転移したら知らない場所でした! 〜私は何処にいるのでしょう〜

豆腐メンタル

転移失敗!

第1話 転移失敗

私はパチっと目を覚まし周囲を見渡しました。

 周囲には先ほどまで鞄に詰めていた荷物が散乱しており、いくつかは土で汚れてしまっています。

 家を出る前、綺麗にした自慢の銀髪も土で汚れてしまい最悪な気分です。


「あぁ、最悪です。せっかく綺麗にしてきたのに……」


 思わずため息をついてしまい、私は若干痛む体をゆっくり起こしました。

 髪についた土を落として周囲に散らばった荷物を拾い集めます。

 どうやら荷物は全てあるようでひとまず安心し、改めて周囲を確認しますが……


「ここ、どこ?」


 というか、どうしてこんな状況になっているのでしょうか?

 一度冷静になって思い出してみましょう、まず魔法大学を卒業して旅の準備を始めたところから……



ーーーーーーーー


 魔法大学では下三級、下二級、下一級、中三級、中二級、中一級、上三級、上二級、上一級、超級、の資格があり卒業するには中三級以上を取得しなければなりません。

 私、アルミット・テラスティアは中一級の資格を手に入れ3年で卒業し、さらに魔法の技能を成長させる為に旅に出ようと準備をしていました。

 見た目は小さいが中には大量の荷物の入る魔法鞄に魔導書や食料、野宿セットなど旅に必要なものを全て入れて、さあ出発!と家を出ようと玄関の扉に手をかけるとガチャッと真後ろにある親の寝室が開く、すると私と同じ銀髪でキリッと鋭い目をした若い女性、つまり私の母親が出てきました。


「アルミット、どこへ行くのですか?」

「えっと……」

「ど、こ、へ、い、く、の、で、す、か?」


 ゴゴゴゴ…と聞こえてきそうな程、母様から恐ろしい気配を感じます。

 何をそんなに怒っているのでしょうか?

 まさか、裏庭に魔法の練習で大穴を開けたことを怒っているのでしょうか?


「な、何をそんなに怒っているのですか、母様!?」

「ふふふ……いえいえ、何も怒ってなどいませんよ」

「嘘です!その顔は怒ってる顔です!」


 笑顔だが目は全然笑っていない、この顔は絶対に怒っている顔です!

 母様はスッと杖を取り出し、瞬時に私の背後にある玄関を氷漬けにしました。


「ひっ!?母様、一体何を……?」

「16年間苦労して育てた娘が、何も言わず勝手に旅に出ようとしているのですよ?」


 反対されると思い、黙って書き置きだけで出て行こうとしたのがバレたらしい、なるほどそれで怒っているのか。


「黙って行こうとしたのはすみません!謝りますのでここを通して欲しいのですが……」

「なりません」

「何故ですか!?」

「あなたは中一級とはいえまだ16歳、1人で旅をするには早すぎます。ただでさえ身長も低くて子供に間違えられることがあるというのに、攫われでもしたらどうするのですか?世の中を甘く見ないことです」


 うぅ…確かに母様の言う通り私の身長は150センチと低く大学でも子供とよく間違えられていました。


「母様の心配はもっともですが、私は……」


 母様は風魔法で私の部屋の扉を開き、戻りなさい、とサインしてきました。

 私は深いため息を吐き、とぼとぼと部屋に戻る。

 ふふふ……予想通りです。

 私はこっそりと微笑みました、こうなった場合の対策はしてあるんですよ。

 魔法鞄から私はある箱を取り出します、箱の中にある物とはつまり、空間転移装置(使い捨て版)。

 大学の同級生に頼んで作ってもらいました、ありがとう、感謝しますよミリナ!


「ふふふ、勝った……!」


 私は部屋の扉を、先ほどの母様と同じように氷漬けにしました。

 これで簡単には入ってこれないでしょうから、転移までの時間は稼げます。


「では、転移開始です!」


 私は転移装置に魔力を込めます。

 転移装置から魔法陣が出現し部屋一面の大きさまで広がったので後は待つのみです。


「アルミット、部屋から魔力を感じますが何をしているのですか?」

「へ!?……いや!あのですね!魔力の制御練習をしているのですよ!」


 しまった……!思いの外早く気付かれてしまった!っていうか早すぎる!感知できないように結界魔法を貼っていたのに!

 私は転移装置にさらに魔力を込める、きっとこれで転移までの時間を短縮できるはず!多分!


「制御練習…ですか?いつもより使用魔力が多いように感じますが?」

「それはほら!あれですよ!いつもより気合を入れてるんですよ!」


 ガチャガチャ!と母様が部屋の扉を開けようしています、私はまずい!と思いさらに魔力を込めました。


「あら……開かない、この部屋に鍵などなかったはずですが?早く開けなさい、開けないのなら」


 部屋の外からとてつもない魔力を感じます……!

 母様は上二級魔法使い、そんな人の魔法を食らってはひとたまりもありません!


「覚悟なさい」

「いやーー!!待って母様!」

「問答無用……!部屋ごと吹き飛びなさい!」


 母様の魔法が部屋に直撃した瞬間、私は転移したのであった、母様が放った魔法の爆風ごと……


ーーーーーーーー


「なるほど……荷物が飛び散っていたのは母様が放った魔法の影響ですか」


 とりあえずここで寝ていた経緯は分かった、でも本当にここはどこなのでしょうか?

 私の周囲は生い茂る木々と透き通った綺麗な泉のみ、これでは情報が少なすぎます。

 そもそも、あの転移装置の行き先設定はどこになっていたのでしょうか?

 疑問に思い転移装置の入っていた箱の中にある説明書を読むことにしました、そして衝撃の記述が最後の方に小さな文字で載っていました。


『この転移装置の行き先はランダムで〜す!ごめんね〜!私には行き先を指定出来るほどの実力はまだ無かったって事なのさ!今度に期待してね!』


「な、な、なんですかそれー!」


 森の中に私の叫び声だけが響き渡ったとさ。

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