その後の話

 最終話になります。

 ―――――

 

  

 俺が聖女に転生してからどれだけ時間が経過しただろう。


 すでに何年もの月日が経過しているのはわかっているが、どうもこの体は普通とは違うようであまり時間の経過が感じられないようだ。

 まあ、もう死んでいるから成長もしないし老化もしないからだろうが。


 相変わらずシェケルは教会の神父をしているが、婆さまは去年亡くなった。今は俺がその立場になって教会を切り盛りしているが、まだまだ婆さまがしていたようにすることはできていない。他のシスターたちの手を借りながらどうにか教会の仕事をしているところだ。


 シェケルとの関係は何というか家族と言っても差し支えない感じになっている。まあ、同じ屋根の下で長く生活していればそういう感じになるだろう。言っておくが男女の関係にはなっていない。今のところは、と付くが、おそらくこの先もこのままの関係が続いていくと思う。


 この体にはまあそこそこ慣れた。たまに驚いて頭が取れかけるのはご愛敬だが、女として生きる ―すでに死んでいるので生きるという表現はおかしい気もするが― のも違和感が無くなった。 

 たまに教会にやって来た野郎にナンパされて、それをあしらうのも相当経験した。教会に来てまでナンパするなよ、と言いたいが、この体の見た目が良すぎるのがよくないんだよなぁ。

 

 男は単純だから、見た目のいい女によくしてもらうとコロッといっちゃうもんで、教会で働いている以上、そういう対応が多くなるんだよな。

 そうして教会に来た男たちにちやほやされていると時々、シェケルから嫉妬というかやきもちを焼いているような視線を受けるのも、なんというか不謹慎な感覚ではあるんだが、悪くないって感じるんだよな。


「なにかありましたか?」

「いや、なんでもない」


 目の前で作業していたシェケルをじっと見つめてしまっていたため、それに気づいたシェケルに声をかけられたが、言葉と首を振って何でもないことを伝える。

 俺の対応にシェケルが少し不思議そうにこちらを見ているが気づいていない振りをしてやり過ごした。


 この生活がいつまで続くか。ずっと続いていてほしいと思えるということは、俺がこの生活を気に入っているってことなんだよな。


 あれ? そういやこれあれか? 最初にあの神に頼んだ聖女になる理由の一部が反映されているのか? いや、ちやほや云々は要望として言ってはないな。

 しかし、あの神に頼んだ要望はおよそ叶っているんだよな。


 聖女になりたいと理想の体型、それにしがらみのない環境。


 この世界に転生してしばらくの間はともかく、今では国の干渉もないし、田舎だから教会の上層部からの圧とかも来ていない。めちゃくちゃストレスフリーで過ごせている。


 なんだかんだあの女神もしっかり要望は聞き入れてくれていたってことか。


 転生するときに思い描いていた生活とはだいぶ違うが、この生活もなかなか悪くない。

 ここに来てからの生活を思い出して、そう思う。





 ―――――

 最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。


 ※本篇はここまでで、次話はおまけの登場キャラ紹介になります。



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