Fantasic怪文書

メメ宮 景斗

幼少期の記憶 (蛾の飼育施設の話)

 父方の祖父の家の地下には蛾の飼育施設がある。台所の棚の下にある人一人が収まるぐらいの穴からカンテラを持って梯子で下に降り、狭い防護扉を開けると、そびえ立つのは目の細かい檻。


 ささめきのような羽音が聞こえる。打ちっぱなしのコンクリートの壁には、瑪瑙のような、極彩色のシミ。


 祖父は檻の隙間から細いスプーンを突っ込んで、中にいる蛾の鱗粉をそっと剥いだ。引き抜くと色褪せた粉が付着していた。祖父はその粉を瓶に落とし、スプーンに残った粉をぺろりと舐めた。


 僕は瓶を渡され、台所にいる祖母のところに持っていく。祖母はそれを砂糖に混ぜ込みラメ入りの金平糖を作った。お駄賃代わりに金平糖を3つ貰った僕は庭先でそれを舐めた。

 幼少期の記憶。

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