レアモンスターを狩ろう!
アル:到底正気とは思えませんね
カーボン:俺もそう思う
俺たちは大陸間の移動が可能になったものの、現在の大陸、アルテアでの細々したクエストをこなしている。
ゲームだからリアリティは必須では無いと言えば確かにそうなのだが、こんなクエストがたまにはある。例えば……『レアモンスターを百匹狩れ』というような……
アルからtellが飛んでくる。
アル:なんですかこのクエスト!? 百匹ってまともな人間が考えたとは思えないんですけど!?
カーボン:ギルド単位でのクエストだからな、人海戦術をやること前提なんだろう
アル:ぼっちに優しくないゲーム最悪ですね
カーボン:一応救済策はあるみたいだぞ
アル:とんでもない金額を稼げってやつですか? 結局モンスター狩りがどうやっても必要じゃないですか
なぜ納税でこのクエストをクリアできるかと言えば、
非公式のRMTで高難度クエストをどうにか出来るなら、それが収入になると考えたのだろう。ユーザからは
口さがない連中からは『ソロプレイ終身刑』などと呼ばれているのがこのクエストだ。
アル:集団で行動しないと人権がないって仕様はどうかと思うんですけどね……
カーボン:運営は神だからな、創造主がそう作った以上しょうがないだろう?
アル:信者は神に文句を言う権利くらい欲しいですけどね
カーボン:マネタイズって大変なんだろう、最近はネトゲと言いつつソシャゲに食われてるからな……
ソーシャルゲーム、課金額で勝負が決まる世界、札束で殴り合うゲーム、まあそういったものが世間の流行であり、ネトゲの主流になりつつある。それがいいことかはさておき、あまり低収入に優しくないことは確かだろう。
アル:じゃあ月額課金はなんだって話ですよ
カーボン:まあこのゲームがオンプレミスなのかクラウドなのかは知らないが、リソースは使えば使うほど金がかかるからな、リソースを消費せず課金までしてくれるユーザを優遇するのは当然じゃないか?
クラウドでは処理能力や送信データ量等に依存した料金体系になっている、もちろん使わない方が安いのでリソースをさきたくはないのだろう。
アル:大人の世界は汚いですね……
カーボン:お前だって法外なトレード交渉されたらムカつくだろ? 金は大事なんだよ
アル:この前世界樹の葉をポーション10個とトレード交渉のウインドウ出してきたやつには軽く殺意が湧きましたね……
どうやら苦労しているようだ、だれだって相場を知らないと言うことはあり得るので、それを責めはしないが自学自習の大事さがよく分かってしまう事情だ。
カーボン:で、その時はどうしたんだ?
アル:無言でポータルに飛びましたね、関わるのも面倒だったので……
カーボン:そんなもんだ、お金が無いと回復もままならないんだよ
ヒーラーがいれば回復には十分なことが多いが、魔力ポーションが必要になる場面もそれなりに存在する。それをクリアできなければ課金で強くなるか、もう強いギルドに入るしかなかったりする。
ちなみに俺は意地でも課金をせず、ギルドに入るほどのコミュ力も無かったのでひたすらスキル回しや熟練度を上げて無理矢理攻略した。
アル:世知辛いゲームですね……
カーボン:だってお金が無限にあったら誰も困らないじゃないか
アル:平和な世界ですね
カーボン:そんなことになったら敵を倒すのが作業になるんだよ、ある程度何か制限はあった方がいい
時々バグを出して緊急メンテナスが入るが、それ以外の時間は極限まで削ってゲームに時間をかけたために俺だけが、
力を持っても満たされることはなく、ただただ敵と戦い続けていた頃よりは、妹とプレイするゲームは少し世界に彩りが増したように感じられた。
カーボン:じゃあ狩り場に……いや、砂漠に行くか
アル:何故砂漠なんです? 普通に狩り場でいいのでは?
普通にレベルを上げることが目的なら狩り場で問題無い、しかし今回は『レアモンスター』の討伐なのだ。
カーボン:狩り場に出たレアモンスターは即狩り対象になるからな、俺もレベリング用の狩り場で狩ったことはほとんど無い、あっという間に別のパーティに拾われるからな
アル:砂漠は人が少ないからですか?
カーボン:そうだよ、あそこの
アル:効率厨みたいな考えですね
カーボン:じゃあ正攻法で狩り尽くすか?
アル:いえ、さすがにそれはしんどい物がありますね……
と言うわけで俺たちはドライデザートという砂漠マップに向かった。
――
アル:いっつも思うんですけどね……砂漠が過酷だからってHPが時間で減少するって仕様を考えた人はゲームやったことがないんでしょうかね?
砂漠マップが不人気なのはなんといっても、そこにいるだけでスリップダメージを受けるという理不尽が原因の一つだろう。
このダメージに加え、自然回復もしないということで、それを無効にする冷却アイテムか十分なMPを持ったヒーラーがついて回る必要がある。
そう『十分なMPを持ったヒーラー』がいれば回復をその人に頼れるのでそれほど問題ではないマップだったりもする。
ただし、それをあえてやる意味がほぼ無いということでこのマップの人気は非常に低い。
アル:じゃあ回復よろしく、私は探し歩くので合流は十分に一回くらいでいいですよね?
カーボン:ああ、タンクならそのくらいの頻度で落ち合えばHPが尽きることはないだろ
その会話の後俺たちは分担してモンスター狩りのローラー作戦を開始した。
ペシ、パチ
俺に対するくだらない攻撃を無視しながらレアモンスターのポップを確認する……いないな……
はぁ……
ため息を一つついて鬱陶しい周囲の通常モンスターをまとめて殴って倒す。基本的にこの程度のマップなら杖で殴ってワンパンが確定している。
そうしてポンポンと狩っていくと十回目くらいのサーチでレアポップが見つかった、俺は速やかにそこに向かって走り、大物のサボンを魔法で刈り取る、ヒーラーの攻撃魔法は副業のような物だが、レベル差があれば倒すのは意外と楽だったりする。
そうして幾体かのサボンを狩ったところでtellが飛んできた。
アル:お兄ちゃん! レアポップを調子乗って狩ってたら死にました、蘇生まほうください!
そうして俺たちは問題もそれなりに抱えながらもなんとかレアモンスターを狩ることに成功したのだった。
なお、アルはトラウマになったのか、そのクエストの報酬を二人でわけた後、冷却アイテムを買い占めに走っていたのだった。
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