第68話 バトルロイヤル③

 予選を終了して残った人数は、422人俺達の方は爺ちゃんとフィル以外の6人。

 ライガースは5人全員が残っていた。

 一応は流石と言ってもいいだろう。


 個人での冒険者レベルはレオンがAAでギースと同じランク。

 他の4人はAランクでフィルやミルキーと同じランクだ。


 他にも残ったメンバーの中にチュールやナディアのようなDランクは居ない。

 411人が残った一般参加組は全員がCランクかBランクという事だ。


 これがどういう事かと言えば、運だけで残れたように見えてる者の中でも、実際には運だけでは超えられない壁が存在して、ちゃんと基本のある者が残ってるって事だ。


 冒険者ギルドのランク付けも馬鹿に出来ないな……


 勿論本当は残れるほどの実力があっても、メーガンやジュウベエの組に居た者は、残って無いんだけど……


 それでもそのメーガンの組でさえ、サイダーはちゃんと残って来ている。

 これを運で片付ける訳には行かないだろう。


 シュタット爺ちゃんはフィルの横でケラを撫でながら、ゆっくり見てた。


 ミケーラ男爵が前に出て来て、声高々に決勝戦の開始を告げた。


 俺の武器であるナイフフォークは、こんな大人数が居る時点では使う訳に行かないし、何よりもチュールが怪我しない様に立ち廻らなきゃならない。


 まぁSランクの三人は連携なんてしないだろうから、そこが俺の強みかな。


 俺は決勝が始まる迄の間に、ナディアとチュールに声を掛け、「折角だから勝とうぜ!」と言って、作戦を練った。


 中央のSランク3人とライガースにはお互いで遣り合ってもらわなきゃな。



 ◇◆◇◆ 



(シュタットガルド)


 流石にライガースはこの場では必勝パターンらしきフォーメーションで構えてるようじゃな。


 先頭のサイダーのすぐ後ろにタイガとレオンが位置取り、その斜め後ろにミャーラとロデムが並んでおる。


 所謂いわゆる魚鱗の陣じゃ。

 

 それに対してメーガン達はそれぞれ、一人ずつで背中を向けあい、まずはその他大勢をあしらうつもりじゃな。


 まぁ最初にライガースを倒したんじゃ盛り上がりに欠けるので、サービスタイムという所じゃの。


 あ奴は何処へ行き折った? カイン。

 おお、居った居った。


 皆が中央部分に殺到して行くのを、三人で傍観しておるが、何を狙っておる。


 ナディアが術を発動させるか。


 ナディアが風精霊を呼び寄せた所に、チュールちゃんが生活魔法の給水か。

 じゃがそれっぽちの水量じゃどうにもならんな。

 何か考えがあるのかカインよ?


 お…… 動きがあったようじゃな。

 先手はライガースか。


 ライガースが陣形を維持したまま、外側に向けて突き抜けてきおった。

 パーティで連携されては一般参加の連中じゃ太刀打ちできんか。


 ジュウベエ達は六角棒で迎撃態勢じゃが、魔法を集中して打ち込まれておるがどうするのかのぉ


 ほぅ。


 絶壊刀に火属性を纏わせて炎の壁を作りおったか。

 そのまま、振り切るとけが人が増えそうじゃの。

 余りフィル嬢に手を掛けさせるでないぞ?



 レオネアは……

 なんとまぁ……

 悪逆無道じゃな……


 予選では一番優しかった分の反動かのぉ

 悪魔召喚でサキュバスを五体も呼び出して居るではないか。

 男どもがみんな、魅了されて偉い事になっておるぞ……


 こ奴ら……

 後で恥ずかしゅうて街が歩けんかもしれんな……

 じゃが…… 女性には効果があるのか?


 うぉ…… 駄目じゃレオネア。

 女性同士でも効果を発揮させたのでは、困った事になろうて……

 じゃが…… もう少し見ておきたい気もするで…… よいか……


「ちょっとシュタットガルド様! レオネアさん止めて下さいよ。あれじゃ男の人は自業自得でも女性はちょっと困ります!」

「まぁ待てフィル。きっとレオネアもそんな無体な事はせぬから大丈夫じゃて」


「本当ですか? シュタットガルド様がもう少し見たいからとかじゃ無いですよね?」

「な、わしにそんな邪な気持ちなど、ほんのちょっとしか無いぞ……」


「あるんじゃ無いですか!」

「まぁ、まだ服を脱ぐまでの事は無いから、ギリギリセーフじゃよ……」


「見るのじゃフィル。メーガンが動くぞ」



 ◇◆◇◆ 



「レオネア。観客サービスが過ぎるわね」


「わっ。メーガン危ないって!」


 この時点ではまだ翅も顕現させていなかったメーガンが大剣を横に一閃させると、レオネアの召喚していたサキュバスが一瞬で消え去った。


 元々が、幻影でしか呼び出せないのでそこまで酷い18禁展開では無かったのだが、恐らく完全に魅了にかけられた男性陣の表情はヤバイ。


 サキュバスが消えてもレオネアの前に居た100人程は、もう駄目ね。


 そこに結構なサイズの竜巻が襲って来た。

 一気にレオネアとメーガンを巻き込み上空に巻き上げる。


「爺ちゃんも居ないのにこの威力って、誰だよ」

「これは、精霊魔法。ナディアね。でもおかしいわ風の精霊にこんな暴風雨は作れない筈」


 風の精霊によって作り出されたつむじ風は、チュールの給水の水を巻き込む事で大きく竜巻と呼べる迄成長していた。


 竜巻に巻き込まれたメーガンとレオネアは咄嗟に抜け出そうとするが。

 通常の風属性の攻撃魔法と違い、精霊の意思でコントロールされる竜巻から抜け出すのに手間取った。


「チェックメイトだ。メーガン。レオネア」


 カインがそう呟くと、その手に持った肉を解体する時に吊るすためのミスリル製チェーンが竜巻まで伸びて来て、カインのほぼ全力での生活魔法【発電】が竜巻の中の雨水に電気を通した。


 決してレオネアやメーガンに取って致命傷では無いが、このルールの競技と言う事であれば十分だった。


 瞬間1秒ほどの硬直を生み出し、風速50m程の風がステージの外まで、魅了を掛けられてた100名程も道連れにして吹き飛ばした。


 だが、ここで、ナディアとチュールには限界が訪れた。

 カインがチェーンを握って発電を使った僅かな隙に、魚鱗の陣刑を崩さないままのライガースの一団がサイダーを先頭に、カインに突っ込んで来た所を、ナディアとチュールが身体を張って逸らしてくれた。


 二人はサイダーのタワーシールドの直撃を受け、ステージの外まで持っていかれた。

 怪我は無い様だ。


「済まん。チュール。ナディア」

「大丈夫。カイン頑張れ」

「カイン様の勝利を信じてますわ」


既にステージ上は、ライガースとジュウベエ。

一般参加者が10名程と、俺だけになった。


一般参加者はこの中で、どう見ても一番弱そうに見える俺に向かって来る。


そしてジュウベエは、ライガースの前に立ちはだかった。

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