先輩と後輩くんの直観

ジュオミシキ

第1話

「あの、先輩。一つ聞いてもいいですか?」

「おや。出会ってすぐに質問とは、君も私の事をもっとよく知りたいと思ってくれたのかな?そんな風に私に興味を持ってくれるのは喜ばしい限りだよ。さてさて何を聞きたいのかな?もちろん君にならなんでも話そう。そうだね、君が知りたい私のスリーサイ……」

「どうしてさっきから僕の家の前に立ち塞がっているんですか?家に入れないんですけど」

「……。上から90、」

「聞こえないフリしてないで答えてくれませんかね?それと多分そのデータは盛ってると思います」

「盛ってないもん!そんなのどうして君に分かるんだ!」

「いえ、なんとなく直観ですけど」

「よく聞くんだ後輩くん、直観で物事を判断してしまわないほうがいい。もっと時間をかけて深く考えるんだ」

「……」(ジー)

「な、何をしてるんだ君は。たしかにもっと考えろとは言ったけれども、そんなマジマジと見ろとは言ってないだろう」

「あ、はい。すいません。……それよりも、そろそろ僕を家の中に入れてくれないんでしょうか?」

「もっとじっくりと凝視してもらって構わない。ほら、ピタッと寄ってくれても」

「いえ、そんな冗談はいいんですけど、」

「……たしかに半分はただの冗談だったけれど、もう半分は別に……」

「絶妙に聞こえるか聞こえないかくらいの声で呟くのはやめてください。所々聞こえてドキドキします」

「! そ、そうかい。ふふっ。少し恥ずかしいけれど、後輩くんも私の魅力には勝てな……」

「『対価に、半分は破綻状態だったけど、もう半分が別人に』って、よく分かりませんがなんだか怖いですよ」

「そんなこと言ってないよ!?私は、ただ冗談のつもりはなかったって、」

「え?」

「あ、これじゃまるで私が痴女みたいじゃないか!違う、違うんだ後輩くん。そういうつもりではなく、ただ時間を稼ぐためだとしてだね、そう、あの、」

「そうなんですね、時間稼ぎの足止めだと」

「はっ、しまった!」

「しょうがないですねぇ、やっぱり先輩は時たまポンコツなんですから」

「ポ、ポン!?」

「でもそんなポンコツな所も好きですよ、ポンコツな先輩」

「!? わ、私は、好きだって突然言われたのを喜べば良いのか?でもポンコツって言ったぁあ!」

「はいはい。もう寒いですし、そろそろ中に入りましょうか」

「あ、いや、でも私は」

「父さんと母さんから僕の誕生日の祝いをするからって準備ができるまで僕を引き止めておくように言われてるんですよね?」

「へ?」

「なんで知ってるんだって顔してますけど、そう頼んだの実は僕なんですよね」

「へ??」

「誕生日のお祝いに何が欲しいかって聞かれたので、あれこれと画策する先輩が見てみたいって言ったんですよ」

「……それが、こう?」

「はい。それが、こうです」

「……はぁぁ。まったく、君ってやつはどうしてこんな事を……」

「すみません、一番に思いついたのが先輩の事だったので」

「君はそう言えばなんでも許してもらえるなんて甘い考えを持っているのではないだろうか?大抵の者はそういうのでコロッと騙されてしまうかもしれないけれど、それではダメだ、私はそんな事では許しはしないよ」

「なんで向こう向いてるんですか。もしやニヤけてます? まあ、ただの本心だったのでどうでもいいですけど」

「……君は本当に恥ずかしいような事を平気で言うね。羞恥のポイントがよく分からないよ」

「はいはい、もうプレゼントも見れましたし、あったかい家の中に早く入りましょう」

「…………」

「え? あの、ちょっと?」

「なんだい?だって君は本日の主役なんだろう?これくらいしなくてはね」

「いやいや、でも……当たってますよ?」

「当てているのさ。それに寒いのならば、こうして腕を組むくらいすればいいじゃないか。 ふふっ、さすがの君も恥ずかしいかい?」

「……あの、先輩」

「なんだい?」

「いえ、ただふと思った事なんですけど」

「? 早く言ってくれないかい?気になるじゃないか」

「たしかに、直観だけじゃ分からない事ってありま……」(ゴッ)

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