第2話 思わぬ生家訪問

 水面へと浮かび上がってくる感覚で目が覚めた。

 体が痛い。そういえば魔力切れして倒れたんだっけ…


 とりあえず周りを見渡す。椅子、机、額縁の押花、花…なんだこの花、ツンツンしてる。あとは紙…?


 とりあえず読んでみようと思う。どれどれ…?


『両親へ

私は自分を磨こうと思います。そのためにはここにいてはなりません。なので旅に出ます。満足したら帰ります。』


 なるほど、置き手紙か。それにしてもこやつは、何のために自分を磨こうと思ったのか。


「てかそもそも、ここどこだ…? リルは…? そうだ! 確か俺は戦闘中に倒れて…!」


 とりあえずリルはどこだろうか。メイドなので、俺と遠く離れたところにいるとは考えられない。


 とりあえず、家の中でリルを探すことにした。


☆☆☆


 階段を下りて調理場だと思われる部屋にリルはいた。リルはエプロンを付けて料理をしていたようだ。


「あら、お目覚めになりましたか」


「おうリル、おかげさまでな。ここまで運んでくれたのか? そもそもここはどこだ?」


「リアム様、質問は1つずつでお願いします。ではまず1つ目、ここに運んできたのは私ではありません。あとからやってきた男の人…方に運んでいただいたのです」


「なるほど、あのいかにもタンクみたいなあの人か」

 頭の中で思っていたつもりだったが口に出してしまったようだ。そんな俺の様子も気にせずリルは続ける。


「そして2つ目、ここは私の生家です」


「えっ! ここってリルの生家だったのか、知らなかった。それは失礼なことをしたな」


「いえ、大丈夫です」


 にしても驚いた。ここはリルの生家だったのか。思っていたより大きかった。てっきりメイドをやっているのだから身分は低いものだと…これでは対等といってもいいのではないか。


 そして、だとするとこのパターンは…


「おや、起きたのかい? いらっしゃい」


 やっぱり起こった、お父さんイベント。


☆☆☆


「えーと、お父さん…」


「君にお父さんと呼ばれる筋合いは無いが… ケイルと読んでくれ。いつもリルが世話になっているね」


「いえ、そこまででもないですが…」


「ところで、今日は洞窟で倒れたそうじゃないか、大丈夫なのかね」


 気まずい。すっごく気まずい。メイドの父・ケイル、いったいどういう話をすればいいのか。


「はい、リルと2人で洞窟でモンスター狩りをしていたんですが、帰路をウルフに襲われてしまって。魔法を乱発したせいで魔力が切れてしまったんです」


「そうなのか、ところで君はレベルはいくつなのかね」


 以前リルもレベルについて言っていたが、レベルとはこの世界に存在する謎の仕組みである。携帯念話なるものを所持するとレベルが表示される。レベルはモンスターを倒すことで稀に上がり、レベルが上がるのに必要な数などはわかっていない。

 レベルを上げることで自分の能力が上がり強くなる。かつて人類を脅かしていた神龍アステリウスを退けた伝説の英雄、カルグーレ=ヴァリ=レグルスはレベル100をゆうに超えていたと聞く。


「えーと、レベル15です…」


 レベル15というのはまあそこそこといったところか。冒険者のレベルの平均は約10だと聞くので、中堅冒険者と呼ばれるくらいである。魔法よくファンブルするのに(俺のせいじゃない、多分)よく頑張れたほうだと我ながら思う。


「私は19レベルです」


 えっ、リルさんそんなに高いんですか。19だと中堅冒険者でもトップクラス、上級の一歩手前である。ちなみにレベル0~4が駆け出し冒険者、5~9が初級冒険者、10~14が中級冒険者、15~19が中堅冒険者、20~が上級冒険者となっている。あとはレベル50超えると神級冒険者などと一部の人に呼ばれているものもある。はえー、レベル50とか絶対無理だな。


「ふむ、それならあそこの洞窟、マンワク洞窟の適正レベルは大幅に超えているはずじゃが…?」


「そうです、ですが…」


「ですが?」


「はい、俺達には人数が足りません。アタッカーとヒーラー、バランスはとれているのですが数で押されたりウルフみたいな相手になるとジリ貧で…」


 今までも何とかしようとはしてきた。しかし何とかできなかった。募集を張り出しても誰も来ず、金を出すといっても金だけ盗られ…金盗られるのとか絶対展開的においしいだけじゃん。


「ほう、ならば、旅をしてみるのはどうじゃ? リルもつけよう。旅ならば、途中で仲間を見つけることもできるじゃろう」


 リルの扱いは物なのか。と突っ込みたくなるがリルも気にしてないようだし流しておこう。


「ですが、それでは…」


 ケイルは、俺の常識をことごとく打ち破った。そもそも洞窟に行っているのは村を守るためであって、俺たちが離れてしまっては村が危ないというのに。


「なーに、村の心配をしているのか? 優しい男じゃのう。だが心配はいらぬ。実はお前たちが狩っていたのは、わしらの狩り残しじゃからの」


 えーなにそれ、初耳なんですが。


☆☆☆


 お父さんとの話が終わった後、俺はリルと話をしていた。


「なあリル、そういえば俺が寝かされていた部屋は誰の部屋なんだ? 失礼したと思ってさ。あと、いろいろ気になるものもあったし」


「あれは私の兄の部屋です。兄は一昨年、書き残しとイカリソウの押花を残して突然出て行ってしまったのです…」


 そんな過去が…そしてなんでイカリソウ…花言葉なんかあるのかな、興味ないけど。


「まあ、旅を続けてたら会えるかもしれないしな、とりあえず荷物まとめようぜ」


「そうですね、少々お待ちください」


☆☆☆


 次の日、俺達は南にあるといわれる大きな都市、ホルトの方向に向かって出発した。


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P.S.

 リアムたちの住む村は北にあります。南に都市ホルトがあり、ホルトよりさらにずっと南に行った先に王都アルバマトがあります。この国では、王都を中心に東西南北すべて同じようなつくりになっています。

 

 また、魔法については、火魔法、水魔法、風魔法、土魔法、闇魔法、光魔法があります。特に初級中級上級などの区別はなくレベルが上がると威力が上がると言われていますが実は大魔導士などは普通にレべチな魔法をぶっぱなします。


 レベルに関してはそこまで気にする必要はありません。もともとレベル上げを目的とさせるような立ち回りを主人公たちにしてほしくないので。あくまで指標なので、今後出てきた際もあまり苦手意識を持たずにさらっと読んでいただければ幸いです。


 それではまた次回。次はいつ上げるかわかりませんが気長に待っていただければ幸いです。

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