第19話 小遣い戦争!《神降臨》

大の大人の小遣いが1,700円ってどういうことだ。

こんな不条理に抵抗するべく、僕は神(妻)に喧嘩をふっかける。




「金遣い荒いから余るほどあげない。必要なら言って。」




妻は僕の要求にそう冷たく返した。


『僕だってひとりの人間だ!いくら将来のためとはいえ、生きている〈今〉を大事に過ごしたいんだ。』


「だから必要なら言いなって。夫のプレゼンが上手ければ追加で出してあげるよ。」


『趣味のためのお金なんて一度もくれたことないのに・・・。プレゼンしたって無駄じゃないか。』


「趣味のための金なんて無駄でしょ?夫の趣味より息子の大学の入学金貯める方が優先度高い。あきらめて。」




こいつは、









悪魔だ!!




息子のためなら夫などどうだっていいと思っているのだ。

僕は心が折れてしまった。

1年間もあの地獄の配給で我慢して生きてきたのにまだ僕の人権は認められていないのだ。

諦めよう。

僕は給料だけ持ってくるATMになるのだ。ATMには趣味なんてない。月3万円の電気代がかかるだけだ。

それでいいんだ。

それが我が家の幸せなのだ。



こうして、神に喧嘩をふっかけたものの、圧倒的な力の前に一矢報いることはできなかった。

心を折られたときは自転車に乗るのが一番だった。

簡単に現実逃避ができるからだ。


かれこれ3時間くらい走っただろうか。

日も沈みかけてきたから家に帰ることにした。神の住む国へ。


『ただいまー』


「おかえりー。遅かったね。遠くのATMでも行ったのかと思った。」


『は?イヤミですか?ATMがATMに行きますってか?』





「はい、5千円」



妻が僕に5千円札を差し出してきた。


『え?なにこれ?』


「ちょーっと可哀想だったかなと思って。お小遣い3万5千円にしてあげる。あと、お昼ご飯もお弁当欲しかったら言ってね。作ってあげるから。」


『え、あの・・・』


「あと、後輩にはご飯とか奢ってあげなさいね。夫も先輩達から良くしてもらってたんだし、その分夫が後輩に良くしてあげなさい。そのお金はちゃんとあげるから。」


『え、どどどどどうしたの?』


「1年間少ないお小遣いで頑張ってくれたの知っているから、今回は夫の頑張りに免じて小遣いアップを認めましょう。」


『本当に?』


「でも、無駄遣いしないようにね。」


『わーい!ありがとうございまーす!きゃーー!さっそくゴルフでも行こうかなー!!』


「すぐに散財かよ!小遣い減らすぞ!!」




こうして〈第一回〉小遣い戦争は僕の勝利で幕を閉じる。


が、その数ヶ月後、小遣いが2万円になったのはまた別のお話(第二回で会いましょう)。




質問:小遣い戦争!

結論:〈健康で文化的な最低限度の生活〉を送るために最も必要なのは思いやりの心である(多少のお金も必要だよっ)。

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