第26話 突然の別れ……

「正輝……」

「……さっき、あの方から連絡が有って、正輝は立ち直れたと判断したらしいの…」

「同時に、私の事も一部だけど教えてくれた…」


 美空はそう言い、静かに語り出した。


「やはり…、私は本来の姿が有って、もう戻らないと行けないらしい…」

「私の魂と体には、見えない何かの糸で繋がっていて、本当の体が無くなると、私の魂も消える見たいなの…」


「最初の頃は『何で、こんなお願い受けなければ成らないの!』と思っていたけど、意外にとこの生活も楽しかったよ。正輝!」


「美空……。これは夢なのか?」

「それとも現実なのか?」


 俺は冷静を装って、美空に話し掛けるが……


「さぁ……。どちら何だろうね?」

「正輝次第だと思うよ!」


 美空は寂しそうな顔をしながら笑う。

 こんな突然のお別れなんて嫌だ!!


「美空!」

「美空の言う、あの方と話をさせてくれ!!」

「いくら何でも、突然過ぎるだろ!!」


 俺は美空にそう言うが……


「あの方は……赤羽山あかばねさんの神様なの」

「あなたのレベルで、会話何てしてくれないわ!」


 美空は突き放すように言う。


「赤羽山……?」

「聞いた事有るぞ! 隣の県に有る山だな!」


「ええ、そうよ……」


「じゃあ、何で美空が、山の神様と話が出来るのだ!?」


「私はつい最近……、野良猫に絡まれていた蛇を助けた事が有るのよ」

「その縁が有って、私はこの姿に成れた言うべきか成ってしまった」

「もしあの時、蛇を助けていなければ、私はこの人形の中にも入れなかったかも知れない……」


「美空と神様の関係は解った!」

「でも、俺は神様の関係なんか知らないぞ!!」


「正輝にとっては、只の偶然なんだって……」

「人形に魂が宿るって知っている?」


「あぁ…聞いた事は有るよ」


「元々、人形には魂が入って居ないのだけど、短い期間で魂が入り込みやすいの。動物霊とか昆虫の霊が……」


「正輝の人形はまだ日が浅かった所為か、何かの魂が入っていなかった…」

「だから、私は入り込めてしまった……」


「一度入り込んでしまうと特別な力で引き出すか、その人形自体をお炊き上げするしか無い」

「見かねた神様が、偶然側に居たあなたに、偶々たまたま願いが叶っただけなんだよ!」

「神様自体も…、正輝の事は何も知らない感じだし、運が良かっただけかもね!」


「運が良いのか、悪いのか、本当に悩むよ……」


「まぁ、普通はそうよね。でも、あなたは生活を立て直せたわ!」

「大手グループ企業に就職は決まったし、家事全般のレベルも上がって、部屋も人を呼べる状態の綺麗さが有る。もう、私がここに居る必要は無いわ!」


「美空……」


「あなたが私の事をどう思っていたかは知らないけど、最後の方はこれでも楽しかったわ!」


「だから、あなたにプレゼントを上げるわ!」

「本当は私が貰うべきなんだけど……」


 美空はそう言って、ツインテールの片側を結んでいるリボンをほどく。


「はい!」

「これ上げる……」

「これ見て、社会生活頑張りなさい!」


 美空は、美空の使っていたリボンを俺に手渡す。

 俺はそれを黙って受け取ると……


「時間だわ……さようなら。正輝…」


 美空の体が『すぅ~』と薄くなっていく……


「まっ、待って、美空!!」


 俺は美空の体を掴もうとしたが、すり抜けてしまう!!


「楽しかったよ! しっかりやれよ!!」


「美空~~~」


 美空は初めて、俺に満面の笑顔を見せて……すっと、美空の体は完全に消えてしまった……


「うぁ~~~」


 俺は大声を出して泣き叫ぶ!

 好きとかの感情では無い!

 凄く大切な人を失ったからだ!!

 俺は美空のリボンを握りしめながら泣きわめいた……

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