お前は、ヒロインではなくビッチです!
もっけさん
序章
第1話
私は、シュバルツ・フォン・アングロサクソン大公の孫娘リリアンと申します。
行き成りの語り口調ですみません。
目の前のアホ王子と一味に、絶賛糾弾中で内心『お前の人生終わったなpgr』しております。
私は、前世を引き継いでアースフェクトという科学の代わりに魔法が発達した世界に産まれ落ちました。
産まれ落ちた瞬間から前世の記憶があるので、この世界の言葉に慣れるのに苦労しました。
そうです。私の語学は、日本語オンリーで外国語が聞こえても苦手意識が先立って雑音に脳内変換されてしまうのです。
なので言葉を理解し発するまで五年も要しました。
家族には大層心配され知恵遅れと思われたようですが、算術や暗記・魔法に優れていたため何か特別な存在なのではないかと思ったそうです。
日本語を話し、漢字や平仮名・片仮名を使って絵日記を書いておりました。
それが見つかって以来、蝶よ花よと育てられました。
言葉を理解するのが遅かったのは、話しかけられる頻度が少なかったからと判明してからは、毎日家族や使用人達から話しかけられて五年と言う月日を重ねて人並みに話せるようになったのです。
話せるようになってからの読み書きを覚えるのは簡単でした。
寧ろ、そちらの方が楽と言っても良いでしょう。
アースフェクトを知る為に、六歳の誕生日に強請ったのは書斎にある本を読みたいというものでした。
私はアングロサクソン家直系の長女という立ち位置におります。
その時は上にも下にも兄弟はおらず、一人娘の私を可愛がってくれます。
魂は地球の日本産で、完璧に腐っておりました。
BLが大好物な隠れオタクの腐歴女でしたので、神話や歴史書は大好物で活字に飢えた私の細やかな願いに、祖父母も含め欲が無いと言われる程です。
そんな私が苦手だったのが、乙女ゲームでした。
異世界召喚物や学園物も含め全般がダメで、特に逆ハーレムルートとかは受付けません。
人生でたった一度だけ買った乙女ゲームがありました。
それが『恋レボリューション』というタイトルの乙女ゲームでした。
元美少女の主人公は100kgというデブに育ち、親の管理しているマンションに実兄と一緒に住んで、そこに入居して来た学校の人とダイエットを通して恋をしていくというもの。
絵が大好きな大手BL作家の絵師さんがイラストを手掛けていたので、迷わず購入して攻略本片手にスチル集めに勤しみました。
全コンプリートした時の達成感は、とても清々しく喜びにあふれておりました。
しかし、それまでのプレイは何の苦行だと心底思ったのも事実です。
アクションゲームは好きですが、召喚系のゲームは大嫌いなのです。
行き成り誘拐しておいて、この世界をお救い下さいとか言える厚顔無恥さに『嫌です』以外、私には選択肢がないのです。
自分の世界は、自分で守れよと思うのです。
他力本願な私ですが、もし自分の世界や国が亡ぶのならば抗うなり諦めるなりします。
誘拐してまで本懐を遂げようとは思わないのです。
アースフェクトには、魔法があり魔物が存在します。
魔物を束ねる者が魔王であり、それを歴代の御子が討伐しますが実際のところは封印しか出来ていないのは歴史の闇に葬りさられているのです。
何故それを知りえたのかは、私自身が精霊と親和が深いからで御座います。
日本と同じく、この世界にも八百万の神々がいらっしゃいます。
精霊は、人と神を繋ぐ存在と教わりました。
そんな彼等曰く、魔物は元は私達と同じ存在で彼等にも彼等の生活があるのです。
人の都合で『悪しきもの』と定められ、魔物や魔王を敵と位置づけることで人類が纏まると言っておりました。
私達の世界で、今一番幅を利かせているのがユーフェリア教会です。
聖女ユーフェリアを神として祀られた教会。
昔、魔物が世界の半分以上を占めていた頃に聖女ユーフェリアが人々の為に立ち上がり魔物を退け魔王を倒したと伝えられております。
そんな彼女の偉業を称える為に、ユーフェリア教会が生まれたのです。
魔物の脅威に怯える人々には、ユーフェリアは良い広告塔でもあったのです。
ユーフェリア亡き後、数百年に一度魔王が生まれ討伐する歴史を繰り返してきました。
その都度、聖女を世界各国から探し出し魔王討伐を押し付けたのです。
そんな事をしていれば、次第に聖女になりたがる者はいなくなりました。
困った各国の王たちは、異世界から聖女の素質がある者を召喚する方法を思いついたのです。
人一人を召喚するには、莫大な魔力エネルギーが必要になります。
犯罪者や奴隷を使って、過去に幾度も召喚儀式を行いました。
数多の人の犠牲の上に、聖女は成り立っているのです。
そして、私が生まれた年に魔王復活の予兆が現れ十年もの歳月を経て聖女召喚がされたのです。
とまあ、ここまでが前提のお話で御座います。
私は大公の孫娘ということもあり、今上陛下の寵姫の息子アルベルト・フォン・グランツリッヒ第一王子の後ろ盾になるために、王家との密約で婚約者となりました。
私には、ノブレス・オブリージュを全うする責務が生まれた時から課されておりました。
人よりも良い服を着て、良い物を食べ、勉学に励む場を与えられた対価なのです。
正直、アルベルトは顔だけ王子と思っておりました。
俺様気質で、モラハラ・パワハラ・男尊女卑するストレス源と婚約することは本当に嫌だったのです。
国が決めた以上は、私も歩み寄る努力をし時には叱り(9割)、良いことは褒め(1割)て接してきました。
魔王が復活し、聖女が召喚されてから全てが変わりました。
彼女は、召喚されてからアースフェクトを知るために学園に通うことになったのです。
要人ですので、私や王子が在籍している王立学園に入学してきました。
彼女は、自分が乙女ゲームのヒロインとでも思っているのか次々と見目麗しい男性に近づいて言葉巧みに篭絡する様は傾国の寵姫妲己を彷彿とさせました。
篭絡した男の中には、私の婚約者も含まれたのです。
そして冒頭の糾弾会をあろうことか、国賓が招かれる卒業式で行ったのです。
もう少し詳しく話が聞きたい?
長くはなりますが、幼い頃から今までのことをお話いたしましょう。
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