お嬢様は愛されたい!〜許嫁に振り向いて貰いたいお嬢様vs実はお嬢様大好きな不器用すぎる許嫁〜
本田ゆき
第1話
私には片想いの相手がいる。
それは許嫁であり幼馴染のイクリス・ユースウェルだ。
容姿端麗で勉学も体術も素晴らしく、正に生ける神童と騒がれている。
しかし彼は寡黙な性格も相まって、人気があるものの何を考えているのかよく分からないと敬遠されがちであった。
そんな私、メイ・サンチェスはお互い18歳になったら結婚するという、いわば婚約状態である。
と言っても、この婚約はそこまで強制力がない。
何故なら、サンチェス家とユースウェル家の両親同士がとても仲が良く、もしお互い男女の子供が産まれたら婚約させようという軽いノリで決まった婚約だったからだ。
そして、私の両親も、ユースウェル家のご両親も、もし別の人を好きになったり、お付き合いするのであればいつでも婚約破棄して構わないというのだ。
つまり、18歳になるまで待っている間に、もしイクリスが他の女性を好きになってしまえば、婚約が破棄されてしまう。
それだけは絶対に阻止しなければ。
今現在、イクリスも私も共に16歳、後2年の間に彼のハートを射止めなければならない。
そして今日は、ユースウェル家とサンチェス家の週に一度の会合の日である。
今日こそ彼の好感度を上げなくては!
そうと決まれば気合を入れておしゃれをしてみる。
髪を緩く巻いてみたり、お香やリップを塗り、ドレスもお気に入りの淡い水色のものを着ていこう。
イクリスが好きな色は青系統と前にイクリスの弟である、アイザック・ユースウェルに聞いた情報だ。
そしていざ会合の時、私はイクリスに自分が出来る満面の笑みで今晩は。と微笑みかける。
「ああ、今晩は。」
返ってきた返事はそれだけである。
私は続け様に言葉を投げかける。
「今宵は暖かくなってきましたね。」
「ああ。」
「そういえばまた体術の腕が上がったとか、アーチャー先生が驚いていましたわ。」
「そうだな。」
正直、心が折れそうである。
そんな私の思いを知ってか、隣にいた弟のアイザックはイクリスの肩にポンと腕を置き、
「兄貴、もうちょっと愛想良く答えろよな?」とからかうかの様に話に加わる。
「五月蝿い。」
イクリスはそう言ってバシッとアイザックの腕を振り払う。
そのやりとりは本当に仲の良さそうな兄弟のやり取りで私はふふっと笑ってしまった。
「アイザックの奴が五月蝿くてすまない。」
アイザックが間に入ってくれると一気に場が明るくなるし、イクリスとも会話がしやすくなる。
しかし、私としては何としてもイクリスと他愛ない会話を楽しみたい。
そしてあわよくば好感度もあげたいのだ。
昔はもう少し普通におしゃべりできたのにな。
年が経つにつれて、段々と話すことが減っていった。
イクリスはあまり会話が好きではないのだろうか?
楽しんでくれているだろうか?
おとなしい子の方が好きなのだろうか?
色々と悩んでいると、それを見かねたアイザックが話し始める。
「兄貴、この週1の会合実は楽しみにしてるんだよな?」
イクリスはそう聞かれてギロリとアイザックを睨む。
「えと、楽しみにしてるんですか?」
勇気を持って私も聞いてみることにした。
「……まあ、それなりに。」
と、何ともつれなさそうな返事が返ってきた。
「兄貴は本当に素直じゃないな!」
そうアイザックがイクリスの背中を叩く。
それなりとは、まあまあ楽しみだったのだろうか。
てっきりイクリスはこういうものはいつも嫌々参加していると思っていたので、意外だった。
まあ美味しいご飯が食べられるとか、そう言う理由とかだろうけど、そうだったとしたらそれは少し可愛いなと思ってしまう。
こうして、和やかに、いつも通りの会合が進んでいった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます