第33話 動物園 その2

「うっ、ごめんなさい…木華。お手伝いの自慢話をして」


「ううん。私も意地になっちゃってゴメンね、音羽ちゃん……」


 無事に収まった、音羽ちゃんと木華ちゃん。

 するとお姉ちゃんは、私の方にそっと顔を寄せてくる。


「やっぱり恵那の言う通り、あの2人ちょっと仲悪そうだね」

「あれ位の会話で、言い合いに成る何て珍しいわよ…」


「うん…」

「普段は問題ないけど、お互い変な意地が有るみたいで、時々あぁ成るの…」


「なるほどね…!」


 お姉ちゃんはそう呟いて、姿勢を戻した。

 その後、何かを言うのかなと思ったけど、その話に関しては其処で終わった。


 ……


 渋滞も抜けて、お姉ちゃんの車で揺られる事約1時間。

 私達は県立動物園に到着した。

 園内の駐車場に車を停めて、私達は車から降りる。


「う~ん、良い天気ねぇ~。絶好の行楽日和~~♪」


 伸びをしながら、喋るお姉ちゃん。

 運転お疲れさま!


「でも、人も多そうだね~~。お弁当食べる場所有るかな~?」


 動物園に来た早々、動物よりお昼の場所を心配する木華ちゃん。


「まったく、あんたは…今日は動物園に来たのよ!」

「先に、動物を見る方を心配しなさいよ!!」


「まあ、まあ……」

「音羽ちゃん、木華ちゃん。お喋りは其処までにして、中に入りましょ!」


 お姉ちゃんが、上手に話の中に入る。

 その中に私も加わる。


「そうだよね、早く行こ。音羽ちゃん、木華ちゃん!!」


 車内で少し、いがみ合いが有った音羽ちゃんと木華ちゃんだけど、これからの動物園でそんな事も、楽しい思い出に変わるよねと、思う私だった。


 ☆


 チケットをそれぞれが買って、動物園の入場ゲートをくぐると、レンガが張られた広場が広がっており、右側には屋根付きの休憩所が有った。


「まあ……道なりに、進んで行けば良いか!」


 お姉ちゃんは、パンフレットを見ながらそう言い、前に進んでいく。

 私達はお姉ちゃんの後を付いて行く。


 私はお姉ちゃんの横では無くて、木華ちゃんの横で歩いている。

 そして、音羽ちゃんはお姉ちゃんの横で有る。

 私が気が付いた時、音羽ちゃんがお姉ちゃんの横にいた!

 音羽ちゃんは木華ちゃんとの距離を、置きだそうとしていた。


(中々、上手く行かないな~~)


 私は心の中で、ため息をついた。


 ……


 フラミンゴ、ゾウ、トラ等、定番の動物を次々見て回る。

 お姉ちゃんと音羽ちゃんはデジカメを持って来たらしく、お互い動物を撮ったり、私達を撮ったりしてくれる。

 音羽ちゃんの持って来たデジカメは、お姉ちゃんのより高級そうに見えた!


「じゃあ、音羽ちゃん!」

「今度はお姉ちゃんが撮ってあげるから、恵那達の中入って!!」


「わかりました~~」


 と、工夫し合って写真を撮っている。


「音羽ちゃんの写っているのは、後日プリントしたのを渡すからね!」


「あっ、ありがとうございます。お姉さん!」

「後……、出来ればデータも一緒だと嬉しいのですが…」


「あぁ、データもね」

「じゃあ、その時にメモリーカードも一緒に渡すね!」


「お願いします!」


 そして、そんなやり取りもしていた。


「ねぇ、ねぇ、恵那ちゃん!」

「恵那ちゃんは、デジカメに触った事有る?」


 木華ちゃんがデジカメに興味を示したらしく、私に聞いてきた。

 木華ちゃんの家はデジカメが無いのだろう。


「うん、有るよ!」

「凄く簡単に、綺麗な写真が撮れるんだよ!!」


「へぇ~、私も撮ってみたいな~~」


「じゃあ、お姉ちゃんの使って撮ってみる。木華ちゃん?」


 お姉ちゃんが私達の話を聞いていた様で、木華ちゃんに提案してくれる。


「本当に~~!!♪」

「あっ、でも……出来れば、音羽ちゃんのを使ってみたいな~~」


「えっ、私のやつを…!!」


 驚きの顔をしている音羽ちゃん。

 如何にも『さっきの事は、もう忘れたの!!』の表情をしていた。


「お願い!」

「音羽ちゃんのデジカメで、写真撮ってみたい!!」


「……」


 最初はちょっと怒った顔をしていたけど、段々淋しい顔に為って行き、最後は……


「木華、ゴメン。これは貸せない……」


「!!」


「!!!」


(何言っているの、音羽ちゃん!)

(それが友達に言う言葉!!)


 木華ちゃんは当然、寂しい表情に成ると同時に、私は何かが切れる音がして、音羽ちゃんに向かおうとした。

 友達のお願いを聞けない友達なんて、友達じゃ無いからだ!!

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