第75話 帝都へ出発

 俺達がアケボノでしゃぶしゃぶを堪能している途中で、帝都のギルドマスターからの連絡により、シュタット爺ちゃんが帝都に様子を見に戻る事になった。


「みんなも一緒に行くでいいのか?」

「ああ。オメガの中に居たら退屈する事は無いからな」


「僕もオメガの操縦が最っ高に楽しいから、全然いいよ」

「私も、オメガの倉庫の中身に馬車の様な素晴らしいアイテムがある事を思うと、興味は尽きませんから大丈夫です」


「よし、それじゃぁ飯食い終わったら出発だな。まさかさっきの帝都ギルドのマスターも、アケボノから簡単に戻れるなんて思って無いだろうし、飯くらいはちゃんと食べてから行こうぜ」


「「「了解」」」


 食事を終えると、メーガンの馬車に乗り込みオメガに戻る。


 山の中に停泊させてあるオメガには誰も近づいていない様だ。


「「「お帰りなさいませ。ご主人様」」」


 オメガの扉を解放すると、いつもの様に三人娘ゴーレムが出迎えてくれた。


「それじゃ帝都に向けて出航するけど、爺ちゃんは目録の翻訳を頼むぞ」

「解った。じゃが書くのが面倒じゃな。わしが読み上げるで、誰か書き出して貰えるかの」


 爺ちゃんが書記を求めて来たので、チュールを見ると首を横に振った。

 

「字は苦手……」

「じゃぁフィルに頼んでいいか?」


「うん。頑張るね」


 書記も決まったので帝都に向けて出航した。

 爺ちゃんとフィル以外は、操縦するレオネアとナディアを除いて、中央のリビングで寛いでいる。


 しかしアケボノ料理は味は勿論だけど、見た目が綺麗だったな。

 俺の中では今まであそこ迄繊細な盛り付けで、見た目を重視する調理技術と言うのは無かった。


 これからの、俺が学ぶべき部分だな。


「メーガンは行った事の無い国とかあるのか?」

「そうですね。冒険者ギルドの加盟国ではありません」


「凄いな。でも加盟国以外だとどんな国があるんだろうな?」

「魔大陸と呼ばれる南北に分かれた広大な大陸があると聞いた事はありますね。それと失われた地と呼ばれる大陸もあるらしいですが、そこの情報は全く聞いた事がありません。他にもアケボノ国以上に大きな島国も魔人族の支配域として存在するようです」


「魔人か…… どんな文明を持ってるんだろうな。それより、どんな美味い物があるのかが気になるな」

「カインは本当に食べ物の事で頭がいっぱいのようですね」


「ああ。美味い料理は人を笑顔にさせるからな。俺はナディアやチュール達の様な異民族でも安心して腹いっぱいに美味い物を食べれる場所を作り上げたいんだ」

「素敵ですね。実現できるように私も協力できる部分があれば、お手伝いさせて頂きますね」


「ああ。メーガンが協力してくれるなら、きっと凄く力になる。頼むな」

「私は長い時を過ごしてきましたが、自分達の都合だけでなくみんなが幸せになどと考える人には出会えなかったので、正直驚いています」


「だが、一人で出来る事など限られているからな。仲間の力は必要だ」

「このオメガがあれば無人の大きな島や大陸を発見する事も、難しくは無いでしょう。後はカインが信用できる仲間を増やしていくだけですね」


 メーガンと話していると、本当に出来そうな気分になって来た。

 まぁ目的も無くただ生きて行く人生よりは、余っぽどましだな。


 しかし…… あまり話題には出さない様にしてるんだけど、帝都の件は通商国が犯人と考えるより、なんらかの手段で生き残ったギースが怪しいと見たほうが自然だと思う。


 何の目的で、大量の人を殺したんだ?

 理由次第では俺は、ギースを許す事は出来ないぞ。

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