第13話
アルデーレおじさんは紙にサラサラと何かを書いた後、私の証拠をとある仲間に贈りたいと言ってきた。
「仲間って?」
「それはお楽しみだ。」
少し迷ったが、もう私にはどうすることもできない。
世間は私を我が儘な公女とみなしているだろう。
テレビでああも派手に宣伝されては、他の新聞屋や情報屋に行ったって勝ち目がない。
なら私はアルデーレおじさんに賭けるしかなかった。
「どうぞ、私の証拠品全てです。」
そう言って私はボストンバッグから証拠品を全てアルデーレおじさんに渡した。
アルデーレおじさんはそれを箱に詰めて、それを持って出かけてしまった。
テレビでは延々と姿を消した私が映し出されている。
「はあ、これじゃ表には出られないわね。」
なんと私を見つけてお屋敷に送り届けた者には、100万ペルの賞金まであるという。
「今まで私に価値がないと言ってきた人たちが聞いて呆れるわ。」
更には街中を警察まで巡回しだしている。
まあ、公爵の娘が姿を消したのだから、当然と言えば当然なのだが。
これでいよいよ私は八方塞がりになってしまったわけだ。
しばらくしてアルデーレおじさんが帰ってきた。
「しかしまあ、ステラお嬢様の人気は絶大だな?こんなに必死で探される人なんて中々だぜ?」
そうおじさんは軽口を叩いてくる。
しかし、今の私にとってはとても冗談では済まされない。
ムスッと表情に出たせいか、アルデーレおじさんは私の頭をポンポンと撫でる。
「まあ、そう不貞腐れんなお嬢様。
2、3日ばかり待てばまた状況が変わるさ。」
そう言うアルデーレおじさんをしかし私はどうしても信用しきれない。
私を今売り出さないことは信頼しているが、どうにも何を考えてるのかが分からない。
はあ、とため息をつくことしか、今の私には出来なかった。
一方、少し時間を遡り正午のアルミール家にて。
そこにはドレッド・ベイカー伯爵とレオルド・ベイカー伯爵が揃っていた。
「お父様!ステラはドレッド伯爵との婚姻ではなかったのですか!?」
「レオルド伯爵がお見えになるなんて、聞いてませんわ!」
「レオルド伯爵様、なんてお美しい…」
そう娘たちは公爵である父に詰め寄った。
「待て、私の愛しい娘たちよ、実は私もレオルド伯爵が来るとは聞いていないんだ!」
「ええ、私がお呼びしましたからね。」
そう言って満面の笑みで3人娘の母は言う。
「ど、どういうことだ!」
「そのままですよ?レオルド伯爵には、ステラとの婚約としてお招きしました。」
「お母様!話が違うわ!何故ステラなんかに!ドレッド伯爵と結婚させると言っていたじゃないですか!」
そう3人娘のうちの1人、リザが母親に詰め寄る。
「まあまあ、これは計画なのよ?
ステラとの婚約として呼び出しても当の本人は逃げ出している。リザ、今あなたにとってチャンスなのよ。」
「お前、まさか…!?」
公爵は既に継母の作戦に勘づいたようだ。
「そうよ。リザ、ステラの代わりにあなたをレオルド伯爵の婚約者に推薦するわ。」
「お母様!本当ですか!?」
リザは飛び跳ねたくなる気持ちを必死に抑える。
「な、何を言っているんだ!リザはまだ11歳だろ!」
「あら、年下女性と付き合う殿方は今とても多いじゃない?私だってあなたとは6つ違いですわよ?」
「いや、そうじゃなくて、11歳は流石に早いだろうと!」
公爵が猛反対しようとするも、それをリザ本人に止められてしまう。
「お父様!結婚はまだ出来ませんが、婚約なら大丈夫ですわよね?私、レオルド伯爵様と婚約したいですわ!」
可愛い愛娘にお願いされ、公爵も不本意ながらに賛成することにした。
「因みにステラはドレッド伯爵に100万ペルで売る約束をしているから、そこも安心なさい?」
「成る程な、ステラを探すのに100万ペルなんて大金必要かと思ったが、ドレッド伯爵に売る為というわけか。」
そうと決まればと公爵夫人は2人の伯爵の元へ赴いた。
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