お話しのカゴ_2個目
light_2021
正夢?
ざわざわざわざわ。
卒業生やその保護者達が校門を出てきます。
校門で記念写真を撮ったり、友達同士で別れを惜しんだり。
そんな中、このような会話が、あちこちでされてました。
「なんか、いい卒業式だったね」「面白かったね」「心に残る卒業式だったね」
「こういうのもいいんじゃない」
ここに無気力な高校生の青年がおりました。
何をやっても、長続きしません。高校も惰性で入れたような感じです。
入学式を終えた夜のこと。
「あれ?ここって、○○高校かな」
「僕って、昨日入学したばかりだよな」
「でも、光陰矢の如しっていうし、もう卒業なのかな」
青年は、あきらめというか、身を任せるというか、流れには逆らわないでおりました。
でも、見る光景は、予想と違いました。
高校3年間で立派に成長したと思われる青年は卒業生代表として、卒業証書を受け取っています。とってもとっても輝いていました。明るい未来が待ち受けていて、前途洋々、周りからもとても期待されています。
と、ここで夢が覚めました。
青年は、この夢は正夢との確証がありました。
理由はありません。ただ、今までの夢とも違い、あまりにもリアルでした。
青年も正夢と感じたのです、これは正夢を見た人にしかわからない感情でしょう。
それからの青年は、一変しました。
何事にも熱心に取り掛かり、勉学にスポーツに充実した高校生活を送りました。
両親も、あまりの変わりようにびっくりです。
そうして、あっという間に3年間が過ぎ、卒業式を迎えました。
青年は学年上位の成績、スポーツでも大活躍を見せましたが、でも卒業生代表とはなりませんでした。
しかし、良い習慣は良い結果をもたらします。
青年のその後の人生も充実した人生を送りました。
そうしているうちに、青年だった男にも家族ができて息子が出来ました。
息子が高校の卒業式を迎えるとき、青年だった男は「ここだったか」と考えました。
そう正夢のシーンです。
でも、違いました。息子も卒業生代表ではありませんでした。
そうこうしているうちに青年だった男も年を取ります。
教員職についていた男は母校の校長先生になりました。
校長になって、初めての卒業式です。
形式にうるさい教頭先生に「やれやれ」と思いながらも、そつなく校長の役割を務めるつもりでおりました。
卒業式が始まります。
卒業証書授与が始まりました。
卒業生代表が校長である男の前に近づいてきます。
「あーっ!これだったのか!!!」
校長先生、いきなり叫びました。周りはどよめきます。
そう。青年が見ていた正夢のシーンは、今回の卒業式だったのです。
今年の卒業生代表は、明るい未来が待ち受けていて、前途洋々、周りからもとても期待されて、輝きに満ちておりました。
「しっ、しつれいしました。」
校長先生が、そうつぶやくと、どっと笑いが起きました。
校長先生は、心が震え感動で涙しています。
こんどは周りも感化され、感動の嵐です。
そうして大変盛り上がった卒業式も、校長先生があいさつする番になりました。
とても熱いまなざしで、校長先生は語り始めます。
「卒業生の皆さん!夢は必ず叶います!私も叶いました!今、私は感動で身が震えております。だから、皆さんも夢を見ましたら、それを諦めず、いつまでも追い続けてください!」
校長せんせ~い、ポイントずれてますよ(苦笑)
おわり
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます