第6話 プロローグ その6 姿なき声

「ふせろッピュッ!!!!」


「!?」


 何処からともなく声が響いた。


 反射的にその声に従う!いや伏せるというよりは重心を取り戻すのを諦めて半ば仰向けに倒れる様な形になっただけ!眼前に触れる程にまで迫った青ムカデの攻撃を何とか鼻っ面で躱した!


 キン!いやヒュン!?いやいやパシッ!?そんな聞き取れない音にもならない様な炸裂音!?表現しがたい音色と共に目前の巨大青ムカデが一直線に貫かれるように、またあの真円孔がポッカと空いた様に感じた。俺の視界からは穴は見えない。青ムカデの体内を何かが一直線に走り抜けていった感じがあった。あまりに信じ難く、突然の目の前で起こった出来事は定かではなかったが、ムカデの尾から頭を貫くとんでもない速さの超高速飛翔体が貫通した!音や青ムカデの腹に走った変化から直感的にそう感じ取った。


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 バラバラバラバラバラ!


 空中で撃ち抜かれた形になった青ムカデは謎の攻撃によってムカデ状を保てず空中で一列の青グソク集合体に戻されると地上に落ち、弾みでバラバラに散らばった!やはり!一列全ての青グソクが今度は前後を貫かれている!信じがたい神業!恐るべき離れ業!


「だ、弾丸!?」


「イズサン!?またそにっくぶーむみたいな奴!向かってきてるお!」


 ちゅん助の声に飛翔体が発射されたであろう方向に目をやると先程と全く同じ、しかし今度は一筋の衝撃波がもの凄い勢いでこちらに接近してくるのが見えた!


 あの衝撃波の後には一瞬だが道が開ける!もう何度目だろうか!?諦めては死を覚悟し…それでもやり直し、生への希望にすがる、その先にまた生命の危機…


 しかし道が出来るという事は…希望が見える限りはその道を進むしかないではないか!?


「はあはあ…何とか…何とか行ける所までっ!」


 衝撃波の後を追って再び足を引きずりながら俺は隊が居ると思われる方向へと走り出す!


「はあはあ、ちゅ…ちゅん助、さっき伏せろって言ったの、お前か?」


「違うお!聞こえたが、わしは声も出なかった!」


「はあはあ、ううぅっ、だったら一体…誰が…あの援護射撃みたいなのは一体誰が…」


「それより!今は、逃げるんだお!」


 灰色三匹に飛びかかられた時は後に三筋の、青ムカデが貫かれた時は一筋の衝撃波。数からして衝撃波は正体不明の弾丸の様な物が飛び去った事によって発生したのか?


「ううッ!ちゅん助、あれは狙撃かなんかかな…はあはあ」


「分からんお!でも貫通孔はたったの2cm程度!46サンチ砲でもなければ!あれほどの衝撃波は考えられないお!でもそんなでっかい弾だったらわしらも粉々にふっ飛ばされとるお!」


「ゼーゼー!鉄砲以外であんな風に貫ける武器はあるのか!?」


「想像もつかんお…レールガンとかならドチャクソ速いって聞くお…」


「でも!どんなに速い弾でも質量兵器なら放物線描くはずだお!あんなに衝撃波だけ遅れて来るような、そんな遠い所から狙撃してそもそも当たるはずないんだお!」


「だ、誰が?…一体どうやって…」


 伏せろ、そう言った声の主が助けてくれているのは想像が付く。どんな武器で援護してくれているのかは全く想像も付かないが、この場から逃がすよう援護してくれているのは間違いないはずだ。しかし折角、衝撃波によって再び開いた希望の道も800mも行かないうちにまたもグソクの密集によって閉じられようとしている。


「キリがない!やっぱりだめなのか…」


 謎の援護射撃によってかなりの距離を戻れたとは言え、隊までの距離はまだ途方もないものに感じた。俺が諦めの声を上げた時、周囲の空気が揺らぎ再びあの声が聞こえた。


「伝言があるッピュ!一度しか言わないからよく聞けッピュ!」


「!?」

「!?」


「この間抜け!2回も助けてあげたのに!なにノロノロやってんのよ!ピュ!」

「良い事!?特別に大っきいの使ってあげる!でも二発しかないから!それで逃げられなかったら諦めなさい!ッピュ!」

「死にたくなかったら死ぬ気で走りなさい!分かったわね!?この間抜け!だそうだっピュー!」


「!?」

「!?」


 再び響いた謎の声に俺達は戸惑ったが、内容から何かしら援護してくれるのは間違いなさそうだった。


「大きいのって!?」


「ピュ、ってなんだおwぴゅってw」


「いや、今突っ込むとこはそこじゃねーだろ!」


「ツッコミたいッピュ!」


 ちゅん助には謎の声の主の語尾が刺さったらしく、空気を読まずにさっそく真似して頭上で飛び跳ねた…俺としてはそれどころではないのだ!


「もっとクソデカな!そにっくぶーむがくるんじゃないかお?吹っ飛ばされんように、ってあれ!!!!???」


「なんだ!?」


 後方を監視していたちゅん助が叫んだのを聞いて、思わず目をやると後方から二つの強い輝きを放つ光点が地上2m位の高さをかなりのスピードでこちらに向かって来るのが見えた!


 閃光なのか?炎なのか?強い煌めきがあっという間に俺達を追い抜いて行く。今度は発光体だ!ハッキリとその弾道は目視することが出来、うっすらとだがその光源の正体が見えた気がした。


「矢!?矢だと!?先端に光球みたいなのが光ってなかったか?!」


「ありえんお!後ろからロケットみたいに火噴いてたお!?」



 プロローグ

 その6 姿なき声

 終わり

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