自殺したがる彼を止める方法
本田ゆき
○月×日
教室に差し込む夕陽は、なんて綺麗なのだろう。
そう思いながら斎藤 玲香は誰もいない放課後の教室をキョロキョロと見廻す。
彼は何処にいるのだろうか。
少しして、彼女の視界に探していた彼が飛び込んできた。
彼は教室の外のベランダに丁度足をかけようとしている。
彼女はまたか、と呟きながらベランダに出る。
「かーずま!」
私の呼びかけに、彼、黒澤 一真が振り返る。
彼は上げようとしていた足をそっと地面に戻す。
「一真、今日はどんな嫌なことがあったの?」
私は笑いながら彼の隣に移動し、ベランダの柵に腰をよりかからせる。
彼はベランダの柵に項垂れた様に顔を埋めた。
「…今日帰ってきた小テストの点が悪かった」
「はぁ、またそんな小さな事で自殺しようとしたの?」
一真が自殺未遂をする様になったのは最近のこと。
そして理由は毎回大した事のないものばかり。
「一真はさぁ、昔から繊細なとこあったけど、最近は特に酷いよね?」
私は心配そうに彼の顔を見る。
彼はずっと無表情で、何を考えてるかよく分からない。
「ごめん」
彼は小さく私に頭を下げる。
私はその頭をわしゃわしゃと雑に撫でながら
「次からはこんなこと、もうやらないでよね!」
と注意する。
これが、ここ最近の彼と私の1日のルーティンになっている。
きっと彼はまた明日も自殺しようとするのだろう。
そしてまた私が止めるのだろう。
昔は普通に遊んだりしてたのに。
また昔の様に戻れたらいいな。
そう思いながら、私は静かに目を閉じた。
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