第18話 …てへ
《テュファネ視点》
「さーて、敵の根城はどっこかな〜」
ごほん、えー今回は私の方から実況させてもらいます!
現在、木の上を伝って敵の根城捜索中でありますが、これがなかなか難しい…
敵はアルが引き付けてくれてるから追手などは来てないのが幸い、という感じです。
「早くしないと、アル怒っちゃうかな?」
怪しい気配はここらからするんだけど、それらしきものが何もない。
仕方ないか、近くにある事は確実なわけだからアレを使っちゃおうかな?
私は先程アルから受け取ったある物を取り出します、勿論ある物とは…
「じゃじゃーん、これがあれば木っ端微塵、気になる汚れもなんのその!超強力爆弾!」
そう、これはアルから教えてもらった、敵がどこにいるか分からない時の対処法。
周辺にいることさえ分かっているなら吹き飛ばしちゃえば万事解決!
「というわけで、吹っ飛んでちょうだいなっ」
私は爆弾に火をつけ、投げてからすぐにその場を全力離れる。
巻き込まれたら嫌だもんね。
じゃあみんなも一緒に!3.2.1...
ーーーーー
いい加減、狼の相手にうんざりし始めた頃、遠くから鼓膜が破れるのではないかというほどの爆音が響き、ものすごい風に吹き飛ばされそうになります。
なんとなくは察していますが、音の方を振り返るとやはり黒煙が上がり、階層の天井に広がっています。
「これはこれは、流石おじさんシリーズの超強力爆弾ですね…」
思っていたより威力が凄まじいですね、テュファネの事ですから大丈夫でしょうが、少し心配ですから早く向かいましょうか。
ていうかあの威力、元の世界でも普通に持ってたらなんらかの罪で捕まりそうな威力です、なぜおじさんはそんな物持ってたんでしょうか…
とりあえずそれは置いておいて、やはりテュファネの索敵能力には感心します。
爆弾を使ったという事は完全に根城を見つけたわけではないのでしょうが、たった2時間ほどで大体の場所を割り出したわけですから。
「ア〜ル〜」
しばらく歩くと、土で全身汚れ、涙目で地面に転がっているテュファネがいました。
あらあら…
「索敵ご苦労様です、無事そうで良かったです」
「無事じゃないよ〜、何あの威力〜聞いてたより強いんだけど…」
テュファネによると爆発からは逃げ切れたそうですが、爆風に吹き飛ばされ地面を転がった結果今の状態になったそうです。
ふむ、確かに予想より強い威力ではありましたね。
「…てへ」
「罰として街に戻ったらお酒を浴びるほど奢ってもらうからね」
むぅ、誤魔化されてはくれませんか…
「分かりました、いくらでもご馳走しますよ」
「わーい、アルが破産するまで飲むぞ〜」
まあ、恐ろしい子。
とりあえず、テュファネの体を拭いて服を着替えてから、敵の根城があるであろう場所へ向かいました。
目的の場所へ着くと、まあ綺麗に消しとばされていました。
あの爆発でしたから、当然こうなりますよね。
「あ、あれじゃない?」
テュファネの指さした方を見ると、そこにはボロボロになった老婆が苦しそうに唸っていました。
咄嗟に防御したようですが、アレの様子では放っておいても大丈夫そうです。
「よくも…よくもよくもよくもよくもよくもよくも!」
「すっごい怒ってるね」
「そりゃ、そうでしょう」
老婆はバッと手を広げ、よく聞き取れませんが呪文を唱え始めます。
黒い魔法陣が老婆を中心に広がり、階層の至るところから黒いモヤが集まって来ました。
これは、確実にまずいやつです。
私は剣を抜き、即座に老婆を仕留めるため、地面を踏み込んで一気に距離を詰めます。
そして老婆の心臓目掛け剣を突き刺します。
「なっ!」
私の剣は老婆に突き刺さることなく、老婆の手とは思えないほど、綺麗な白い手に掴まれていました。
老婆の顔を見ると、もはや老婆とは呼べないほど若い女性の顔になっており、口角が上がりニヤッと笑いました。
そして女性の力とは思えないほどの力で剣ごと私を投げ飛ばしました。
どうにか空中で体制を立て直し、剣を地面に刺して勢いを弱め、着地してから老婆だったものを見ました。
やはり若返っていますね、それにこの力、どんなカラクリなんでしょうか。
「アル、大丈夫!?」
「問題ありません、それより…」
駆け寄って来たテュファネを手で制し、老婆…ではなく魔女と呼びましょうか。
魔女を警戒し、剣を構えます。
「あぁ、可哀想…ワタシの可愛い狼達…痛かったでしょう…これからはずっと一緒よ…」
魔女は自分の体を抱きながら、嬉しそうに笑います。
発言からして、あの集まって来た黒いモヤは狼の魂か何かでしょう、その魂の力で若返ったと。
ただ若返っただけなら良かったのですがあの筋力、正直まともに喰らえばタダではすみそうにありません。
それに加えて精霊術を使う可能性があるとなると、どう対処したものか…
また爆弾で吹き飛ばしたいのは山々ですが、その隙も与えてくれそうにないですね。
「厄介な…」
私は身体強化と武器への魔力付与を行いました。
これでようやく五分五分といったところでしょうか、ですがこちらにはテュファネがいます。
彼女には援護に回ってもらえばなんとか倒せない敵ではありません。
「援護、任せます」
「はいよ、任された!」
それでは、やりますか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます