風のように

 やすらぎさんのところには、「ミケちゃんのツイートを見るようになって、うつの症状が改善されました」「仕事に行くのが嫌な朝も、ミケちゃんの笑顔を見て頑張れます」「愛猫が亡くなってペットロスだったけど、ミケちゃんを知って元気が出ました」などといったお手紙やDMが届きます。


 考えてみれば、すごいことです。


 お医者さまやカウンセラーが職業上の知識を尽くして行う治療の手助けを、ひとりの三毛猫が毎朝の笑顔とご挨拶でしてしまうのですから。




 でも、時には悲しい知らせが届くこともあります。


 2020年2月に、ミケちゃんが外猫だったころからのフォロワーさんが58歳の若さで逝去せいきょされました。

 約4か月の闘病生活。3回の外科手術と内科処置を終え、2月の初めに退院されてから、わずか三週間後のことでした。


 ツイッターのアカウントネームは「風」さん。

 

 風さんは、ミケちゃんに、ご自分の人生を重ねているようでした。


 外猫だったミケちゃんがやすらぎさんに出会えたように、悲しいことつらいことが多かった風さんも最愛のお連れ合いに出会うことができたからです。

 お二人は夜行バスに乗って、関西からミケちゃんに会いに来たこともありました。


 90日以上の入院生活で7割方絶食だった風さんは、再び食事が取れるようになったことを喜び、「毎日に感謝して一生懸命生きなければ! 頑張れ私! これからなんだから」と、ご自分を鼓舞していました。

 そして、また、ミケちゃんに会いに行くのを楽しみにしていました。


 それなのに……。


 風さんのスマホのアルバムの最後の1枚は、お連れ合いの写真だったそうです。

 寒がりな彼のために、病床で風さんが編んだネックウォーマー。

 そのネックウォーマーを身に付けた彼を撮った写真が、最後だったそうです。




 風さん。

 やすらぎさんもミケちゃんも、フォロワーさんたちも、決して風さんのことを忘れません。


 風さん。

 最愛の彼にまた再び空で会える日が来るまで、微風そよかぜになって彼を守ってあげていてください。


 Requiescat in Pace.

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