第25話 商業ギルド

 俺達はオークションに出品をする為に商業ギルドに向かった。

 流石に街中ではケラは小型化してフィルの肩の上に乗っている。


 商業ギルドへ入ると、受付の男性から声を掛けられる。


「ご用件を承ります。その猫獣人のオークションへの出品でよろしかったでしょうか?」


 いきなり失礼な奴だ。

 

「この子は仲間だ。売る事は無い」

「失礼いたしました。ここに亜人を連れてくる場合、ほぼ、その要件でしたので……」


 やはりこの領地での亜人の扱いはそう言うレベルなんだな。


「ではご用件は何でしょうか?」

「武器と鎧のオークションに出品したい」


「オークションに出品するためには、手数料を事前にいただく事になりますが構いませんか? この手数料はもしオークションで落札されなかった場合でも戻ってきませんが」

「解った。結構数があるんだが構わないか?」


「一度のオークションでは50品しかセリが行われませんし、他の出品者の方もいらっしゃいますので、現在でしたら20アイテムまでお引き受けできます。それ以上は次回のオークションに持ち越しとなります」

「そうか。では、武器と鎧を10アイテムずつ頼みたい」


「かしこまりました。では手数料が1アイテムに付き銀貨一枚掛かりますので、金貨2枚の手数料となります。それと別に、落札された場合は売り上げの10%が徴収されますが構いませんか?」

「了解した」


「それでは、早速品物を拝見させて頂きます。こちらで査定をして、初期価格の値付けなどを決めさせていただきます。あ、申し遅れましたが私は当イシュルブルグ商業ギルドの鑑定員を務めます、ベルサーチと申します」


 手数料が高いと思ったけど、事前にアイテムの鑑定などをするなら納得かな?

 この手数料を惜しいと思うような商品ならそもそもオークションなどに掛けないだろうし。


 別室に案内されて俺が出品アイテムを並べると、ベルサーチの目がアイテムに釘付けになった。


 各貴族家が嫡男の為に用意したであろう鎧や剣は、かなりの業物わざものばかりで、相当な価値があると思われた様だ。


「これは素晴らしい逸品が揃っておりますね。落札価格を想像するだけでワクワクします。これ程の品をどこで手に入れられたのでしょうか?」

「それは内緒だ。落札された場合の入金はすぐ行われるのか?」


「はい。ギルドの口座に振り込まれる形になりますので、ご安心ください」

「俺は商業ギルドの会員ではないが?」


「ギルド口座は、商業、冒険者、工業の各ギルドの会員証が共通でお使いいただけます」

「そうか、俺は冒険者ギルドへは登録してあるので大丈夫だな?」


「勿論でございます」


 俺達は商業ギルドを後にすると、食事に出かける事にした。


「カイン。大丈夫?」

「そうだなぁ。先ほどの商業ギルドの担当も悪い奴では無いんだけど、亜人は商品だと言う見方しか出来なくなってるよな。この辺りは国の法律が問題だから根本的に変えて行かなければ駄目だな」


「ねぇカインお兄ちゃん。折角初めて訪れた街なんだから、屋台で色々食べてみたいな」

「おう。その意見は賛成だ。新しい発見があればいいな」


 三人で街を散策すると、中央広場に屋台が並んでいた。

 取り敢えず、匂いに誘われる様に一軒の屋台の前に立つ。


 この屋台の売りは、チマキだった。

 味付けをした肉と野菜をもち米に混ぜ込んで、竹の皮に包み蒸しあげてある。


 早速購入して、食べながら店主へ質問した。


「とても美味いよ。この肉は何の肉なんだ?」

「へへー、気になるでしょ。この肉は沼に生息する魔物でアリゲーターリザードです、凶暴なんですがこの町独自の漁で捕まえるんです」


 アリゲーターリザードは全長5mを超える魔物で、かなり危険な存在であるが、こちらから近づかない限りは、街を襲ったりする事は無いので、生息地は基本手を付けられない事が多い。


「その漁法ってどんなのだ?」

「それは…… 秘密になってます」


 何だかヤバイ漁な気がするが……

 聞いてしまうと、食欲が減退するかも知れないから、聞かないでおこう。


 次は定番の唐揚げ屋台だった。


 値段が一個銅貨一枚の唐揚げと、一個銅貨3枚の唐揚げ、1個白銅貨一枚の唐揚げの3種類があった。


 銅貨一枚は鶏。

 銅貨三枚はビッグトード、大きなカエルの魔物だ。

 そして白銅貨1枚はワイバーン。


 それぞれ3個ずつ買って分けた。


「ワイバーンの唐揚げってすっごいジューシーなんだね」

「ああ。魔物肉は基本筋肉質でも柔らかくてジューシーなのが多いな。強い魔物程触感も味も良くなる傾向がある。これより上の素材だと飛竜や、属性竜と言った竜種がメインだから、値段も跳ね上がるんだよな」


「ビッグトードも美味しいね。鶏はちょっと硬いかな?」

「鶏はこれは親鶏だからな。唐揚げには生後三か月未満の若鶏が向いてる」


「お客さん詳しいですね、鶏は若いと柔らかいんですか?」

「そうだな、運動させ過ぎないことも大事だから、農家と契約して専用に育てて貰う必要があるな」


「へぇ勉強になります」

「美味しかったよ。ありがとう」


 この後もイシュルバーグの屋台を食べ歩いたが、奴隷商の街『デザイア』の様に絡まれる事は無かったので、治安は割といい様だ。


「お腹いっぱいになったよ。でもカインの料理に慣れちゃったから、少し物足らなかったかな?」

「ありがとうチュール。そう言ってもらえると料理人冥利に尽きるぜ」



 ◇◆◇◆ 



 水曜日になって装備品のオークションが開かれ、俺の出品した帝国貴族達の鎧と剣はすべて落札された。


 最低でも金貨180枚最高は金貨500枚もの高値でさばけて、金貨6500枚ほどの収入になった。


 オークション手数料で金貨650枚が取られたが、それでも十分な売り上げだった。

 まだまだ俺の魔法の鞄には、剣も鎧も80ずつは入っているので、当分は困らないだろう。


 他にも黒曜石素材のゴーレムや魔法の鞄もかなりの数がある。

 魔法の鞄の容量は使う人間の魔力に依存するから、基本的にはデザインの違いだけで値段が変わるが、決して安い物ではない。


 これは冒険者ギルドでも売買が行われて、一つが金貨10枚はする商品だ。

 旅の商人などは、これが無いと商売にならないので、魔力量の少ない商人は、大量の魔法の鞄を持ち歩く。


 ただしこれにも条件があり、空の魔法の鞄は他の魔法の鞄にも収納できるが、中身が入った状態では、他の魔法の鞄に入れる事は出来ない。


 数日をこの街で過し、漸く奴隷オークションの開催日になった。

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