第165話
一夜が明け、客人として招いたコレットをもてなすために一緒に朝食を取っている。
フォークとナイフが、皿に当たるのかカチャカチャと耳障りな音が聞こえるが顔には出さない。
アルベルトも、マナーのなっていない女を傍に置いたもんだ。
さて、どうしたものか。
食後のコーヒーを飲んでいると、コレットが重い口を開いた。
「……私をここに連れて来て何するつもりなの?」
「特に何も。どんな人物か見たかっただけですわ。それにしても、昨日から謝罪の一つもないんですのね」
「私は悪くない! 誘拐魔に謝罪する言葉なんて持ち合わせていないわ。それに、アル様が助けてくれるもん」
一晩時間をくれてやったと言うのに、この馬鹿娘はアルベルトが白馬に乗った王子様の様に都合よく登場するとでも思っているのだろうか。
最新の馬車を使っても2週間ほどかかるのに、物理的にも無理がある。
これだからゲーム脳で世界の中心が自分で回っていると本気で思っているな奴は嫌いなんだ。
「アルベルトが、貴女を助けるわけないでしょう。助けるなら、貴女が学園を去る前にしていたはずです。現に追放された後、あっさりと私の部下に捕まってしまうくらい貧困しているんでしょう?」
「……」
私の指摘に、コレットは悔しそうな顔で睨んでくる。
ふむ、図星だったか。
コレットの養父は、彼女を引き取ってから色んなところにお金を借りまくっていた。
どれもコレットの我儘のためにだ。
学園に編入する前から相当な借金をこさえ、編入後はコレットの大暴走で今頃、色んなところから慰謝料を請求されている頃だろう。
その金額は、領地や爵位を売り払っても払いきれない。
その筆頭に私が、多額の慰謝料を請求している。
今回被った精神的苦痛とアルベルトの矯正のために犠牲になった備品の数々を補填させるためにだ。
国に領地を没収されたら、領地経営を丸投げしてきそうで避けたい案件だ。
コレットは御落胤なので、ピューレ家の分家で優秀そうな人物を取り立てて、領地を管理させるのもありか?
「コレット嬢、貴女が望むならお家に帰してあげます。帰っても、多分居場所はないでしょうね。良くて修道院行き、悪くて娼婦落ちといったところかしら? 学園でも婚約者のいる男性と密室でヤルことをヤッていたのでしょう? 年期が明けても借金が返し終わるまで働き続けることになるから、閉鎖的な空間で一生を過ごすという意味では同じかもしれないわね」
「そんな……嫌よっ! ここは私の世界なのに、どうしてあんたが私よりも良い暮らしするのよ!! 不公平だわ」
フリックの言っていた話が通じないとは、本心から出た言葉だったのかと再認識した。
「貴女が、どうこう言って解決できる範囲を大きく逸脱してしまっておりますの。それに、この世界は貴女のものではなくてよ。勿論、わたくしのものでもない。主人公のチートヒロインと思っているなら、その思考はドブに捨ててらっしゃい」
コレットの有能性が見いだせないので、少し鑑定眼鏡で鑑定させて貰う事にした。
名 前:コレット・ピューレ
職 業:男爵令嬢/転生者
レベル:3
体 力:44
物 攻:17
物 防:9
魔 攻:21
魔 防:18
器用さ:9
素早さ:7
会 心:11
運 :6
連 携:2
Move :1
jump :1
スキル:生活魔法1
加 護:なし
称 号:
ステータスが平均より低いにも関わらず、
彼女が意識的に発動できるのかどうかで、ピューレ家に対する対応が変わってくる。
しかし、言語最適化というスキルも気になる。
レベルは低いものの、多言語の勉強をすれば身につくスピードが上がるようだ。
育てようによっては、優秀な諜報員になる可能性もある。
アルベルト以外にも養父や、クラスメイトの男達を手玉に取る実力はある。
頭の弱さが残念だが、壊滅的に悪いという印象はない。
「貴女の現状は、どう転んでも最悪としか言いようがなくてよ。下手を打てば、貴女の実父や実母にとばっちりが行くでしょう」
そう告げると。コレットの顔がサーッと音を立てて青くなる。
養父は兎も角、実父母に対しては情は残っているようだ。
「貴女に選択肢を上げますわ」
私は、ニッコリと笑みを浮かべて二つの選択肢を用意した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます