ご飯ちょうだい

親族の話です。


子供になかなか縁がなくて2度の流産をしてしまいました。

身体も休まり落ち着いてきたある日のこと、



コンコンコン・・・



ノックの音で目が覚めたと言います。

朦朧とする頭の中で思考を巡らせる親族の奈央子(仮名)さん


『ん・・・ノック・・・の・・・音したかな?』


一生懸命脳を働かせようとする。

まずは時間を確認すると、深夜1時。

思考が少しずつ繋がる。

1時・・・ノック・・・そんなわけないか・・・と。


旦那さんは居るのですが夜の仕事なので、午前1時はむしろ仕事中。

つまり奈央子さんの脳には気のせいと言う答えしかなかった。


コンコンコン・・・


眠ろうとした脳みそを鷲掴みにされた感覚だった。

一気に緊張感が脳を起こし、

恐怖と言う感情を願っても居ないのに増幅させる。

『やっぱり鳴った・・・気のせいじゃないじゃん・・・』


肌寒い季節だったので1枚上着を羽織ると、

『はぁい・・・どちら様?』と言いながら玄関に出向いた。


怖さもあったが、確かめたいのもあって鍵を開けてドアを開けた。

誰も居ない・・・というパターンではなく、目線を下ろすと

そこには男の子が一人立っていた。

小さかったが何歳くらいかは不思議と判断できなかったそうです。


『ボクちゃんどうしたの?迷子?どこに来たの?』


知らない子なのでそういう声掛けをしたのだが、その子は

『ご飯ちょうだい!』と大きな声で元気に言うと、

両手を前に突き出してお椀の形を作った。


『え?なに?お腹空いてるの?』


部屋に戻って奈央子さんはお菓子をもって戻ってきた。

玄関に男の子は居なかった。






数日が経った夜、忘れていた奈央子さんの耳にまたあの音がした。


コンコンコン・・・


しかし奈央子さんは『またあの子かな?』と、恐怖よりも

心配する気持ちが強く出ており、直ぐに玄関を開けた。

そこには前に来た男の子と、更に小さい女の子が立っていた。

しかし女の子は血を頭から浴びたような姿だったそうです。


心配した奈央子さんは『大丈夫?ケガしてるの?』

と聞いたのですが、『ご飯ちょうだい!』と大きな声で元気に言うと、

両手を前に突き出してお椀の形を作った、今度は2人で。


『ここに居てね、いまおやつ持ってくるから』


そう言って戻ってきた奈央子さんの目には、

誰も居ない玄関しか見えなかった・・・なんだろう・・・どこの子だろう、

お化け?でも足あったし喋るし・・・


不安になった奈央子さんが私の母親に相談すると、

『流産したんでしょ?ご飯あげてるの?水子供養してる?』


奈央子さんは胸を突き刺して抉られる気持ちがしたと言います。

あの子らは生まれる事が出来なかった私の子供・・・

そう思うと涙が溢れてしまい、母親にごめんなさいを繰り返した。


家に戻り、簡易的ではあるがTVの上にご飯と水とお菓子を乗せて、

手を合わせながら奈央子さんはごめんなさいと言う気持ちを込めて

祈ったと言います。


やがて奈央子さんは妊娠し、元気な女の子を出産。


あれ以来あの兄弟には出会っていませんが、

供養して直ぐ妊娠したので、

もしかしたらこの子があの2人の生まれ変わりなのかもね、

そう言いながら居眠りする赤ちゃんのほっぺをつつくのでした。

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