ネトゲで兄妹ギルドを組んだのですが、ぼっちプレイヤーだった俺は最強でした~悲しい努力の果てにネトゲの中で最強になりました~

スカイレイク

はじまりの大陸

あるぼっちヒーラーの始まり

カーボン:ダンジョンに入る準備はいいか? 全員準備はOK?


アル:急造のパーティですからね、数回の全滅は覚悟しましょう


 物騒なことを個人間tellで言うアル、ここは異世界でも現実世界ですらない。「プリミティブオンラインプオ」というネトゲの中の話だ。


 俺はカーボンと言うことにしておこう、現実世界の名前なんて誰も興味無いだろ? だから俺はカーボンだし、妹はアルとして隣の部屋からプオにログインしている。


 これから始まるのは全てネトゲの中の話、誰も死なないし誰も傷つかない。精々誰かの日常の時間を食い潰してしまうくらいだ。


 何故過去形なのかって? それは俺のレベルと大いに関係している。


 いかが本日集められたパーティの面々の会話になる。


ユイ:どうなってるんですかそのレベル!? これから行くのってレベル30もあれば十分じゃないですか!?


オズ:そうですよ! カーボンさんそのレベルならとっくにクリアしているでしょう!


 四人パーティで挑むのが推奨されているダンジョン、というか四人いないと受注できないクエストなので頭数を集めるために集めた二人がパーティチャットを飛ばしてくる。


 あまりにもごもっともな疑問であり、ここに疑問を差し挟まないプレイヤーならまともにゲームをプレイしていないと言い切れるくらいに俺のレベルは異常だった。


 それに対しアルから個人間tellが飛んでくる。


アル:お兄ちゃんこの二人失礼ですね


 失礼なのはお前も一緒だろうが……とは思うものの、俺は事実をパーティチャットで語る。


カーボン:実は俺はパーティを組む相手がいなくてな……レベリングは一人でも出来たから……


 どうしようもない俺のぼっち告白に二人ともお察しと言ったように謝罪をした。

 レベリング、つまりはレベル上げ作業、これは淡々とこなす日常のルーチンワークとして組み込まれ、毎日毎日それに励んできた。


ユイ:そうですか

オズ:ごめんなさい


 ちゃんと俺がぼっちだったのを察して二人は謝ってくれる、俺の問題なのに謝られるとそれはそれで居心地が悪い。


 二人のレベルは30、ギリギリこのダンジョンに参加できるレベルだ。ちなみに俺のレベルは上限一杯の100、ぼっちもここまでこじらせたら大したものだと自分でも理解している。


 ネトゲには人生をつぎ込むモノがある、そう言われているがそれはある程度事実だ。このゲーム、ダンジョンに挑むのに最低レベルはあっても上限は存在しない、俺は人生をつぎ込みながらひたすら一人で狩れる限界の強さの敵を倒し続けてきた。常人には考えられないような時間をかけてレベル上げだけに心血を注ぎ続けた結果だった。


 ちなみに何故今更この程度のダンジョンに挑むかと言えばレベルキャップに到達したのでコンテンツをソロプレイで遊べる部分はやり尽くした、そこで妹の操るアルが『いっそ私たちでギルド立てない?』の言葉に乗って、ギルド『眠れる獅子』は設立された。


  俺とアルの二人ギルドには他にメンバーはおらず、ダンジョンに潜る時は必ず暇そうな人や、検索機能でパーティ参加希望を出している有望なメンツをかき集めて潜ることになったくらいだ。


 ちなみに俺はいつも適当な理由を付けて参加を避けていたのでギルドリーダーはアルだと言う誤解もたびたびされるのだった。


 何故俺が参加しなかったかって? コミュ障以外に理由があるとでも思ったのか?


 多分妹が同じネトゲをしていなかったら、眠れる獅子はゲームがサービス終了するまで目覚めなかっただろうギルドが動き出したのだった。


 俺はただひたすらレベリングに励み続け、リアル生活を多少犠牲にしながらいよいよレベルキャップまでたどり着いてしまった。しかし一方でシナリオクエストはこなしていなかったので俺という非常にアンバランスなキャラクターができあがった。


 妹はナイト、タンク役だ。俺はヒーラーでプリースト。役割がかぶっていないので共同でギルドを組むことは出来た。初級ダンジョンの中でも俺の圧倒的なヒールとアルの確実に落ちないタンクでなんとかなるダンジョンはクリアしてきた。


 こと、今に至ってダンジョンに挑むのにパーティの最低必要人数という大きな壁に当たってアタッカーを二人、幸いにもパーティ参加希望を出していた人がいたので採用したのだった。


 ギルドを組むための資金は俺がひたすらにソロで敵を狩り続け、使うこともなく集めていった素材や資金をオークションに出品して転がり込んだ大金でまかなった。しかし、システム上の必須最低人数という大きな壁は、実力があるからでは通してくれないのだった。


カーボン:そこは大事なところじゃないから、二人ともこのダンジョンに付き合ってくれることでいいんだな?


ユイ:もちろんです! 初挑戦でここまで心強いヒーラーさんはいませんよ!

オズ:ええ、キュアヒールだけでもものすごく回復するんじゃないんですか?


 妹は俺との関係性を言わない程度にはネットになれているのでダンジョン攻略計画は進んでいく。


 ちなみにアルのレベルは70、俺に付き合ってレベリングしたことが幾度かあったのでそれなりのレベルになっている。


アル:それじゃあ皆さん! 私に続いてくださいね?


オズ:はい!

ユイ:よろしくお願いします!


 アルはそれなりにダンジョンも攻略しているので、今回潜るダンジョンも当然レベル相応なりに攻略済みだった。


 そうして俺たちは初級ダンジョンに潜ることになるのだった。


 こうして、一人の廃プレイヤーが序盤のダンジョンを蹂躙していくという噂がプレイヤーに広まっていくことになったのだった。

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