第56話 第四話 その17 炸裂したのは!

 「ちゅん助!」


 どうにか大気の熱が収まってから、閃光のドームがあった、ちゅん助が居たはずの場所に視線を移す。


 俺は愕然とした!


「ああ…」


 ドームのあった位置には丁度、逆さドーム状の穴が地面に形成されており、穴の表面はマグマのように焼け爛れて、所々まだ赤黒い光を発していた。


 つまりはあの閃光のドームは、ドーム状でなく球形を作っていたのだ。それはちゅん助が地下に逃れる事も出来なかった事を意味していた…


 ちゅん助の生存は絶望的だった。


 ドサッ

(ああ…)


 言葉が出なかった…

 いや言葉どころか考えも…


 いやいや、それどころか感情が湧くのにも時間がかかった。

 

 少女が憎いとか恐ろしいとかそんな感情は一切なかった。

 ちゅん助の存在が消えたというのに、哀しいという感情さえも…




(こんな事で………?)

(こんなアホな事で……?)

(終わるの…?)


 恐らく最初に俺が抱いた感情は、そういった類のものだった。そんなアホな…それが率直な感想だった。


 アホな奴だったとはいえ、数少ない友達であった。

 親友というより腐れ縁だったが、友として過ごした時間は恐らく一番長い。


 そんな友達が目の前で今、跡形もなく爆散、蒸発して最期を迎えたというのに、正直、悲しいという気持ちは全く湧かなかった…


 (こんなアホな!)


 少女が恐ろしいくらいの凄腕である事は分かっていたし、ちゅん助が敵うはずない相手である事も二人とも分かっていたはずである。


 なのに俺には何故か、心のどこかでちゅん助は死なないし、少女も最後は手加減してくれる、そんな甘い考えがあった。


 アリセイやガリンで自分が九死に一生を得る危ない目に遭っていたというのに、この世界はどこか現実でない、最後は何とかなる。ひょっとしたらゲームみたいなもの、そんな風に甘く考えていたのかもしれない、俺もちゅん助も…


 つまりは…

 つまりは油断したのだ、俺もちゅん助も!


 ゲームでたかが「はい」「いいえ」を答え間違えただけでいきなり理不尽なゲームオーバーを言い渡される展開があるが、まさにそんな感じだ。

 ちゅん助はふざけて、明らかに誤答と分かる「いいえ」を選択したのだ。その先の結果が死である事を知らずに…


 ああ、こんな事になるならタコ殴りに殴って気絶させてでも、少女に許しを請い友を救うべきではなかったか?

 にしても、あまりに間抜けな呆気ない幕切れに、悲しいというより、ただ、ただ力が抜けた…


 ドサッ

「な、なんという…」


 呆れてモノが言えない、なんて言葉があるが、まさにそれ。

 その呆れは下半身を襲い、自身が立つバランスさえ奪って思わず俺は膝を付いた。


「なんという…」


 まさになんという、それ以外に何か言葉があろうか?


「お連れさん!アンタはどうすんの?使い魔の仇討ちでもする?」


 少女は問いかけるが、もはやそれすら耳に入らなかった。


「もとはアンタがしっかり躾けとかないからこうなったのよ!」

「文句がないなら、私も忙しいからもう行…」


 少女が憐みを含んだ口調で語りかけたが、返す言葉がない…

 少女が、もうここに居ても無駄ね、そんな風に立ち去ろうとした。


 その時だった!


「お嬢ちゃん!もうすでに!こんなにコリッコリ!ではないかお!www」


 コリコリ!


「!!!!!?????」


 少女は自分の両の胸の先端を襲った、あまりにおぞましく不快な刺激に思わず足を止めた。


「余裕かましとった癖に、すでに緊張でこんなに凝り固まっとるとは!wこれは逆にクニュックニュに弄りほぐしてやらねばならんよのうwwwww」


「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」


「なんだ!?」


 周囲に甲高く響き渡る少女の悲鳴に、思わず彼女の方を見た。


 何故か、少女は真っ赤な顔をして叫び声を上げていた!


 よく見ると、控えめだったはずの彼女の胸が豊満を通り越して不自然なくらいに衣装が盛り上がっており、内部がもぞもぞと怪しい蠢きを発していた。


「きゃああああああ!なに!なに!なんなのよ!コレ!」


 少女は大慌てで自らの衣装に手を突っ込むと、何やら蠢くものを掴み、思い切りそれを衣装から引きずり出した。


「むほほほのほw」


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 引きずり出された物体は、不気味なやらしい笑い声を上げ、さらにいやらしい目つきで少女を見つめていた。


 ちゅん助だった!


「きゃあああああああああああ!」

 ビュン!

 ドコッ!


 ぽこんぽこんぽこん!

「ぐえあ!」


 少女は思わず三度悲鳴を上げると、手にした変態を思い切り地面に叩きつけたのだった。


 ドサ!


「ご!ご主人サマーーー!」

「ご!ご主人サマーーー!」


 旋風も小炎も混乱して慌てふためき、少女の周りを飛び回る事しかできない。


 今度は少女が膝を付く番だった。


 片手で胸を覆うように押さえ、俯いてガクガクと震えていた。


「ちゅ!ちゅん助~!お前!お前なのか!?」


 第四話

 その17 炸裂したのは! 

 終わり

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