お腹が弱い人必見!これさえあれば明日から安心

足袋旅

カクヨムコン 3題目 直観

商品プレゼンター(以下プ):「突然ですが、急にくる便意に苦労したことはありませんか」


男性アシスタント(以下男):「あるある。もうどうしていいか困っちゃいますよね」


プ:「ですよね。大事な用事の前に限ってや急いで出かけないといけない時、日常のふとした拍子。いつだって突然襲ってきますよね」


女性アシスタント(以下女):「ホントそれ。私もいつもそうで。もうおむつを毎日着けようかって悩んじゃって」


男:「実は私も……」


プ:「そういう方、意外と多いんですよ」


女:「私だけの悩みかと思ってました」


プ:「便意の話って人と共有しにくい話題ですからね」


男女:「「ですねー」」


プ:「そんな急な便意にお困りの方々にご紹介したい商品がこちら。便意がくるのを事前に直観として察知しやすくしてくれるという優れもの。突発的便意察知機能付きヘッドホンです」


男:「へー、これが。見た目はただのヘッドホンに見えますけど」


プ:「はい。ですが機能は本物ですよ。使い方も簡単で、こう普通のヘッドホンのように装着してもらうだけでいいんです」


女:「えっ、それだけでいいんですか」


プ:「はい。こちらのバンド部分に特殊な素材が使われておりまして、それが直観力を高めてくれるんです」


男:「はーっ、直観力を」


プ:「ただの直観力じゃありませんよ。便意に対してだけ!便意に対しての直観力だけを高めてくれるんです」


女:「うーん。ちょっと信じられませんね。本当にそんな効果があるんですか。ただのおしゃれなヘッドホンにしか見えませんけど」


プ:「それがあるんです。まずは頭が当たるバンド部分の表面に注目してみてください」


男:「どれどれ。あっ何か突起が付いてますね」


プ:「はい。こちらの突起が頭にあるツボを刺激して、脳を活性化してくれるんです」


女:「ちょっと待って。それだけですか。そんなのだったら指でこう押すだけでいいじゃないですか」


プ:「まあまあ話は良く聞いてください。ツボを刺激するのはあくまで、あくまで準備段階なんです。肝心なのはこのバンドの中身。実は中にこれが内蔵されているんです」


女:「わー綺麗ですね。宝石みたい」


プ:「その通り。こちらは瑪瑙です」


女:「えぇぇっ、本物の宝石なんですか」


プ:「はい。それにただの宝石、瑪瑙ではないんです。なんとこちらはある有名な神社で祈祷を受けたものなんです」


男:「ほおほお、それでその神社ってどこなんですか」


プ:「申し訳ありません。名前は公表しないという約束で忙しいところをお願いしているため、視聴者の方にはお教えできないんです」


男:「そんなぁ」


プ:「これだけは一つお教えしますとね、健康祈願で有名なところです。ですから効果は本物ですよ」


女:「着けてみていいですか」


プ:「ええ、どうぞ着けてみてください。色は三種類ありますがどちらになさいます」


女:「どうしようか迷っちゃうわぁ。うーん、やっぱりピンクがいいかしら。―――どうですか、似合います?」


プ:「とってもお似合いで。色は他に白と黒の二種ありまして、お好みのものを選んで頂けます」


男:「どう。効果はあるの」


女:「今はなんとも言えないかしら」


プ:「機能が本物かは実際に突然の便意がこないと分かりませんよね。というわけでこちらの検証VTRをご覧ください」




 画面が切り替わり、お腹が弱いと語る中年男性の姿が映る。



 普段の生活中に突発的便意察知機能付きヘッドホンを装着して過ごしてもらうという。

 早送りで時間が進み、夕方近く。映像は等倍へと戻る。

 電話が掛かってきて出掛ける支度を始めた男性。

 シャワーを浴び、身支度を整えている。

 時計を幾度か確認しているとテロップに十九時外出予定と出た。

 その五分前の事。

 男性が急に驚きの表情を浮かべ、トイレへと向かう。

 数分後に晴れやかな顔で出てきた彼は、車で約束の場所へと出かけて行った。

 後日のインタビューで彼は語る。


「私は本当によくお腹を下すんですよ。特に出かける前なんかに多くて、車に乗る直前だったり後だったりによく痛くなっちゃって。だから一度家に戻る、なんて二度手間をかけることに辟易してました。でもこれを使ってみて驚きましたよ。家にいる間にこうピーンとですね、閃きっていうんでしょうか。あっトイレに今行ったら大丈夫って気がしたんです。その後は順調に家を出ることができました。初めは疑っていたんですけど、効果を実感してからは安心感がありますね。もう手放せません(個人の意見です。効果は個人によって異なる場合があります)」



 VTRが終了し、画面はスタジオへと戻る。



プ:「ご覧いただいたように、他の使用者の方々からもたくさんの効果を実感したとの報告が届いています」


女:「わー、すっごーい」


男:「なるほどね。これは是非とも試してみたくなりましたよ」


女:「私も欲しい!だけどこんなにいい商品ですもの。アレ、気になりませんか」


男:「気になります。早速聞いてみましょうか」


男女:「こちらの商品、お高いんでしょう」


プ:「本来であれば結構な額がしてしまいます。ですが今だけ、今だけの特別セールを開催しております。なんとメーカー希望小売価格が二十万円のところ、特別に半額の十万円。更に番組終了後一時間以内のご注文に限り、追加でこちらの高級トイレットペーパーを五ロールお付けします」


女:「半額なんて大丈夫なんですか!?」


プ:「より多くの方々に突発的便意察知機能付きヘッドホンを知ってもらうための特別セールです。この価格でお売りするのは明日の零時までとなっております」


男:「これは急いで電話しないといけないですね。私もすぐに注文したいと思います」


プ男女:「皆様からのご注文もお待ちしております」




 テレビの画面に紹介された商品と価格、電話番号が表示される。

 僕はこれは買いだと訴える直観に従って、電話をかけるのだった。

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