君の直観が僕を逃がさない

ケイくんとナナさん或いは義鷹=gsgs

君の直感が僕を逃がさない

僕は昔から勉強が好きで直観がよかった。だから謎解き番組を見ていても答えがすぐ分かったし、友だちが僕に隠し事をしてもすぐにその隠している内容が分かった。でも君に対してだけはこの勘は働いてくれることは無く、逆にいつも君に振り回されてきた。例えば、そう先週の土曜日も──



ここ最近、毎週のように彼女と遊びに行っていることに気付いた。確かに彼女と遊ぶのは楽しいけれど、このままだといつか君から離れられなくなってしまう。そんな危機感を感じて、いつものように部屋で籠っていたら彼女の味方をする母親を筆頭とする家族によって部屋から引きずり出されて、一日中遊びに付き合わされる。そして僕を君の虜にさせられるんだ……だから僕は最寄りの駅から数分電車に揺られてターミナル駅へとやって来た。とは言っても、普段は部屋に籠っているせいか何をして過ごせば良いのか分からずに駅ビルに入っているここら辺では最も大規模な本屋で時間を潰していた。あっ、この本の新刊出てるじゃん……あっ、こっちも出てる。そういえばお金幾ら持っていたっけ?そうして結局一時間ほど店を回って気になった本や既に持っているシリーズの新刊を五冊ほど買った僕は、ホクホク顔で店を出ようとした。しかしその時、後ろから「見~つけた」と聞きたくなかった声が聞こえた。どうか聞き違いであってくれ、そう願いつつ後ろを振り返るとそこにはノースリーブのシャツに薄い青のカーディガンを着て、天使のような笑みを浮かべた君が居た

「やっぱりここに居たわね!さぁ今日も遊びに行くわよ!」

居るとは思わなかった僕は思わず「なんで君がここに……」と呟くと君は当たり前のような顔をして「君の行動は全てお見通しよ」そう言って驚きで動けない僕に近付き、腕を組んで一言。

「貴方は私から逃げるなんて出来ないのよ」

そして腕を引かれて日が落ちるまでショッピングや映画、おやつのスイーツと散々付き合わされるのだった。家に帰る頃にはくたくたで食事や入浴もほどほどに直ぐに眠ってしまうのであった。



そうして一週間後、彼女が来る前に出掛けようと玄関を開けた僕の前には白いワンピースを着た彼女が先週のように立っていた。

「おはよう、今日はどこに行こうかしら?」

そう言って笑顔で手を振る君に少し怖くなって思いきって聞いてみることにした。なんで僕の行動が分かるの?と、すると君は微笑んで

「そんなの決まってるじゃない。私は君と似ているわ、だから君の行動が分かるのよ」と答えた。似てる……?そんな予想外の答えに困惑していると君が言う似ている部分を挙げ始めた。

「まず、食べ物の好みでしょ。どのお店に行っても私たち、毎回同じものを頼んでるでしょ?例えばパスタ屋さんだったらペペロンチーノ系だし、ハンバーグ屋さんだったら和風ハンバーグを頼むでしょ?回りにあまり居ないのよね和風ハンバーグが好きな人って」

確かにレストランに行けば同じものをほぼ毎回頼んでいる気がする。でもそれだけで……そう思っていたら君は次々に似ている点を挙げた。君に選んでと言われたときに僕が選ぶ服、テストの点数の取り方、勉強スタイル、そして──

「私が君を好きなように、君も私が好きってこと」

これまで知られたらこれまでみたいに遊べなくなるんじゃないか、そんな不安から隠していた想いまで当てられた。

「そ、そんなこと思ってなんて……」「嘘ね、私の直観がそう言っているのよ。私、これまでの十何年の人生でこの直観を外したこと無いの、君が認めたくない理由も分かっているのよ、私から離れ──」

人通りも有る道でそんなことを言われるのはさすがに羞恥心が限界だった。僕は君の唇に手を押し当ててこれ以上話せないようにした。そして

「ごめん!嘘ついたのは謝るからこんなところでそんな大きな声で言わないで……恥ずかしくなるから……認めるよ、僕は君が好きだよ。でもなんで気付いたの?」

と言って、君の口元から手を離すと僕の声で「好き」という言葉を聞いて少し擽ったそうにしながら言った

「言ったでしょ?私の直観は鋭いのよ。」

そして僕の手を握っていつものように街へと連れ出した。

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