初変身直前、直観で選ぶヒーローパワー!

ムネミツ

初変身直前、直観で選ぶヒーローパワー!

 俺の目の前で現実が崩壊して行く。

 刺々しい体表に巨大なギョロ目で爬虫類を思わせる巨大怪獣。

 蜘蛛の頭部と四本腕を持った異形の怪人とそれに従う黒ずくめの人型達。


 怪獣は甲高い鳴き声で叫びながら腕を振るい、ビルを壊して暴れている。

 蜘蛛の怪人は、地面に倒れた俺の胸を踏みつけてポーズを取っている。

 「クモクモ~♪ 我らチョッパーに立ち向かうとはヒーロー気取りか?」

 蜘蛛野郎が俺を嘲る、そうだよ俺はテレビのヒーローじゃねえヒーロー気取りの馬鹿だよ!

 だけど、自分が暮らしてる街を荒らされて黙ってられるわけねえだろ!

 そう叫びたかったが実際には俺の口からは咳しか出なかった。


 俺の心は怒りと渇望で燃えていた、力が欲しい! こいつら邪悪を打ち破り、街を人々を守りたい助けたいそして何よりやられっぱなしでいたくない!


 心の中で叫んだ時、俺の体が光を放ち蜘蛛の怪人が俺から離れると共に俺は光の玉となって天へと昇った。

 「……俺、死んじまったのか?」

 蜘蛛野郎から解放された俺が起き上がると、そこはいわゆる天国と言う感じの雲の上の世界と呼べる空間だった。

 「大丈夫だ、君はまだ死んでいない♪」

 突然、胡散臭いさわやかなイケボが聞こえると同時に、全身真っ白と言う異形の人型が俺の前に現れた。

 「あんたは誰だ、俺を助けてくれたのはありがたいが俺以外も助けてくれ!」

 「僕は君に目を付けたプロデューサ、もとい人類の守護神だ♪」

 「ちょっと待て、俺は芸能界ならぬ神様にスカウトされたってか?」

 「イエスだね♪ 勘が良いよ、主演俳優にピッタリだ♪」

 「怪獣も怪人もあんたの仕込みか?」

 俺は話をしてみて自称神を疑った、神様がラスボスってよくあるパターンだし。

 「それはノーだ、神として君に誓おうあれらは異世界からの侵略者だ」

 「わかった、引き受けるからさっさと力をくれよプロデューサー?」

 「決断早っ! ここは現実とは時間の流れが違うから、僕とゆっくり話し合っても良いんだよ?」

 俺の言葉に驚く神。

 「良いよ、主演俳優引き受けるよ俺は正義のヒーローになりたかったんだ」

 「うんうん、君を見ていたからわかるよ♪ OK、君に力をプレゼントしようどっちが良い?」

 神が俺の前に両手を広げて突き出した、神の左右の掌には蛍光灯と見間違える白く発光する輪っか状の物とどす黒い闇をあふれ出しているバッテン上の何かだった。

 「いや、〇✕クイズかよ!」

 思わず神にツッコンだ、どっちか不正解とかこの世界の緊急事態に止めてくれ。

 「いや、どちらも正解だよ? 君はどちらの力を選ぶかな?」

 「俺はこっちの丸を選ぶぜ!」

 突き付けられた選択、俺は直観に従い白い丸型の力を掴み取って選んだ。


 それと同時に白い輪っかが消えて俺は額に灼熱感を感じ、自分が力がを得た事や力の使い方が直接脳に刻まれた。

 「……い、行ける! この力なら倒せる、守れる、助けられる!」

 「ああ、やはり君を選んでよかった♪ 最初に光の力を選んだなら、こちらの闇の力は君に更なる力が必要になった時に第二段階のフォームとして授けて上げよう」

 神がメタい事を言い✕状の力を自分へと収納した。

 「特撮番組みたいな事を言うなよ!」

 「特撮番組のヒーローみたいな力を欲したのは君だよ、頑張り給えリングマン♪」

 俺は安直なヒーローネームを神から付けられると同時に、額に金色に輝く大きな輪が付いた白い超人の姿に変身していた。


 こうして、俺は直観で手に入れたヒーローの力で地上へと戻り蜘蛛怪人と怪獣を撃破しヒーローとしてのデビュー戦を勝利で飾った。

 

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