第四章 熱狂と蟲の街 ガリン
第40話 第四話 その1 唯一の絶対条件!
アクリムの街からガリンの街へは馬車でも4日を要した。
アクリムの街郊外では、たまにしか現れなかったグソクも頻繁に出没するようになり、ガリン周辺ともなると一時馬車を下りてグソクを駆除しないと進めないほどであった。
しかしグソクの発生は街へと続く街道の反対側になるガリン平原が主な発生源と見られており、その平地にはおびただしい程の数のグソクが発生しているとの事だった。
少々離れた街道でもこの数なのだ。
平原は一体どんな惨状になっている事だろうか?
ガリンの街はアリセイとは比較にならないほど大きく、比べ物にならないほどアクリムより人の出入りが頻繁であった。
周囲を城砦のような岩壁に囲まれたこの街は、グソクの経済効果によって活況を通り越して混乱、いや狂乱しているかのように見えた。
連日の様にグソク討伐隊が組織され駆除に出ており、連日の様に死者が出ている様だった。
駆け出しの俺ですら、あのような硬い殻に覆われているとはいえ弱い魔物相手に死者が出ている事は不思議に感じたが、グソクの口に生えている丈夫そうな歯を見るに油断した奴が運悪い結果を引いてしまうのは無くはなさそうだが、ありえそうにない結果を引き当ててしまうほどグソクの数が膨大である事は容易に想像できた。
しかし、それだけに経済が回る。
討伐隊志望の者、良質な肥料となるグソクの死骸を運ぶ運搬業者、買い付ける商人、医療関係者、グソクの発生の謎を解明しようとする学者連中。
それだけ男が集まれば酒!女!グルメにギャンブル、グソクによる混乱というよりは、それがもたらす経済効果が強すぎてここでもまた人間が混乱を作り出し誰もが皆酔い、踊っているようにも見えた。
普通に働くのであればアクリム、住むのであればアリセイの方がよほど静かに心豊かに暮らせる気がしたが、俺達がここガリンを訪れたのは元の世界に戻る情報が得られるかもしれないという事もあった。
グソク討伐隊に参加すれば結構な額を効率良く稼げるはずだったが、金はちゅん助の御守り騒ぎで正直遊んで暮らせるかも?と思うくらい有り余っていた、それでもわざわざこの街に訪れたのは他に目的があったからだ。
デン!デンデン!デデデン!
「おのおのがた!準備はよろしいかお!」
「二人しかいない件」
街に着いた翌日の朝、ちゅん助が興奮冷めやらぬ雰囲気でどっから持ってきたのか太鼓を打ち鳴らしている。
一打ち二打ち三流れ、山鹿流の陣太鼓…
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「どこへ討ち入りされるおつもりで?」
「きまっとるお!教会だお教会!」
朝弱くて毎朝、眠いおー起こすなお~ってやってるちゅん助にしては珍しく早起きで興奮が治まらないのか
シュバババ!
「おっらー!ボッコボコにしてやんお~!」
とベッドの上でシャドウボクシングを演じている。
手足が短いのでちゅん助というおかしな奴を知らない人が見れば、ピコピコ奇妙に動いているようにしか見えない…
「この世界ではパーティーメンバーの募集は教会が主導して行ってくれてるんだお!」
そう、この街に来た一番の目的は仲間を集める事だった。
いくらお金があっても人獣の件で身に染みた。仲間が居ないと命がいくつあっても足りないのだ。
「この世界で序盤、最大にして最重要なイベントだお!これですべてが決する!」
「そう言っても華厳の滝ではないお!」
「そんな大げさな…」
「そう言ってもペンタゴンの防衛システムではないお!」
「意味が分からんし、さらに大げさな…」
「だまるお!そこのきさま!」
「ドラクレ3でのパーティーを今組むとしたらどうするか、言ってみせい!」
「ドラクレ3?また懐かしい話を…」
「いってみせい!!!」
ちゅん助がこうなると非常にしつこい。ここは素直に答えてやるか…
「まあ、そりゃ戦勇僧魔だろ」
「はあああああwwwww???戦勇僧魔ぁあ~???」
「なんだよ?」
「ぷぷぷのプwダサいおwダサすぎw」
「無難すぎる選択w」
「ゲームですら挑戦できんとは!このチキンめ!」
「チキンて…」
「それどちらかって言ったら…」
「もろお前だろうが…」
「だまるお!わしは鳥じゃないお!」
「あんな脚だけ入れてくれると思ったら骨だらけの部位までガッツリ入ってるファーストフードの具材と一緒にするなお!」
「まあそれ置いといて、だったらお前はどうなんだ?」
「ふふふのふ、よくぞ聞いてくれたのだお!」
「わしなら!」
「武武武武だお!」
「ブブブブだおw!!!」
「あほか!」
「勇者どこ行った!いきなりクリアしてんじゃん!」
「武武武勇だお!」
「防御力低い武闘家が3人も前に出ている件…」
「勇武武武だお!」
日和ったなコイツ…
「回復どうすんだ?草ばっかに頼るんか?」
「僧勇武武」
「あほ!居なかった僧侶がいつの間にか入ってしかも最前にいる件!」
「ケチばっかつけるなおっ!」
「お前が言うな!」
「ドラクレなんざ!どうでもいいお!」
「ゲームなんかの話もちだすんじゃねーお!」
「持ち出したんはお前だろがッ!」
「まあ、わしらは今からパーティーメンバー募集のため教会に登録に行くのだが」
「事前にお互いの考えをすり合わせておきたいお」
「前振りが長すぎて釈然とせんが、まあよろしかろう」
「きさまがメンバーに求める条件はなにか言ってみるお!」
「条件?」
「条件ていったって向こうの都合もあるだろう?」
「けど…そうだな出来ればあまり経験とか離れてなくて」
「かといって頼りになる部分があって」
「物分かりが良い様な」
「和を重んじるタイプの奴だったらいいかな?」
「まあこれでも贅沢かもしれんが…」
パカッ!
「あほ!」
「いてッ!なにすんだ!」
「アホだアホだと思っていたが、ここまでご都合主義に毒されとるとは…」
「なんだよ、そこまで都合の良い事いってないだろ!」
「どうせ選り好みなんて出来ないんだ!」
「だまるお!」
「この一世一大の最重要イベントに対して!」
「その程度のぬっるい認識!」
「片腹痛いわ!」
「加入メンバーに求める絶対的条件!」
「絶対的条件?」
「それはな!」
「CMの後で、とか言うんだろ?」
「……きさま!」
「人のネタを先バラシする奴は地獄に落ちるんだお!」
(やるつもりだったな、コイツ…)
「下らんちゃちゃ入れるんじゃないお!」
「メンバー加入の唯一にして絶対の条件!」
「それは?」
「それは!」
「ドキドキ!」
「続きはウェブで!」
「続きはウェブで!」
「………きさまなぜわしの行動が分かった?」
「もういいて!それは!?」
「唯一にして絶対条件!」
「それはな!」
「美しく!」
「可愛くて!」
「頼りになる!」
「おにゃのこだお!」
「………」
「相当な無理難題の上」
「四つもある件…」
「これは絶対に譲らんお!絶対!」
「うるさいわ!付き合いきれん!行くぞ!」
俺は足早に部屋を出た。
「まてお~このあわてもの~!」
続いてちゅん助が部屋を飛び出しいつものように頭上に陣取った。
やれやれ、付き合いきれんて…ホントに…
第四話
その1 唯一の絶対条件!
終わり
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