こんなNTRがあってたまるかぁ!

透真もぐら

二親等ハンター(※グロ注意)





「ま、待ってよマリカ!嘘だと言ってくれよぉ!」


「ごめんねテツヤ。」


僕の目の前に立つ二人の男女。男はニタニタと僕を嘲笑し、女は申し訳なさそうに俯いている。


勇者トールと剣聖マリカだ。


なぜ往来の真ん中でこんなことになっているのか、状況を説明するのは簡単だ。


「ごめんなテツヤ!マリカは俺自慢のエクスカリバーにご執心なんだよ!な、マリカ。」


「あん!……トール♡」


どうやらそういうことらしい。


「なっ!?そんな…マリカ!嘘だと言ってくれ!」


「…ごめんねテツヤ、私の身も心もあなたにはもう向いていないの。もう離れてしまっているのよ。」


「そ、そんなぁっ……」



僕とマリカは幼馴染というやつだった。小さな村で二人仲むつまじく暮らしていた。


僕は彼女を好きだったし、彼女も僕を好きだった。


しかしある日のこと。マリカの中に眠る剣の才能を見出され、マリカは魔王討伐隊(勇者パーティー)の剣聖に選ばれてしまった。


このままじゃ二人離れ離れになってしまう。それは嫌だと自分を奮い立たせた僕は鎧騎士となるために猛特訓した。


そして長年の修行が花開いたのか、僕は奇跡的に魔王討伐隊の鎧騎士に選ばれたのだ。


それもこれも全てマリカと共にあるためだった。思い切って彼女に告白して婚約したばかりだというのに……。



「そんな…僕たちの長年育んだはずの愛はどこに行ってしまったんだ!?」


「ごめんなさいテツヤ。あなたよりもトールの方が地位も名誉あるし、お金もあるし、顔もいいし、エクスカリバーすごいし、華があるし、自慢できそうなの。」


「思ってたより打算的だぁ!」


逆にそんな女でいいのかトールゥ!?


「ちなみに新しい鎧騎士も雇ってあるんだ。つまりお前はクビってことだ。残念だったなテツヤ!!!」


「なっ!?なんてこった!トールお前どういうつもりだ!」


「どういうつもりも何もねぇ!ずっとお前が目障りだったんだよ!!お前がいなくなれば俺は思う存分俺様のパーティーの皆といちゃいちゃできるからよぉ!」


「!」


勇者パーティーのメンバーは確かに僕とトール以外女だ。まさか僕が知らない間にみんなトールの雌になっていたというのか!?いいなぁ!!!


「ち、ちなみにその新しい鎧騎士っていうのは…」


「俺の女だ!」


「いいなぁ!」 



血涙を流しながら悔しがる僕を尻目にトールとマリカが宿に入っていった。宿の扉からは勇者パーティーの一員である魔導士ケーナと聖女ハナカと拳闘士ナックが見えた。


いいなぁ!トール羨ましいなぁ!



「なんだよ!トールの野郎!僕より地位も名誉もあってお金持ちでイケメンでアソコ大きくて華があって人に自慢できそうだからって調子に乗りやがって!!!」


僕は拳を握り込む。きっと鬼のような形相を浮かべていることだろう。


「目に物見せてくれるわぁ!」



その日、一人のモンスターが誕生した。







「勇者トールのご帰還なりぃ〜!」


魔王四天王の一人を討ち取った大挙を祝うために勇者パーティーは王国へと帰ってきていた。


「あれが勇者トールよ。」


「きゃっ!イケメン、」


パレードの最中、村娘からの黄色い声援に思わずトールもほくそ笑む。


(テツヤがいなくなって半年。今ではもう勇者パーティーは俺のもんだ!みんな夜の具合が良くて助かるぜ!ぐへへ。)


