おばあさんとミケちゃん
まだミケちゃんが外猫だった頃、時々ごはんをもらっていたおばあさんがいました。
おばあさんは、やすらぎ治療室の向かいのアパートの2階に住んでいました。
足の不自由なおばあさんは、だんだんと2階から降りてくるのが難しくなってきました。それで、窓からミケちゃんが治療室にやってくるのを見ているようになりました。
ミケちゃんもおばあさんが大好きで、2階の窓から手を振るおばあさんをよく見上げていました。
ある日、そのおばあさんが弟さんと一緒に車椅子で、やすらぎ治療室に来てくれました。
「いつも2階の窓から見ているの。片足がないのに必死で歩く姿を見ると、私もまだ死ねないわなんて……」
そう言いかけて涙ぐむおばあさんに、やすらぎさんは思わずもらい泣きをしてしまいました。
そのころのミケちゃんのツイートです。
「おばあさんがお部屋の窓から手を振ってくれてるわ……。足が不自由なおばあさん。窓から私の姿を見るのが一番の楽しみだってやすらぎさんに話してたみたい。おばあさん、こないだは小さくちぎったカステラくれてありがとう。長生きしてね」
別の日のツイート。
「ありがとう、おばあさん。一つはドッグフードだったけど……(^_^;) ううん、何より気持ちがうれしくて。この町に生まれて、毎日生きるのに必死で、でも、町の人たちに支えられて、そしていつかこの町の片隅で死んで行くの」
この時、おばあさんがミケちゃんに持って来てくれたごはんの一つは、どうやらドッグフードだったようです。だけど、ミケちゃんのうれしい気持ちには何のかわりもありません。
それから4年後の2019年のツイートで、やすらぎさんはミケちゃんに謝りました。
「4年前、外猫時代のミケちゃん。こんな台詞を吐かせてしまってごめんなさい。ミケちゃん、町の片隅なんかで死なせはしないから安心してね」
この町に生まれ、町の人たちに支えられて必死で生きてきたミケちゃんは、いつしか人の心の支えになっていたのです。
今は、もう、あの窓に、おばあさんの姿はありません。
だけれど、ミケちゃんの瞳からは、窓から手を振っている大好きなおばあさんの姿が消えることはないでしょう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます