第22話 休日、部屋でこっそり膝枕をしてもらう話
さて、休日になった。
ここは俺の部屋。
今日は昼過ぎから
「わたしなりに今後のことを考えてみたの。ありがたく聞きなさい?」
そう言う優愛は俺の勉強机の椅子に腰かけている。
長い足を組んで優雅に座る姿は様になっていて、さすがはハイスペックお嬢様というところ。
一方、ベッドに座っている俺は浅くうなづく。
「と言うと、どういうこと?」
「ずばり、わたしと
またすごい話題を直球で言うなぁ、と思いながら、とりあえず拝聴。
「こないだ、
「まあ、そうだね」
俺と優愛の問題。
イチャイチャしたくなってしまう衝動があんまり我慢できないこと。
ちなみに今日は俺の部屋で2人っきりなので、本来は我慢しなくていいはずなのだけど……休みの日なので下の階にウチの母さんがいる。
さっき優愛を出迎えた時も『分かってるわね、2人とも?』と釘を刺されてしまったし、滅多なことはできない。
「で、早速、結論なんだけど」
「うんうん」
「わたしが主導権握ってた方がいいわね、そうよね、問題ないわね!」
「うわぁ……」
三段活用で言い切られた。
まあ、そういう話だろうなと予想は出来ていたので、俺は冷静に挙手をする。
「優愛先生、質問があります」
「はい、いいわよ。どうぞ、真広くん。ただし拒否権はないわ」
「そんな横暴な授業聞いたことない……」
「残念ながらこれは学校の授業ではないの。企業セミナーの質疑応答だと思ってくれれば間違いないわ」
「いや企業セミナーでも拒否権なしとかないんじゃない?」
「我が社はあるわ。むしろあることにするわ」
「ブラック企業にも程があるな、藤崎グループ……!」
微妙に優愛の実家企業の未来を憂いつつ、俺は質問を口にする。
「つまり優愛がカップルとしての主導権を握れば、俺たちの過剰なイチャイチャは防げるってこと?」
優愛はファサァと髪をかき上げて答える。
「そういうことよ。理解が早いわ。いい子ね、真広」
うん、早速主導権を握ってこようとしている気配だ……。
「ちゃんと考えてみれば、簡単なことだったわ。ほら今はなーんかわたしと真広が対等な感じになってるじゃない? だからどっちもストッパーになれずに歯止めが効かない状態なの」
「じゃあ、優愛がストッパーになるってこと?」
「代わりに真広は好きに甘えてきていいわよ? わたしがTPOに応じてコントロールしてあげるから」
うーん……なるほど。
単純な主導権争いの話かと思ったら、こっちへのメリットを提示されてしまった。
さすがは日本屈指の藤崎グループの社長令嬢。
交渉術は心得てるみたいだ。
ただ……。
「彼氏が甘えるってどうなのかなぁ……」
俺にも一応、男子としての矜持みたいなものはある。
彼氏が甘えるって格好悪い気がするんだけども……。
「このわたしのフィアンセがなにを古いこと言ってるのよ。価値観は時代と共にアップデートするものなんだから」
そう言いながら優愛は突然立ち上がった。
こっちに来ると、俺をグイグイと押し、ベッドに女の子座りする。
「というわけで――はい、おいで?」
手招きされ、目が点になった。
「え? お、おいでって……」
「膝枕してあげる。こういうの、男の子は好きでしょ?」
「い、いやいやいや……っ」
反射的に高速で首を横に振る。
めちゃくちゃ動揺してしまった。
「ダ、ダメでしょ! だって、下に母さんいるしさ……っ」
「別に膝枕ぐらいなら健全なお付き合いのうちでしょ?」
そ、そうなのかな?
いやでも……っ。
ちなみに優愛に膝枕なんてしてもらったことはない。
中学の頃は手を繋ぐのがせいぜいだったし、膝枕なんて初体験も初体験だ。
「ほら早くしなさい。急がないと膝枕が逃げちゃうわよー?」
「いや逃げるかどうかは優愛の気分次第でしょ……?」
「こうでも言ってあげないと、真広が踏ん切りつかないじゃない?」
仰る通りだった。
さすがは元カノかつ今カノかつ婚約者。
俺の性格なんてとっくに把握されてしまっている。
それに上から目線絶好調なお嬢様モードの優愛には正直、敵わない。
「えーと……そ、それじゃあ……失礼します?」
「はいはい、失礼しちゃいなさい」
今日の優愛は休日なのでいつもの制服姿じゃない。
明らかに高級そうなカットソーを着て、首元にはこれまた高級そうな小さめのネックレス。そして下はシワになりにくいミニのフレアスカート。
そう、シワになりくい素材だ。
たぶん最初から俺に膝枕をしてくれる目論見だったのだろう。
ただ男子としてはそっちよりも……ミニスカートということが気になってしまう。
「真広、目つきがヤラしい」
「――っ!? そ、そのようなことは!」
「『やった、ミニスカートだ! ロングじゃなくて良かった!』って顔してるわ」
「俺の顔、具体的なこと伝えすぎじゃない!?」
「ま、その方が喜ぶだろうと思ってミニ穿いてきてあげたんだけどね」
「じゃあ、良くない!?」
「うん、ぜんぜんいいわよ?」
と言うや否や、グイッと腕を引っ張られた。
俺は体勢を崩し、そのまま緩やかに優愛の膝へと倒れ込む。
――むにっ。
なんかすごい柔らかい感触きた!