真っ黒な腹の中でそんなことを考えているトールを乗せてパレードの車は王宮への道を走って行く。


王宮では祝福パーティーが開かれる予定である。適当に使用人を誘って遊びまくる気満々のトールは楽観的なまま王宮へと向かった。


そこにモンスターがいることも知らずに。



「勇者トールおよびそのパーティーよ。此度は魔王四天王討伐、誠に大義であった。」


「はっ!」


「うむ。今宵は勇者パーティーの栄光を祝おうではないか!乾杯!」



国王の挨拶が終わり、王宮ではたくさんのお偉いさんが食事やダンスを楽しんでいる。


早速かわいい女の子を物色しにいきたいトールだったが、色々な人に挨拶をしなきゃいけない。


(くぅ〜!勇者はつらいぜ!さっさと済ませよう。)


ニコやかな表情とは裏腹にそんなことを考えながらトールは挨拶を済ませて行く。


「トール、私足が疲れちゃった。」


「なーにマリカ。もう少しで楽しい楽しいミッドナイトがフィーバーするからルックフォワードしておけ。」


「うん!」


女を堕とすのもチョロいぜとついつい笑ってしまう。


「!」


しかしここでとんでもない光景がトールの目に入る。トールの姉と妹にあたるアミとマミが一人の男の腕にすがり寄っているではないか。それも発情期の猫のような顔で。


一体誰だと目を細めて見れば、たちまちトールは顔を青白くしてしまう。


駆けるように姉妹の元へ駆け出し、傍らにいる男の腕を掴み上げた。


「おいテツヤ!これは一体どういうつもりだ!」


そう、トールの姉妹を侍らせていたのはまぎれもなく自分が追い出したはずのテツヤだった。


このことにはトールも驚きを隠しきれない。


「なんとか言ったらどうなんだテツヤ!」


再度恐喝するようにテツヤに叫ぶ。すると、トールの予想とは違うものが反論してきた。


「トール!なんて失礼なの!テツヤちゃんに謝って!」


「そうだよトール!テツヤお兄ちゃんに謝って!」


「!?」


トールはあまりのショックに白目をむく。つい半年ほど前までは自分が"トールちゃん"、"トールお兄ちゃん"と呼ばれていたのだから当然のことである。


一体どういうことなのかと説明を求めるためにテツヤを見れば、テツヤはトールをニヤニヤと見ていた。


そしてトールの近くまで行き、そっと耳打ちをする。


「お前の姉ちゃんと妹、夜も最高だぜ。アミはなんかすごいグラマーだったし、マミはなんかすごいセクシーだった。」


「!?」


「あとお前の母さんもすごかった。なんかすごいリビドーがアレだったわ、本当。」


「!?!?」


「あとお前の叔母さんもやばかった。なんかすごかった。すごすぎて全然覚えてないけど、なんかすごかったなぁってのはもうなんかすごい頭の中に残ってる。」


「!?!?!?」



これには天下無双のトール様もびっくりである。自分の親戚のほとんどが自分が捨てた男に食い荒らされている。しかもなんかすごい頭悪い喋り方の男にだ。


ちなみにトールの母にも叔母にも夫がいる。つまり色々拗れているのだ。もし父と叔父がこの事態を知ればどうなるだろう?もしテツヤが押し切ってしまえば…


(テ、テツヤが俺の義兄で義弟で義父で叔父になるのか?)


そんな最悪の未来を想像し、トールはその晩を楽しむことなくすぐにベッドに入った。



そしてそれから一年の月日が流れた。







「勇者トールおよびそのパーティーよ。此度は魔王討伐、誠に大義であった。」


「…………」


「? 今宵は勇者パーティーの栄光を祝おうではないか!では皆の衆、乾杯!」


国王のありがたい話も全然頭に入ってこない。


一年前のあの日から、トールの夢の中にしばしばテツヤが出てくるようになった。


夢の内容はいつもいつも、あいつが自分の義兄で義弟で義父で叔父になる夢である。


おかげでトールは不眠症気味になり、顔の艶もなくなっていった。おかげで僕の自慢のエクスカリバーももう役に立たない。ていうか勃たない。


(あ、あいつはどこだ…どこにいる!?絶対にこの場にいるはずだ!)


