第25話 邂逅

「図書室来たことある?」


「無い…かな?行ってみようかなって思ったことあるけど、休み時間に手嶋さんとかに捕まっちゃってたりしてたから…」


「全く、贅沢な悩みだよなぁ。」


「そうでも無いと思うけど…」


「価値観バグってんなぁ。」


「図書室ってこの道で合ってるの?」


「うん、合ってるよ。保健室の前を通って次の角を右に曲がったらすぐだ。たまに図書室に保健室独特の匂いが漂ってくるんだ。」


「図書室もそれなりに独特の匂いするんだけどね。」


「まあまあ。」





 ***


「着きました、ここが図書室です。」


「んー、知ってます。」


 今日は三輪先輩と高瀬を会わせて一緒に「カラフル」談義をしようっていう感じ。図書委員の仕事をしながらね。


「あ、こんちわ。」


「ん、どうも。」


「あの先輩。」


「何?」


「こいつ、高瀬って言うんですけど『カラフル』が好きみたいでお話がしたいということでしてね、そういう事です。」


「うん、いいよ。」


「だって行って来な。」


「あ、う、うん。は、初めまして、高瀬…悠…です。あ、初めましてじゃないと思います。」


「あ、ああ確かにそうかもね。どうも、三輪光です。よろしくね。」


「よ、よろしくおねがいします!」


「俺は返却対応とか棚に返してたりするんで、どうぞ。」


「うん、分かった。任せるね。」


「ういす。じゃあ、この返却された本戻してきますね。」






 ***


「高瀬くんだったね?」


「あ、はい。」


「『カラフル』のどんな所がすき?」


「あ、えーっと…」


「あ、私から言った方が良いよね。」


「あ…」


「私はね、なんか地獄とかの世界があって凄い厳格なルールだけで成り立っているんじゃなくて、現代の改革っぽいのがあってユーモアあるなぁってとことかね、学生のリアルっぽいのをうまく描写してるの凄いと思ったよね、それとか、人間の人格を形作っているのはやっぱり記憶なんだろうなぁっていうのを気づかされたり、家族との交流は友人との交流と同じくらい大切で、心を豊かにして自分の心にも正直になる主人公を見てて何か感動しちゃってね。」


「た、確かにそうですよね…」


「あ!喋り過ぎちゃったね。次、高瀬くんどうぞ。」


「え、えーっとですね……」


「うん。」


「さっき先輩が言ってくれてたみたいに、主人公とかの成長とか真理とかも魅力だと思うんですけど、僕は学生ならではのドロドロした事案に対しての相乗効果みたいな……何か日本語がおかしくなってますけど、僕が言いたいのは……社会人とか大人がやってても少しモヤッとするけどそういう物だと割り切れる事も学生がそれをやることで、凄く闇を抱えるようになるっていうのが上手いと思ったんですよね。」


「何か分かる気がする。それってあの女の子のやつだよね?」


「多分、それです。」


「あの事件を通して主人公の葛藤が見れたりしたのも素晴らしいよね。」


「そうですよね!」


 高瀬くんが段々心を開いてきてくれた気がする……あともう少ししたら「あれ」できるかな?


「それはそうと!結末には驚いたよね~!」


「ホントにそうですよね!予想だにしない結末でしたよね、例えるとするなら…マジシャンが使うミスディレクションみたいな感じですよね!」


「ミ、ミスディレクションって何?」


「ああ、何か本命の仕掛けから観客の意識を別のダミーによせて本命を陰にする……って感じの技術テクニックです、多分。」


「ああ、なるほど。確かにあの結末を見破るには根本から見直さないと気づけないから、ある意味ミス…ディレクションって言えるかもね。例え上手いね。」


「あ、あ、ありがとうございます!」


「んふふ。」


 そろそろ良いかな?きっと高瀬くんは一方的な人が苦手で友達が少なかったんだろうなぁ。高瀬くんには中々濃い人が寄ってきそうだし、寄ってきてるからなぁ。


「あのね、急に悪いんだけど…良いかな?」


「な、何です?」


「あの。」


「はい…」


「私……平本くんの事、多分好きなんだよね。」


「……」























ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

波乱のかほりがするぜぇ…


それはそうと、何で三輪さんは高瀬くんに友達が少ないことを知っていたんでしょうねぇ…

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