番外編2 キース
キースは自分の気持ちの変化に気がついていた。姉であるロベリアが現国王シロン・リオニーに認められてギルバーツ・ノーマントと付き合うことになった。父親であるドーマンも考えを改めたのか、付き合うことを認めた。
それだけではなく、ロベリアに対する態度にも変化が現れた。『悪役令嬢』と呼ばれている理由を、シロンが国王となったあの日、ロベリアが着替えるために退室したときに聞いてからロベリアを信じていなかったことに気がついたのだ。
それまで自分がロベリアを信じていなかったと、ロベリアという存在を見ていなかったと気づいていなかったのだ。
そして、キースは人族以外が嫌いだということには変わりはなかった。けれど、それは父親と同じくしっかりと1人1人を見ていないからでもあった。だからと言って、じっくり見ることはしない。嫌いなことには変わりないのだから。
ただ、一つ変わったことがあった。それは、納得したうえでギルバーツを認めたということ。けれど、自分からロベリアをとったという気はしている。
正直、ギルバーツのことは嫌いではないのだ。それでも睨みつけてしまうのは、自分から取ったからという気がしているからなのだ。
それに、キースの気持ちの変化はこれではない。
父親が仕事で出かけるときは、一緒について行くようになった。今は勉強に力を入れているため、休みの日や宿題もない日について行くだけ。
キースは後を継ぐ気でいるのだ。そして、今日も仕事について行った。帰宅したのは2時間後。たった2時間なのに、キースは疲れていた。
これからお昼という時間だけれど、すでに眠りたい気分だったのだ。しかし、部屋へと向かう途中で見えたものにキースは足を止めた。
それは、金髪碧眼の可愛い女の子。名前はミルフィー・リトイアル。最近毎日と言ってもいいほどこの家にやって来る。
目的はキースに会うため。キースが突き放しても、ミルフィーのキースが好きという気持ちに変わりはなかったのだ。
そして、キースの気持ちに変化が現れたのがミルフィーに対してだ。今まではロベリアしか見ていなかった。しかし、ロベリアとギルバーツが付き合うことに納得したことにより、ミルフィーを見る目が変わったのだ。
気づいてしまったのだ。ミルフィーがロベリアが言っていたように可愛いのだと。
自覚した瞬間、キースはミルフィーと顔を合わせることができなくなってしまった。遠くから見ているだけでも顔が赤くなってしまうのだ。まともに話せるわけがない。
それに、今日はどうやら昼食の手伝いをしているようだ。
「ミルフィーの手料理……」
呟いた言葉に、キースは周りを見る。誰にも見られていないか、聞かれていないかと確認をする。誰もいなかったことに小さく安堵の息を吐く。
これが恋なのだと、気づかないキースではない。ロベリアに対する思いと少し違うそれに、ロベリアに対しては姉として好きだったのだと今更ながらに気づいていた。
ただ本当に好きなのだと思っていたのだ。
キースと父親が帰って来たことに気づいた母親がミルフィーに何かを言う。すると、ミルフィーはキースを見て微笑んだ。
その微笑みにキースは僅かに顔を赤くして右手を上げて答えたのだった。
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