちょっと赤い。

 お怒りが鎮まっているのが見てわかる。

 

 なるほど、こうやって甘えればお嬢様のご機嫌はコントロールできるのか!


 素晴らしい発見をした気がする。

 これは人類史に残る大発見だ。


「……真広、なんか良からぬこと考えてるでしょ?」

「考えてない。ぜんぜん考えてないよ?」


 と言いつつ、またイタズラしたくなってきた。

 ただ両手は優愛を抱き締めていて塞がっている。


 なので、白いうなじにそっと息を吹きかけてみた。


「ふーっ」

「ふにゃあっ!?」


 まさかこの体勢から攻撃が来るとは思ってなかったらしく、今までで一番体が跳ねた。

 

 だいぶ恥ずかしかったみたいで、かぁぁぁっと優愛の頬が紅潮する。


「セ、セクハラ! セクハラで訴訟よ!」


「示談で」

「してあげるけど!」


「じゃあ、安心してイタズラできるね?」

「も~、いい加減にしなさいってば~!」


 そんなふうに2人でじゃれ合った。


 イタズラする俺。

 恥ずかしがる優愛。


 うん、なんか……大変有意義な休日になりました。

 明日からも頑張れそうだ。



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次回更新:土曜日

次話タイトル:『第24話 離婚した真広パパ、息子の状況が激変してて腰を抜かす』

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