第16話 格の違い

 アミとユミの二人は早速媚びを売り始めた。


 体を密着させながら、


「あらぁ~♪ 二人ともいい男ねぇ♪」


「お姉さん達といいことしない~?」


 ベルナンドとジルベルトの二人は途端に赤くなってテレテレしている...という演技をしている。それに気付かないキャバ嬢の二人は、調子に乗ってますます体を密着させて来る。


 女性経験の少ない若者二人が、演技するのに必死になっている頃、満を持してアイシャとトリシャの二人が現れた。


 二人が登場した瞬間、夜会の時が止まった。


 アミとユミ程ではないが、二人とも露出が高めのドレスを着ている。胸元は大きく開き、大胆に切り込んだスリットからは太腿がチラチラ覗いている。


 だが少しも嫌らしさを感じない。寧ろ二人の美しさを惹き立たせているかのようだ。アイシャの方は妖艶さの中にも気高さを感じさせ、トリシャの方は大人びた中にも無邪気さを感じさせる。  

 

 二人は完全に場の雰囲気を掌握してしまった。夜会の参加者達全員が彼女達の一挙手一投足に注目している。それはベルナンドとジルベルトの二人を誘惑しようとしているアミとユミも同様で、彼女達から目を離せないでいる。


 人としても女としても「格の違い」それをまざまざと見せ付けられた気分だった。


 アイシャとトリシャはゆっくりと彼ら、彼女達の方に近付いて来た。


「ご機嫌よう。私達の婚約者の相手をしてくれてどうもありがとう」


 敗北を悟ったアミとユミは逃げようとした。


「あら? どちらに行かれるの? まだお話は途中でしてよ?」


 しかしトリシャに回り込まれてしまった!


「ここではなんだから場所を変えましょうか」


 そしてアイシャとトリシャの二人にがっちり脇を固められ、ドナドナされて行くのだった。



◇◇◇



 アミとユミを控え室に連れ込んですぐに尋問を開始する。


「なるほどね、それじゃあ口頭だけの指示で、メモも何も残っていないってことね?」


「「 は、はい、すみません... 」」


 二人はすっかり萎縮してしまった。


「フンッ、腐っても王子ってことね。そう簡単に証拠を残してはくれないか...」


「どうします? お姉様」


 アイシャはアミとユミに向き直って、


「確認したいんだけど、あなた達に指示を下した王子は、貴族の身分を詐称することの危険性を何も説明しなかったのよね?」


「「 は、はい、何も... 」」


「ヘタすりゃ絞首刑よ?」


「「 ヒイイイッ! 」」

 

 二人は怯え切ってしまった。


「取り敢えずあなた達はウチの屋敷に来なさい。匿ってあげるわ」


「「 えっ? 」」


「その代わり王子には作戦が成功したってウソを付くの。そして相手に気に入られたからしばらく滞在するって。良い?」


「「 そ、それにはどういう意味が? 」」


「あなた達の身を守るためよ。成功しても失敗してもあなた達は消されるだろうから」


「「 イヤァァァッ! 」」


 二人は半狂乱だ。


「落ち着きなさい。然るべき時が来るまであなた達の身の安全は保証してあげるわ」


「「 し、然るべき時? 」」


「そう、言い逃れの出来ない証拠が揃うまで。その時が来たらあなた達に証言して貰うわ。良いわね?」


「「 わ、分かりました! 」」

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