第29話 お見舞い その3

「はい?」

「どちら様ですか…?」


 玄関の引き戸が開き、相手が顔を見せる!

 私達は、親戚の人が出て来るばかりだと思っていたのに、顔を見た瞬間がっかりした。

 今朝出会った、木華ちゃんのお姉さんだからだ。


「あら…、あなた達はたしか、音羽ちゃんと恵那ちゃんだよね」


「はい。そうです。こんにちは」


「こんにちは!」


 2人揃って、木華ちゃんのお姉さんにあいさつをする。


「はい。こんにちは」

「それで、どうしたのかな?」


 お姉さんはそう言う。

 学校のプリントでも、持って来たのだと思っているのだろう。


「えっと今日は、木華ちゃんのお見舞いに来たのですが…」


 私がそう言うと、お姉さんは笑顔に成る。


「まあ。それはわざわざ、ありがとう!」

「木華も喜ぶわ。さあ、上がって!!」


「はい!」

「おじゃましま~す」


「おじゃまします」


 私達はお姉さんに案内されて、ある部屋に通される。

 見た感じ居間で有る様だ。


「汚い所ですが、まあ、どうぞ!」


 お姉さんは口でそう言いつつ、お客さん用の座布団を持ってきて、私達は通された部屋に座る。


「今、木華を呼んできますね!」


 そう言ってお姉さんは、隣の部屋に向かった。


「恵那ちゃん!」

「純和風って感じだね。私、座布団に座るの久しぶりだよ!」


 2人共、座布団には正座で無く崩して座っている。まぁ、問題無いでしょう!

 直ぐに隣の部屋から、木華ちゃんの声が聞こえて来て、ふすまが『ガラッ』と開く。


「恵那ちゃん、音羽ちゃん。来てくれたんだ~~!」


 何時も通りの、元気な木華ちゃんが私達の前に姿を見せる。


「木華。あ・い・さ・つ」


 後ろから、お姉さんの声が聞こえる。


「あっ!」

「こんにちは。恵那ちゃん、音羽ちゃん!」


「こんにちは、木華ちゃん!」


「元気そうだね…。木華!」


「うん、元気だよ!」


「もう、お腹は大丈夫なの。木華ちゃん?」


 私は木華ちゃんの様態を聞いてみる。


「もう、治っているよ。おかげでお腹ぺこぺこ~~」


 悪そびれなく言う木華ちゃん。


「まったく。食べ過ぎで学校休むから、どんなに酷いかと思ったら、全く元気じゃん!」

「もうっ、うふっ!」


 言葉はきつそうでも、顔は笑っている音羽ちゃん。

 木華ちゃんも、自分の席で有る場所に座り、お姉さんはお茶とお菓子を出してくれる。


 お姉さんも一緒に座るかなと思っていたけど、お茶を出したら何処かに行ってしまった。

 私達はおやつを食べながらしばらく談笑していると、音羽ちゃんがお姉さんの話題を出してきた。


「木華のお姉さんって、何かさっぱりしているね!」


「私も思ったけど、真面目と言うより、生真面目そうだね!」


 私と音羽ちゃんがそう言うけど、木華ちゃんは不思議そうな表情をしていた。


「う~ん、お姉ちゃん」

「たしかに真面目さんだけど、さっぱりしているかな?」


「何か、会話がしにくいと言うのかな。木華?」

「朝の時も用件言ったら、さっさと行っちゃうし…」

「さっきも、お茶を出したら、又直ぐに行っちゃたし!」


 まぁ、音羽ちゃんの言う通りだ。

 優しい人だと思うけど、少し冷めた部分も有った。

 けど、木華ちゃんは笑顔で言う。


「お姉ちゃん。ちょっと人見知りが有るから、それかも知れないよ!」

「家の中ではそんな事無いもん!!」


「それにお姉ちゃん。家事をしているから結構忙しいんだよ」

「ほら、今だって!」


 そう言って、指をさす木華ちゃんを見ると、外で洗濯物を取り込む姿が見られる。


「う~ん、人見知りなのかな…?」


 音羽ちゃんは少し不満そうながらも、それ以上の詮索はしなかった。


 ……


 2時間ほど、木華ちゃんの家にお邪魔してから家を出る。

 その帰り道。


「もう明日は、木華ちゃん学校に来れそうだね!」


「うん、そだね!」

「それより結局、親戚の人に会えなったね…」


 音羽ちゃんが親戚の人に会って見たいと言ったのだけど、その人は今日夜勤らしく無理らしい。

 その人が夜勤のおかげで、木華ちゃんは昼間1人で過ごす事なく、淋しい思いはしなかったらしい。


「家の馬鹿兄貴と見比べたかったのに、残念だな!」


「また、次の機会が有るよ!」


 こうして、木華ちゃんのお見舞いは無事終わった。木華ちゃんが元気なのが何よりだった。

 でも、木華ちゃんのお姉さんとは、もう少し仲良くしたかったなと私は思った。

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