目を血走らせパーティー会場をくまなく探すトール。そしてテツヤと思わしき後ろ姿を見つけた瞬間、トールは駆け出した。


「!」


しかし、すぐさま止まるしかなかった。それほどまでに醜悪で恐ろしい光景が目の前に繰り広げられていたのである。


「テツヤく〜ん!私足が疲れちゃった〜!」


「ったく!しょうがねぇな…僕がおぶってやるよ。」


「あ〜!ずる〜い!私も抱っこ抱っこ〜!」


一年前よりもひどい様子でテツヤに甘える姉妹の姿、ではない。


そこにいたのは、テツヤの腕に発情期の猫のような顔をして擦り寄っていたのは何を隠そうトールの父と叔父だったのだ。


「……っ……………!?」


これには天下無双のトール様も絶句である。そして何よりもトールの恐怖を駆り立てたのは何を隠そうテツヤの左手薬指に巻かれた大量の指輪である。


(もしあれが…母さんたちのための婚約指輪なら……)


トールは自分の呼吸が乱れていくのがわかった。しかし彼を支えてくれる者は誰もいない。


この一年間で勃起不全と不眠症のせいでその魅力を半減、いやほとんど喪失してしまったトールは今はもうスターの面影も残されていなかったのだ。  


おかげで勇者パーティーの女の子たちももうトールには見向きもしない。あんなにラブラブだったのに。


「……っ!」


呆然としたままむさ苦しい男三人を見ていると、テツヤと目があってしまった。


テツヤはニタニタと笑い、トールに口パクで話しかける。トールの勇者ならではの発達した動体視力が不幸なことにソレを捕らえてしまった。



『義兄で義弟で義父で叔父で義母で叔母になりました。幸せな家庭を築きます。』



「ひぃぃっ!?」


なんということか、あの悪夢は正夢だったのだとトールの全身をヘドロのような電流が流れた。


「トール。」


「!」


どのぐらい呆然としたしていたのだろう。気づけばテツヤはもうすぐそこまで来ているではないか。


「魔王討伐お疲れ様。」


「あ、ああ…。」


「ほら、今日はお前のためのパーティーなんだ。そんな辛気臭い顔するなよ。」


そう言ってテツヤが盛った料理をトールに渡してくる。トールはそれを受け取り、怯えたような目つきでテツヤを見つめていた。


そんな状況を許さないのがトールの父である。


「トール、食べなさい。」


「!…お、親父。」


「テツヤくんの料理が食べれないのか!バカ息子が!」


「!?」


実の父の表情にトールは見覚えがあった。自分のハーレムだった勇者パーティーの女の子がトールに立ち向かう者たちに向けていた敵意の目だ。


つまり父はテツヤに本気で恋している。


「ぐぅぅ…」


気づけば、トールの頰に一筋の涙が。ぼやけた視界でトールはテツヤの差し出した料理を手に取った。


もう食べるほかない。食べなきゃ自分の家族があんな目やこんな目にあうかもしれない。


(な、南無三…)


ガクブルと震える手でテツヤの料理をかき込んだ。



———ドクンッ!!!



食べた途端、トールの心臓が跳ねた。


(これは…媚薬!?)


理性が薄れゆく意識のなか、トールがなけなしの力でテツヤの左腕をつかむ。その時、トールは気づいた。


左手の薬指に指輪が7つあることに。


トール姉

トール妹

トール母

トール叔母

トール父

トール叔父


じゃああともう一人は?


「う、うわあああああああああっ!?!?!?」


顔を青白く染め全身の力が抜けていく一方、トールの股に猛き力と熱が集まっていく。



エクスカリバーが勃った。



「はぅあっ!?」


トールのエクスカリバーをテツヤが握った。トールは頰を赤く染め、泡を吹き、白目を剥く。


「7人目は…お前だああああああっ!!!」


ボロンとテツヤが自前のグングニルを晒した。


エクスカリバーとグングニル。二つの神器が絡み合い、溶け合い、交わり合う。




そして二人は神話になりましたとさ、めでたしめでたし。

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