第23話
一時保護したと言っても、永続的に施設にいるわけではない。
親の同意が無くても保護ができる反面、保護した日から2ヶ月を超えることはない。
例外として、「保護の必要があると認めるとき」のみ延長される。
もっとも、この延長に保護者が同意しなければ、2か月ごとに家庭裁判所の承認を得る必要が出てくる。
モモちゃんの状態から見て、在宅指導ではなく施設への入所が望ましいと園長も判断しているのだろう。
私は、数日分の荷物を取りに戻ってモモちゃんと対面した。
第一印象は、虚勢を頑張って張って強く見せようとしているイメージがある。
大人に対する不信感、恐怖が感じられる。
モモちゃんと目を合わせるために、腰を落として挨拶をした。
「こんにちは、モモちゃん。私は、
私の対応に面食らったのか、モモちゃんはたじろいでいる。
「今日から私とおーちゃん、モモちゃんの3人で2ヶ月間一緒に暮らすことになったからね。私とおーちゃんは、週に1日だけ居ない時があるけど、別の先生がモモちゃんといてくれるから大丈夫だよ。宜しくね」
手を出して握手を求めてみるが、モモちゃんはそれが何か分からないのか困惑している。
私は、モモちゃんの手を取って握手した。
「これはね、握手って言って宜しくっていう意味だよ」
モモちゃんは、私と
その様子に、園長もホッとした様子を浮かべている。
「園長先生、モモちゃんを部屋に連れて行っても良いですか?」
「ええ、宜しくお願いします」
「はい。モモちゃん、園長先生にバイバイしようか」
「バイバイってなに?」
意味が分からないと首を傾げるモモちゃんに、
「今日は、園長先生と会わないからお別れの挨拶をするの。園長先生さようなら、って言うんだよ」
「ふーん……えんちょーセンセ、さよなら」
モモちゃんは、分かっているのかどうか怪しいが、取り合えず私の言葉をオウム返しに形ばかりの挨拶はしてくれた。
「じゃあ、行こうか」
私は、モモちゃんの手を取り宿舎へと移動した。
今、宿舎を使っている人はいない。
研修生の受け入れの時期でない時で良かった。
宿舎の一室を間借りする形で、私・おーちゃん・モモちゃんの三人でこれから生活を共にする。
八畳の1Rは少々手狭だが、仕方がない。
キッチンとトイレとお風呂は、共同になっている。
トイレはともかく、お風呂は私の家より狭い。
モモちゃん一人で浸かる分なら申し分ないだろうが、私が足をのばして浸かれるほどの大きさは無い。
まずは、ももちゃんを鑑定するとしよう。
名 前:桜木モモ
種 族:人間
レベル:1
職 業:なし/SUB職業:なし
性 別:女
年 齢:9歳
体 力:35/35
胆 力:3
知 力:5
腕 力:3
攻 撃:7
防 御:4
精神力:29
称 号:なし
装 備:薄汚れたワンピース・穴の開いた靴下
固有能力:なし
後天能力:家事4
体力と精神力は、他の9歳児よりも高い。
しかし、やはりと言うべきか知力は低かった。
それに、後天能力に家事スキルがついている。
レベル4となっているので、詳しく鑑定で見てみると簡単な料理や掃除・洗濯は出来るようだ。
親は、モモちゃんを学校に行かせずに家事をさせていたのだろうか。
「モモちゃん、ご飯を作るからおーちゃんの面倒を見てくれる?」
「めんどうを見るって何?」
「えっと……私がお料理をしている時におーちゃんが台所に来て遊び始めたら困るの。モモちゃんが、おーちゃんの遊び相手になって台所に行かない様にお手伝いしてくれるかな?」
「わかった。でも、どうやればいいの?」
遊ぶという意味が理解できないモモちゃんに、私は鞄からボールを取り出した。
「おーちゃん、取ってこーい」
ボールを
そしてボールを加えて戻ってくる。
そして期待の眼差しで見上げてくる瞳に、私は思わずンンッと咳払いして誤魔化した。
「ボール遊びは、おーちゃんのお気に入りなの。モモちゃんもやってみて」
ボールを渡すと、私の真似をして部屋の隅に投げる。
それを取りに行く
また投げる。
それを繰り返している隙に、私は部屋をソッと出てキッチンで昼食を作った。
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