幽霊になったA君と私の話

ラズベリーパイ

第1話

 直観というと、『わかる、分かるぞ、自分には分かる、〇〇が!』というもののようなイメージがあるが、実の所、結構外れることも多い。

 ただ当たった時の印象が強いがために、直観は当たる気になるのだろう。

 おそらくは。


 多分。

 そうであるから、現在目の前に見えている…彼の個人情報的なものも含めてA君というべきだろう。

 英語の授業を受けている真っ最中な私は、彼を直観的に【幽霊】であると思った。


 実際に半透明で教室に浮かび上がったり人の顔をのぞき込んだり、空中で逆立ちして腰をくねらしたり、上からのぞき込んだりといった行動をとっているのにだれ一人気づかない辺りは、幽霊のようだ。

 ちなみにこのA君、昨日交通事故にあって今は病院にいるらしい。

 物語で見かけた事のある幽体離脱というものかもしれない。


 けれどなぜこの教室にいるのか。

 私には見えるのか。

 状況が分からない私は、とりあえず授業中なので大人しく教科書を見ていたのだが…。


「このキャラ、〇〇先生に似ているよな」

「ごふっ」


 A君は教科書を見ながら、私に向かってそういった。

 確かにこの髪型はよく似ているが、今笑ったのでこのA君に気づかれてしまっただろうか?

 見上げると彼と目が合って、


「ひょっとして俺が見えるのか?」

「…今は授業中なのでお昼休みにして」


 そう話したのだった。






 お昼休みにそれほどしたくしくないA君の幽霊? と話してみたが、


「気づいたら教室にいたんだ」


 との事なので交通事故の話を伝えてから、このA君を病院に連れていくことにした。

 建前上はお見舞いであるので、花束を一つ。

 ちょっとした出費だが、放っておくのもあれだし理由が理由なのでお見舞いという事に。


 その理由であれば先生からも病院の名前を聞けたからだ。

 そして病院に行くと未だ目を覚まさないA君が。


「物語だとキスで目が覚めるよな」


 といったあほな事を言い始めたのは無視して。

 ふと、直観的に、ひょっとして幽霊は【私にはつかめるのではないか?】と思った。

 後から脳内に現れる理由としては、【見える】という事は【実在】しているのである。


 幻覚、というものもあるにはあるが、それだって何らかの物質が【存在】していてそれの影響で見えるとい事象が怒っているのだ。

 煙にうつった影だって触れるのは難しいかもしれないが、煙はそこに存在していたので捕まえるのは難しいが触れられるわけである。

 後で考えてみると、訳の分からない事を考えているな、と納得できたけれどその時はそういう気分だったのでA君の胸倉を【掴んで】、


「あ~れ~」


 悲鳴? を上げるA君の幽霊を体に放り込んだ。

 ずぼっと幽霊が本体に入り、また幽霊として出てくるかどうか見守っていた所、目が開かれていく。


「…もうちょっといい雰囲気で目が覚めたかったな」


 そうA君が呟いたのだった。





 結局どうしてA君の姿が私に見えていたのかは分からないが、無事A君は目を覚ました。

 幽霊だった時の記憶があったらしい。

 珍しい事もあると思う。


 そんなこんなでそういった縁で【友達】になった私と彼が今後どうなったかについてや、事故で思いっきりが良くなったA君が何をしたか、そしてもしかしたら私が見えていたのは…な理由の推測については、また別の機会に話そうと思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

幽霊になったA君と私の話 ラズベリーパイ @Al2O3

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