ボボボ坊主ランド〔ギャグ〕

楠本恵士

坊主丸揚げ①

 大学を卒業直前に、就活放棄を家族に宣言して家で、ゴロゴロしていたオレの部屋にやって来た実の姉ちゃんがオレの方にチラシを放り投げて言った。

「ちったぁ働け……そのチラシに、今度新装オープンする『ボーズランド』のアルバイト募集が載っているから」

 オレはチラシを軽く見てから丸めてゴミ箱に放り投げた。

 丸めたチラシは、ゴミ箱の縁に当たり姉ちゃんの足元に転がる。

 次の瞬間、空中に飛んだ姉ちゃんのボディプレスがオレの顔に炸裂する。

「捨てるな!!!」

 ボムッ!

「ぐぇ!?」

 姉ちゃんの巨乳に顔面を圧迫されたオレの口から、潰れたカエルのような声がもれる。

 姉ちゃんの乳に顔を埋めながら、オレは反論する。

「もごもご……オレ自宅を警備しているんだぜ。ホームガーディアンだぜ」

「それはそれは、大層な肩書きで──いくら、うちが金有り余っているからって。弟が腐っていくのは姉として見てはいられないので」

 姉ちゃんはオレの顔に乳を押しつけながら、タメ息をもらす。

「はぁ、家族旅行で金運上昇のパワースポット巡りなんてするんじゃなかった……お母さんが億単位の宝クジを連続で当ててから、うちの金運は尋常じゃないわね……お父さんは万馬券当てまくるし。株をやれば、どの株も当たりまくりだし。

あたしだって道を歩けば落とし主が現れない大金を連続で拾うし──福の神が集団で家にとり憑いているとしか思えない、金運良すぎて怖いからお祓いして福の神減らしてもらわないと」

 姉ちゃんが言う通り、一年前からオレの家族はやたらと金運に恵まれている。

 特殊詐欺の電話があった時も、応対した母親がうっかり億単位の金額を詐欺グループの口座に振り込んだ翌日に、あまりの高額振り込みにビビった詐欺グループがわざわざ頭を下げて返しに来たほどだ……その時に、詐欺グループはよほど慌てていたのか。

 母親が振り込んだ金額以上の額を封筒に入れて返してきた。

 オレはオレで、ふらっと入ったパチンコ屋で、どれだけ台を移動してもバカつきに当たりまくり。

 換金額が数十万を越えた頃には、パチンコ屋の店長が打ち止めにしてくれと泣きついてきた。


 姉ちゃんが、またタメ息混じりに言った。

「ハァ……別に豪邸に住んで贅沢しているワケじゃないんだけれどね。ごく普通の中流家庭の持ち家なんだけれど……この家のどこに福の神の巣があるのやら屋根裏かな?」

 オレの家族はオレも含めて、長年の質素な生活が身についている。

 それで税金を払っても払っても、金が舞い込んできて困るので政府のお偉いさんたちが。

 極秘にオレの家に国家予算や用途不明金の補填金を借りに来るほどだ。

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