ヤベテツコ

私の会社には同じ仕事をする同僚のヤベテツコと言う女性がいる。


身長は150cm程度で年齢は60歳過ぎ。

どこにでもいる普通のおばさん。

周りからあまり好かれてはいないので、影では腐れババァと言われている。


そんなある日、私は上司からの依頼でパソコンを使ってのデータ修正の仕事をすることになった。同僚なのでヤベテツコには現場から数日離れる事になると告げる。


『大丈夫ですよ!会社の為の仕事ですから!頑張って下さいね!』


と、ちょっと引くくらい薄気味悪いガッツポーズをしてピョンと飛び跳ねて見せた。

そのジャンプの高さは3cm程だ。


約5日間程度かけてデータ修正の仕事が終わりかけた時、

仲の良いスタッフからこんなことを教えられた。


『あなたの事をパソコンばかりやって、こっちの業務を何もしない』


と、ヤベテツコが色んな人に言って歩いているとの事だった。


私は耳を疑った。

この5日間の間に私はヤベテツコに何度も『大丈夫ですか?』と声をかけ、

『大丈夫ですよ、任せてください!』と返事を貰っていた。

気を使ってジュースも奢っていたのにどういうことだ?と言うのが心情だった。


本人に問いただすと『そんな事言っていない、その人が私を陥れようとしている』の一点張り。

それどころか『そんな事より〇〇さんは変なんですよ・・・』と違う人の悪口を言い出す始末。

悪口が止まらないので、いい加減にやめる様に強めに言い放ち、

私はなぜ人の悪口ばかり言うのか、なぜ嘘をついてばかりなのか聞いてみた。


ヤベテツコはこう答えた。


『私はある宗教を信仰している、その教えが「人の悪口を言う事で本当の自分が見えてくる」のです、私は本当の自分探しの為に人の悪口を言っている』


私は全く納得できない話だったので『自分探しなら自分だけでやれ、人を巻き込むんじゃない』と怒鳴り気味に言った。


その瞬間『キエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!!!!!!!』を急ブレーキの様な悲鳴を10秒程上げるとその場に顔面から倒れ、動かなくなった。見たところてんかんの症状だと感じたので直ぐに救急車を呼んで緊急搬送をした。


数時間後に一本の電話が上司に入った・・・電話を切った上司がボソッと言う。


『ヤベ テツコは・・・施設泥棒の常習犯で前科8犯なんだそうだ。』


『え?泥棒だったんですか?

ちょいちょいスタッフがお金盗まれたかもって言ってたのそれですか?』


『コヤベ テツと言うのが本名で。。。。


。。。。性別は男なんだって』


『え???男!?一体どこまでが嘘なんですか・・・』


その後ヤベテツコ改めコヤベテツは病院から姿を消し、

現在でもその行方は分かっていない。

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