転生したらデュラハンだった

 

 おいおいおいおい! 待て待て待て待て!


 どう言うことだよ!? おぃい!?


 え? 嘘だろ!? マジで、そう言うこと? 


 これ、目の前にある体って俺の!? 嘘だろ?


 えええええ!? いや待て! 転生だろ!? 転生! 簡単に言えば生まれ変わりだ!


 新しく生まれるってことだろ? 何で既に首ちょんぱしてんの!? 死んでんじゃねぇかよ! 


 はぁ? 何だこれ、意味わからん。マジでわからん。


 あーもー、どうすんだこれ。と言うか何でこうなっているんだよ。あの自称女神に変な事なんて言ってないよな? 

 ん? いや、何か引っかかる………まさか?


 しがらみの無い立場って、これも該当すんのか? 


 は? じゃあ、これは生のしがらみもないってことでこうなってんのか? 


 生のしがらみもないから、人間のしがらみもない。人間のしがらみもないから聖女としてのしがらみもない。ってこと……なのか? 


 まあ、確かに一番面倒そうな聖女のしがらみがないから大分楽にはなると思うが…。

 ハハハ、これなら完全にしがらみフリーってか。


 ただ、これじゃあ、生きているのか死んでいるのかわからないじゃん。いや、わからねぇじゃねぇわ。もう頭と胴体離れているんだから、完全に死んでんじゃん。


 んあ? いや待てよ? 今の俺ってデュラハンってことだよな? 首が物理的に離れた状態で動いているし。

 だったとしたら、デュラハンってこの世界でどう言う扱いなんだ? もしかして魔物の類だったりするのか? アンデット?


 デュラハンが魔物だとすると、俺は魔物として生を受けたということか? 魔物でもしがらみはあると思うんだが、人間よりはマシか? それに食い物とかどうするんだ? 俺、現代人だぞ? サバイバル術とか野生下で生きるすべとか持ってねぇんだけど……


 ……まあ、今それを考えてもしかたがないか。とりあえず、頭を持ち上げてみよう。 


 しゃがんだ状態で片足を前だして少し前に進む。


 うわっ、変な感じだ。体は前に進んでいるのに、視界が前に行かない。


 腕を前に出す。あ、少しだけ右にズレたな。じゃあ左に戻し、って、反対だこれ。

 そうだよな。向かい合っている状態だから、右が左で、左が右だよな。いや、もっと簡単に言うと右にズレたら右に、左にズレたら左に動かせばいいんだよ。


 右にずらす。右に少しずらす。……何か、クレーンゲームをやっている気分だ。俺、あれあまり得意じゃないんだよなぁ。微妙に前後でズレる。


 うーん、お。ここだな。それで、少しだけさらに腕を伸ばして、キャッチっと。


 うおっ、冷たっ!? え? あ、アンデット的な状態だから体温ないのか。……それともただの冷え性か? ま、そんなわけねぇわな。


 ……ふむ、なるほど。冷たいが柔らかいな、ほっぺ柔らかい。

 自分で自分の頬をむにむにするのは変な感じだけど、これは悪くない。……前世だと女の頬なんて触ったこと無かったしな。


 とりあえず頬はここまでにして、頭を持ち上げつつ、立ち上がる。


 うおおっ!? 一気に持ち上げたから変な感じだ。ボールに視界を付けたらこんな感じなのか?


 うーむ、意外と重いな。いや、そう言えば頭は重いってどこかで聞いたな。


 もう少し頭を上に持ち上げて首を確認。周りが暗いからはっきり確認できないが、グロと言うよりクロだな。断面が黒で塗り潰されている。これで肉の断面が見えていたら悲鳴ものだからありがたいが、どういう状況なんだろうか。


 視線を下に向ける。服にかなりの土が付いているようだ。ああ、あの部分にも土が載って、頭を持っている状態だと払えないな。それに所々湿っているような跡もあるな。この状態で不快に思わないってことは感覚が鈍いのかないのか。


 とりあえず頭を首の位置に乗せてくっ付くかを試してみる。


 頭を乗せてから手を離して……あ、やべっ! 落ちたああぁあ!?


 落下の衝撃で頭が転がっていく。地面に落ちたことによる痛みは殆どなかったが、代わりに視界が一気に変わっていく。うわ、ここ微妙に傾斜が付いているのかよ。これ以上転がるのは止めてくれ!?


 転がる速度が速くなるようなことはなさそうだが、すぐに止まるような気配はない。


 やばい、これは酔いそうだ。目を閉じれば多少はマシに……いや駄目だ。変なところに転がっていったら場所がわからなくなる。


 頭がようやく停止した。辛うじて体の位置が見えるから、ここまで来れるというか行けるが、これ体が視界に入らない所に転がって行ったらどうにもできないぞ!? 適当に歩いても転ぶだろうし、最悪坂道だったら止まらないだろ。そうなれば確実に見失う。


 いや、悩むのは後で良いか。とりあえず頭を拾わないと、視界が斜めになっていて変な感じだ。


 慎重に歩く。体の足元が見えている訳じゃあないからな。下手すれば転びそう。いや、下手しないでも転びそうだな。って、転んだぁ!?


 転ばないように耐えようとしたから1歩2歩前に進んで……あ、ちょっとまてこのままだとオレの上にダイブして来るんじゃ!?


 ちょ、ああああぁぁああ!? ぐえっ!


 勢いがついた状態で前のめりに倒れて来た俺?の体が俺の頭の上に倒れ込んで来たことで、俺の視界は真っ暗になった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る