第21話 妻は泳げない?

僕は日本海側の地方の生まれなので、海にはよく行っていた。

泳ぎに行くといえば海だった。

だからプールに行くことは少なかった。


僕は水泳を長くやっていたこともあり、浮き輪などに乗って遊ぶというよりはガチで泳ぐ方が好きだった。


一方、妻は山育ちなもので、海には滅多に行ったことがなく、プールばかりだった。


とある夏の日のこと。



「あっついね〜。」


『暑いねぇ。』


「プール行きたくなるよね。」


『えー、プール?んー。』


「こんな暑いんだから泳ぎたいよー。」


『それなら海行こうよ。海の方が人も少ないし楽しいよ。』


「海遠いじゃん。プールなら車で10分だけど、海は高速乗らなきゃだよ。」


『でもプールは狭いし、人多いし。まともに泳げないよ。』


「私は夫みたいにガチで泳がないから。私浮き輪でいいし。」


『そうだね。妻はカナヅチだもんね。』



「はぁ?」






『いや、あの。』


「誰がカナヅチだって?」


『いや、ちがっ。妻はガチの泳ぎよりも浮き輪の方が好きだよねってこと!』


「私泳げるから!」


『うんうん。泳げるよね!』


「信じてないでしょ?」


『そういうわけじゃないけど。今回はプールにしようか。』


「なんかプールは泳げないやつが行くところみたいで馬鹿にされるから海でいいよ。私だって泳げるからね。」


『馬鹿にしてないよ。目的が違うでしょ?今回は妻ちゃんのやりたい浮き輪をメインにしてプール行こう!』


「いや、海でいい。浮き輪なんていらないし。馬鹿にするな。」


(この、頑固者が・・・。)



そして、海に決め、車を走らせた。


高速道路を走らせている最中のこと。



「海久々だねー!すっごく楽しみー!」


『良かったー。プールもいいけど、海も楽しいからね!』


「浮き輪に乗って波に揺られるの気持ちいいよねー」


『え、浮き輪いるの?』


「え?」


『持ってきてないよ。』


「は?」


『え?いるの?』


「海行くのに浮き輪ないとかありえないんだけど。」


『いや、浮き輪いらないって妻が言ってたから。』


「あんなの売り言葉に買い言葉でしょ!信じられない!」


『ガチで泳ぐつもりかと。』





「私泳げないから!!」





『えー。』



ガチで泳げなかった妻のために海の家で浮き輪を借りました。


質問:妻は泳げない?

結論:浮き輪も楽しかった。

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