第44話 一人だけだと思ったら大間違いだぞ

 電車を降りる。


 今日は……賑やかな一日だったな。まだ一日は終わってないけれど、それぐらいに濃密な時間を過ごした思う。


 高瀬、三輪先輩とご飯を食べに行っただけなのに。


 きっとそれほどまでに記憶に残るような楽しいことをしたんだろう。自分の本能というか、心がそう感じている。




 ***





 そろそろ自宅が近づいてきた。


 鞄から鍵を取り出し、それを鍵穴に差し、回す。


 そして扉を開けると





「兄ちゃん!おかえり!」



 目の前にいるのは青色のチャイナドレス、ストフ◯イの春麗によく似ている衣に身を包んだ我が弟、葉瑠はるだ。中学二年生。


 葉瑠も帰宅が少し早いなと一瞬思ったが、彼は今日頭痛で学校を休んでいたのだった。



 葉瑠には小学校低学年頃から女装癖がある。外で女装することは無いが、家では常に女装をしている。


 例え着用しているものが動きにくいものだとしても家では常に女装だ。


 冬場の女性のファッション根性に似たようなものなのか、その精神力は素直に尊敬する。


 弟が女装するようになった経緯というのは「俺」らしいが、全く見当もつかない。



 低学年頃から始まったのだから、きっかけはそれより前ということ。尚更覚えているわけがない。


 幼児期健忘といものがあるのだから。



 親も弟の女装には寛容で良い家庭だとは思う。母の喜代子も「まったく、私の子供はこんなに可愛い~」みたいな感じで父の浩介も「今は多様性の時代だからな。何よりも可愛い。」みたいな感じで許している。


 そこに問題は全く無い。



 問題はこの先だ。



 "葉瑠"が俺に必要以上に絡んでくること、しかもかなり大胆に。際どく、ゑろいレディースの下着をつけて俺の部屋に突撃してくる。勿論、両親はこのことを知らない、俺が言う訳も無い。



 だって兄弟が自分自身を慰めているのを見て、夕飯時にその話題を振りますか?



 父さんが江口サイトを観ているのを知って、母さんにわざわざ言いますか?



 いいや、しない。内緒にするでしょう?



 よってこの事は兄弟の秘密なのだが、本当にヤバイ。


 弟が女性のするような色仕掛けの真似事をしてくる。






 本当に、本当に……






「葉瑠、扉開いてるんだからそんなに大声を出すなよって……その服、お前また買ったのか?」


「えへへ、可愛いでしょ?amaz◯nで40%offだったんだ!」


「まったく、そんな事だからお前の部屋はいつまでも片付かないんだぞ?クローゼットもいっぱいだし、断捨離でもしたらどうだ?」


「そんなことできないよ。皆僕のお気に入りのものなんだ」


「お前はそう言うだろうと思ったよ、ところで頭痛治ったのか?」


「四時間くらい寝たら治ったよ!じゃあお兄ちゃん……」


「何だ」


「一緒にお風呂入ろう」


「部活のための筋トレしてから一人で入ります」


「え~~」







 これが毎日です。















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ヱっろい弟モノの漫画を読みまして、登場させたくなり急遽。


ストーリーが長くなりました。

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