第14話 仕掛ける

 アイシャとトリシャは家令のハンスから報告を受けていた。


「その庭師は王子達の放った密偵とみてまず間違いないわね。どんな男なの?」


「中々のイケメンですぞ。ハニートラップを仕掛けられそうなくらいですな」


「私達の内どちらか一人、いえ違うわね。あわよくば二人ともかしらね」


「今はどう泳がせているんですの?」


「決して屋敷には近付かせず、庭園の奥の方を担当させております。お嬢様方の目に留まることもありますまい」


「う~ん、それだと利用し辛いわね。屋敷に近付かせて頂戴」


「よろしいのですかな?」


「えぇ、実際にこの目で確かめたいしね。それにそろそろ王子達が何か仕掛けてきそうだし」


「分かりました」


「ところで、ベルとジル宛に何か荷物が届いたって聞いたけど?」


 ハンスは言い淀む。


「それはほら、アレです」


「アレって何よ?」


「18歳未満禁止的な...」


 アイシャとトリシャの頬が赤く染まる。


「呆れた...あの腹黒王子ども本当にロクなことしないわね...」


「それもいささか特殊な性癖向けのモノばかりでしてな...」


「聞きたくないけど...例えばどんな?」


「姉妹丼、親娘丼、寝トラレ、不倫、BL、熟女物、などてしたな...」


「お姉様、これって...」


 トリシャが気付いた。


「えぇ、どうやらかなり前から仕込んでいたようね...」


 二人の婚約破棄に直接絡んでいたことが証明された。


「お姉様...私、怖いです...」


 震えるトリシャの体をアイシャが優しく包み込む。


「大丈夫よ。今度何か仕掛けてきたら、必ず尻尾を掴んでお父様に報告しましょう。それでお父様から国王陛下に抗議して貰いましょう」


「はい...」


「お姉様方、このハンスめも微力ながらお手伝い致しますぞ」


「ありがとう」


「仕掛けると言いますと、近々ボルドー子爵邸で夜会を開くとの連絡がありましたな」


「ボルドー子爵...ウチの寄子の中では一番大きな家だったわね...返事は?」


「まだです」


「では明日、例の庭師に聞こえる所で参加すると言ってみましょうか」


「了解しました」



◇◇◇



 3日後、トリスタンの執務室にランドルフが飛び込んで来た。


「兄上、密偵から連絡がありました! 2日後、キスリング領地のボルドー子爵邸で夜会が開かれるそうです! その夜会にアイシャとトリシャの二人が、例のトーレス家の兄弟を伴って出席するとのことです!」


「良し! 至急キャバ嬢に連絡しろ! すぐに向かわせるんだ! 偽りの身分は用意してある! 彼女達は今からアルザス子爵令嬢だ! ボルドー子爵家には急遽参加したい旨連絡しておく!」


「分かりました!」


 まんまと餌に食い付いた二人だった。

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