第3話 王子達とのお茶会
王宮へと向かう馬車の中で、アイシャとトリシャは作戦会議をしていた。
「このタイミングで呼び出すってことはやっぱり...」
「えぇ、十中八九、いえ100%婚約の打診でしょうね...」
「「 はぁ~... 」」
二人は今日何度目になるか分からない、長い長いため息を吐いた。
「いい? とにかく相手に嫌われること、それから言質を取られないこと、大事なのはこの2点よ!」
「分かりました! 面倒な妃教育なんてご免ですからね!」
「私なんかヘタしたら国母になるかも知れないんだから! そんなの絶対ご免よ! 絶対阻止するわよ! 私なんかが国母になったりしたら間違いなく国が滅ぶっつーの!」
「私達のスローライフの夢を叶えるためにも必ず!」
二人は闘志を燃やすのだった。
◇◇◇
「やあ、良く来てくれたね。アイシャ、トリシャ、二人とも相も変わらずなんとお美しい」
「お招き頂きましてありがとうございます。トリスタン殿下、ランドルフ殿下、ではこれで...」
「いやいや、席に着く前に帰ろうとしないで! お茶会の意味分かってる!?」
「「 チッ! 」」
「今舌打ちしたよね!? しかも二人揃って!?」
「「 記憶にございませんわ 」」
「仲良いな、君達!? ま、まあとにかく座って。今お茶を用意しよう」
アイシャとトリシャが渋々腰を下ろすと、すかさず侍女がお茶を入れた。ちなみにさっきからずっと相手をしているのはトリスタンの方で、その間ランドルフは声を押し殺してずっと笑っていたりする。
「それで御用件はなんでございましよう?」
アイシャはお茶に口も付けずに尋ねる。
「早いな...せめてお茶くらい飲んでから...まあ、いいか」
トリスタンは色々と諦めた。
「君達が婚約を破棄したという話を聞いてね? 今ならなんの障害もない訳だ。だったら僕達と婚約を結んでも...」
「「 お断りいたします 」」
「だから早いって! しかもまた二人揃って! ってか、せめて最後まで言わせて!」
「断る理由を聞いてもいいかい?」
すると今まで笑っていたランドルフが聞いてきた。
「もう既にお互い次の婚約者が決まっていますので」
「あれぇ? それはおかしいなぁ? まだどの家も婚約の打診はしてないって聞いたよぉ?」
そう言ってニヤニヤと嫌らしく笑うランドルフに「どうしてそれを!?」と言いそうになったアイシャは、慌てて言葉を呑み込んだ。どうやらハメられたらしい。どこからも打診が来なかったのは、間違いなく王家が圧力を掛けたからだろう。アイシャは唇を噛んだ。
「...以前、打診を頂いた方ですの。その時はお断り申し上げたのですが、改めましてご連絡しましたところ、あちら様も乗り気になって下さいまして、前向きに検討したいと...」
かなり苦しいがなんとか搾り出した。だがこんな言い訳はこの場凌ぎにしかならないだろう。
「ふぅん、それはどこの家なの?」
「決まらなかった場合、相手方にご迷惑が掛かりますので、家名を明かすのはご容赦下さい」
「まぁいいや、でも、決まらなかったら僕達と婚約するってことでいいね?」
アイシャは言葉に詰まった。ことで言質を取られる訳にはいかない。
「決まらなかった場合、私達は修道院に入りますわ」
すると今まで黙っていたトリシャが突然、爆弾発言した。
「「「 えっ? 」」」
三人はいきなりの宣言にビックリした。要するにアイシャも。
「だってこれだけ婚約破棄を繰り返す瑕疵の付いた女が、王子達方に相応しい相手とは到底思えませんでしょう? なにせ私達は『婚約破棄姉妹』と呼ばれているそうですからね。では、お話も済んだことですし、お姉様、帰りましょう」
「え、えぇ...で、ではご機嫌よう...」
二人が帰った後には、呆然とした顔の王子達だけが残されていた。
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