「……っ」
「なーに黙っちゃってるのよー?」
からかうような声が頭上から。
俺はどうにかこうにか口を開く。
「い、いえ別に……」
「そう?」
ふふ、と余裕の声で笑い、優愛はさらに言う。
「ほら、ちゃんと上向きなさい」
「う、うん……」
倒れた拍子に頭が横向きになっていた。
俺は身じろぎし、優愛の膝から上を見上げる。
「う、わ……っ」
思わず声を上げてしまった。
なんていうか、大きい……っ。
ナイスバディなのは服の上からでも分かってたけど、下から見上げると、さらに迫力が違う。大きな曲線が二つあって、優愛自身の顔が見えるかどうかもギリギリなぐらいだ。
「真広、やっぱり目つきがヤラシー」
「いやこれは無理です! ごめんなさいとしか言えません!」
「まあいいけどね」
「いいの!?」
「ぜんぶ分かった上で、膝枕してあげてるの。感謝しなさい?」
「……はい、します。メチャクチャ感謝します……」
ウチのお嬢様、胸も大きいし、器も大きかった。
「でもあんまり大きな声出しちゃダメよ? おばさまに気づかれちゃうから」
イタズラっぽい顔で、しーっとジェスチャーをされた。
健全なお付き合いのうちとは言いつつ、やっぱりバレるのはよくない。
それは俺も同意見なんだけど、あらためて言われると、なんだか背徳感のようなものが沸いてくる。
同時にちょっと浮かれてしまってる自分がいるのも否定できなかった。
そんな俺の顔を見て、優愛が優しく目を細める。
「なに笑ってるの?」
「いや、なんていうか……俺たち、付き合ってるんだなぁと思って」
「なにそれ」
優愛が噴き出した。
「真広は膝枕してもらうと、恋人だって実感するの?」
「だってなんかこれ……すごく恋人っぽいから」
「まあね、気持ちはわかるわ。こんな体勢であなたの顔を見るのなんて初めてだもの」
細い指先がさらっと俺の髪を梳く。
それだけですごくドキドキしてしまった。
「こんなことなら膝枕ぐらい、もっと早くしてあげれば良かったわね」
そう言い、優愛は俺の髪を梳いた指先で、今度は頬っぺたをふにっと甘く掴む。
「ちょ、なになに? なんで頬っぺたつねるのさ?」
「んー? 真広の頬っぺた、柔らかそーと思って」
「優愛、目つきがヤラしー」
「失礼ね。わたしはカモシカのような美しい太ももを提供してあげてるのよ? 真広も頬っぺたぐらい献上するべきでしょ?」
「それはそうかもだけど……あっ、ちょ!?」
ふにふにっと頬っぺたで遊ばれてしまう。
「優愛っ、くすぐったいってばっ」
「えー、いいじゃない。ほらほら……あはっ、真広の頬っぺた、本当に柔らかーい」
これじゃあ、お嬢様のオモチャ扱いだ。
身じろぎしてなんとか逃げようとするけど、そもそも膝の上だから逃げ場なんてない。
「うりうりー。あはは、楽しー」
「あーもうっ。優愛、俺で遊んでるでしょっ」
「そうだけど?」
「当たり前のようにうなづくし……っ」
「なーに? イヤだった?」
「イヤではないけど……」
顔が熱くなってるのを自覚しながら、俺は目を逸らす。
「……恥ずい」
「あはっ」
途端、お嬢様の顔に笑みが広がった。
両手で俺の頬を挟み、まるで犬にするように撫でまわす。
「可愛いこと言っちゃって! ますます遊んであげたくなるじゃない。よしよーし! 真広ちゃんはいい子でちゅねー!」
「ちょ、これじゃあ彼氏じゃなくて犬扱いだから! あーもう!」
足をバタバタさせて抗議するけど、ご機嫌なお嬢様はぜんぜんやめてくれない。
結局、好き放題に撫でまわされてしまいました……。
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次回更新:明日
次話タイトル:『第23話 続・休日、ポニーテールを触ってイチャイチャする話』
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