転生してもエロかった健

維 黎

第1話

 遠い未来か近い未来か知らんけど、いつかはシックスしなくても普通に子供を産む時代が来るのだろう。


(注:本作品は全年齢推奨の為、コウノトリが赤ちゃんを運んでくること及び、それに付随するリラクセーション効果を求める行為をシックスと表記させていただきます。ご了承ください)


 で、男も女もそれぞれ異性とシックスしなくても子供が出来るようになって、そんでもって男軍と女軍で戦争なんかが始まったりするのだろう。最終的には歌で解決したり、しなかったり。


(注:本作品はこの世のあらゆる存在をオマージュしています)



 さて。令和三年三月某日。本作の主人公であるところの何某なにがし けんは死んだはずなのだが、この瞬間意識が覚醒した。

 ここでちなみにな話が二つ。


 ――ひとつ。何某なにがしは苗字ではない。この先、主人公の表記は『健』で進んでいくので苗字は考えなかった。


 ――ふたつ。前振りの9行は文字数オーバーしたら削除する予定のものなので、厳密にはいらなかったりする――という、この説明が残っている時点で文字数セーフだろうけど。


 健の死因は出血死。

 全年齢対象作品の為、もう少しかみ砕いていうと、からだからいっぱいチがでちゃったのでケンのおじちゃんはしんでしまったのでつ。


 VR ADVヴァーチャル・アドベンチャーゲーム『チラスケ学園おつっぱい』をプレイしていて、推しの女の子おしキャラを攻略した瞬間、鼻から大量の出血。そのまま意識が戻らず出血性ショック死でこの世を去ったのが、つい5分前。

 健は今まさに、いわゆる流行はやりの死亡からの転生という王道ラノベな展開中なのだ。


 辺りを見回してみる。見覚えがなく――はない部屋。

 ここは健が住んでいる家の子供部屋けんのへや。状況的には眠っていたらしい。

 健は起き上がって勉強机の上に置いてあったスマホを手に取ると、ボタンを押して待機画面スリープ状態を解除する。


 3月某日(日)14:38


 スマホの画面には年号の表示はなかったが、今が令和三年であることは記憶している。と、ズキン! と差すような痛みが頭――というより脳から直接伝わってくるような感覚。

 転生前の記憶がある。

 転生後の記憶もある。

 それら二つが混ざり合った為に起こった症状だろうか。


 転生した先は異世界でもゲーム世界でもなく、転生前と同じ世界の日本。厳密にいえば5分ほど過去だが。

 しかし、身体は別人だった。

 小学五年生、11歳。名前は同じけん

 転生前の小学五年生に戻ったのではなく、まったくの別人の(名前は同じだが)小学五年生に転生していた。

 なぜわかるかといえば、転生後の身体の記憶があるからだ。いや、記憶というよりは記録といった方が正しいだろうか。

 それは写真や映像のようなもの。

 意識の外に追いやっておけば蘇ることはないが、自分の意思で思い出そうとすると、鮮明のその場面シーンが思い起こせる。まるで今見ているかのように。


 ちなみに転生前の記憶は、世間一般的な程度しか覚えていない。

 二日前に食べた物も思い出せ――確か消費期限が10日とおかほど過ぎたハンバーガー(スーパーで売ってた98円のやつ)を食べて、丸半日、トイレに籠っていた――記憶を思い出す。

 一番直近での記憶となると『チラスケ学園おつっぱい』の推しキャラを攻略し、いざシックススタート! というところまで。

 その瞬間、鼻の奥がツーンとしてきた健は、天井を見上げると右手で後頭部をトントンとチョップする。

 転生前の記憶を探ろうとすると脳に負荷がかかるのかもしれない。


 転生後の記憶はどれも鮮明に覚えているし、思い出せる。

 脳が疲れるので大量に思い出したことはないが、おそらく11年間の毎日の記憶を思い出せるだろう。

 例えで記憶を引き出してみる。


 二年生の時の担任、佐倉 舞先生が、健の席の前で身をかがめて落とした消しゴムを拾ってくれている。その時ちらりと垣間見えたブラジャーは薄いブルー。


 三年生の時の音楽の飯島 かなで先生が、健の席の前で身をかがめて落とした消しゴムを拾ってくれている。その時ちらりと垣間見たブラジャーはピンク。


 今の担任の宮ノ下 琴美先生が、健の席の前で身をかがめて落とした消しゴムを拾ってくれている。その時ちらりと垣間見たブラジャーはなんと紫!!


 このように過去の記憶を、記録した映像でまるで今見たかのように思い出すことが出来るのだ。


――直観像記憶。


 映像記憶とも呼ばれるこの能力は、見たものをそのままの状態で記憶することが出来る。もっとも、子供の頃にだけ見られる能力で、ごく稀にこの能力を維持したままの大人も確認出来ているが、普通は成長するにつれ、失われていく――というのが定説だ。


 直観とは情報の認識形態のことをいう。

 過去の経験、書物、伝聞、直視などで得た知識を元にした判断と思っても大きく間違ってはいないだろう。


 全年齢を対象に説明するならば、ぼく(わたし)のしってることぜんぶのことなのでつ。


 ともあれ直観像記憶は圧倒的なチート能力には違いない。この能力を使えば、勝ち組人生は難しくない。

 例えば勉強方面。

 記憶系の科目は無敵と思われる。

 他には――

 他には……

 ほか……

 ともかく、いろいろあるはずだ。


 何にせよ、健は11歳に転生したのだ。人生の時間はまだまだたっぷりある。

 直観像記憶が何歳まで健に残っているかはわからないが、一か月、二か月の内に消えてしまうということはあるまい。

 健の瞳にメラメラとした浴場(注:誤変換ではありません)に決意が灯る。

 今の健はただの11歳小学五年生ではない。

 直観像記憶のデータと転生前による人生経験による直観力!

 見た目は子供、煩悩は大人!

 総合的に今導き出された健の直観は――


 イモンモールのらせん階段!!

 11歳という年齢では不審者扱いはされないはず!


 健は自らの直観に打ち震えた。

 健は直観像記憶を使って、盗さ……全年齢、全年齢。撮影するつもりだったのだ。

 今日は日曜日。天気も穏やかで人がいっぱいいるだろう。

 いざ、かん! ……の前に。

 忘れない内に『チラスケ学園おつっぱい』の推しキャラとのシックスシーンを直観像記憶で記憶しておくことにしする。


 転生したとはいえ、まだ10分もたっていない。集中して思い出せば――

 健の脳裏に全裸の女の子の姿が浮かび上がる。

 確実に記憶した――と、思った瞬間、水気を含んだ何かが噴き出すような音が聞こえ、鼻の奥でツーンとした刺激を感じたかと思うと、健の意識は急激に薄れていった――


 Re:転生してもエロかった健


 が、あるかどうかは直観からいうと――ないでしょう。



追記:本作品は冒頭で述べたように全年齢推奨です。よって18禁美少女ゲーム『チラスケ学園おつっぱい』のゲーム内容の描写を差し控えたことをご了承ください。



                  ――了――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

転生してもエロかった健 維 黎 @yuirei

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