第6話 美人局

「やらなければ良かった!!」


 出会いアプリで出会いは有ったが、それは美人局つつもたせだった……

 それも1回目の出会いで美人局で有る。踏んだり蹴ったりだ!


 俺は万が一に備えて、身分証明書や銀行のカード類は持って出会いには行かなかったが、持ち金は美人局の連中らに全部取られてしまった!

 勉強代と言いたいが、無職の身分で金だけ取られたら、たまったもんじゃない!!


 一応、警察には被害届は出したが、あいつらが捕まる事は無いだろう……

 連中らは何故か小銭は持っていかったので、家に戻る前にコンビニ寄って、残っていた小銭で酒とつまみを買ってしまう。

 普段は酒を飲まないが、酒をどうしても飲みたい気持ちだった。

 目に付いた酒の缶を買い物カゴに適当に入れて、流石に酒だけでは体に悪いからおつまみを買う。

 

 身はボロボロにされなかったが、酒の入ったレジ袋をぶら下げてアパートに戻る。心はボロボロだが……

 部屋の電気を付けて、座椅子にドカッと座る。テーブルの端には以前買った置き人形が置かれている。

 俺はそれを軽く見て、コンビニで買った酒のプルタブを開けて、酒を一気に流し込む!


「はぁ~~~」


 無駄に長いため息を吐く。


「旨いと言うべきか、流し込んでいると言うべきか」

「でも……、飲まないと気分が落ち着かない」


 俺は1人でブツブツ呟きながら酒を飲む。

 口の中がアルコール分で満たされた所に、同じくコンビニで買ったチーズかまぼこを少し食べて、また酒を流し込む……


「くそやろう~~」

「なんで、こんな目に遭うんだよ~~」


「全部、西岡が悪いんだ!!」

「あいつが俺の意見を聞いていれば、今頃は―――」


 一人喋りをしながら、俺は酒を一気に飲み干して、次の缶を開ける……

 普段は酒を飲んでも1缶で終える事が殆どだが、2缶目を開けてしまう。それも今度はロング缶だ。それもグイッとジュースを飲むように飲む。

 空しいやけ酒の時間で有る……

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