新たな力で人生リスタート!

もっけさん

第1話

 お早う御座います。

 私は荷納かのうかがみ、26歳。

 大手広告代理店の孫請け会社メディアールで働く社畜OLです。

 趣味は昔ながらのRPGが大好物で、PSP1000を現役で酷使しながら遊んでいます。

 とはいえ、遊べる時間も通勤時間の1時間だけという非常に厳しいものです。

 朝9時始業にも関わらず、膨大な仕事のお片付け&準備のために毎日ノーギャラ出社しています。

 会社の規則で仕事は18時に退社と決まっており、その後に残るのであれば残業代は出ません。

 良くて21時、悪ければ0時を回る劣悪な職場なのに辞めないのかって?

 この不景気の中、仕事があるだけマシというもの。

 うっかり現実逃避をするために自分語りをしてしまった。

 私の目の前には、ステータスバーらしきものが見えている。

 左からデフォルメされた私と思わしきキャラアイコンと空白を示しているであろうアイコンが5つ並んでいる。

 私は、指を動かしデフォルメされたキャラアイコンを触ってみた。

 画面が切り替わり、私の現在のステータスが現れた。

 画面は半透明になっているため、少々見づらいのが難点だ。

 ステータスは、こんな感じだ。


名前:荷納かのうかがり

性別:女

年齢:26歳

体力:140/220

知力:60

腕力:12

攻撃:15

防御:11

精神:500

称号:社畜の鏡

固有能力:収納1・鑑定1・忍耐10・並列思考3・最適化4


 精神力が軒並み高く、次いで体力、その他はあまり宜しくない。

 レベルという項目がないので、レベルアップはしないのだろうか?

 それとも、固有能力の後ろに数字がある。

 恐らく、今の鑑定スキルではレベルや詳細なことは読み取れないのだろう。

「これは検証案件だな。社畜の鏡ってなんだよ。こんな不名誉な称号なんかいらねぇ……」

 もっとカッコイイ中二病心をくすぐるような称号が欲しかった。

 空白のアイコンを押すと、ピロンと音がし、脳内に「スキルセット可能です。セットしますか?」と女の人の声が聞こえて来た。

 ステータスバーにスキルをセットしないと利用できないというころだろうか。

「イエス!」


―セットするスキルを選択して下さい―


 私は、今取得しているスキルを全てセットした。

 ステータスバーには、ちゃんとスキルがセットされている。

 だが、自分の身体には何の変化もない。

「そもそも、スキルってどうやって使うんだろう?」

 ゲームみたいに一々言葉や念じたりしてスキルを使うのって面倒臭い。

 自分のスキルを眺めながら、ピコンと閃いた。

「最適化で、スキルを自動で使用できるようにすれば便利だよ」

 最適化のアイコンを押すと、ズラッと色んな項目が出て来た。

 よく読むと、私が一日に行っている作業項目が並んでいる。

 主に仕事関連が多いのは、気のせいだと思いたい。

 鑑定と収納に関連する項目があったので有効にしてみたが、特に変わらない。

 やっぱり、収納と鑑定のアイコンも押してみるか。

 ポチッと押してみると、画面に「有効にしますか?」の文字が出て来たので迷わず「はい」を選択した。

「アババババババ!!!」

 頭に流れ込んでくる情報量の多さに、酷い吐き気と眩暈と頭痛が襲って来た。

 慌てて、鑑定を無効にすると天の声が聞こえて来た。


―鑑定の熟練度が一定に達しました。鑑定1から3へ、並列思考3から4へレベルアップしました―


 ないわー。本気マジでないわー。

 あの一瞬でレベルアップ。

 精神力が高かったのと、忍耐を持ってなかったら廃人になっていたんじゃなかろうか……。

「…………よし。他に同じような人がいないか外へ確認しに行こう」

 幸い今日は休日だ。

 会社から休日出勤の連絡が来なければの話だが。

 念のためスマートフォンの電源は落としておこう。

 私は、サコッシュに最低限のものを入れて街へと繰り出した。

 

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