02.11.誕生日

 「そら、誕生日を教えて」


 いつものように三人でのバスタイム。仲良く体を洗いあっていると琴乃ことのそらに誕生日を尋ねてきた。


 「いいけど、どうしたの? 急に」


 「好きな男の誕生日ぐらい知っておきたい、嫁として。あと、血液型と盛ってみたい食材も」


 「盛らないから……」


 「盛らないの?」


 「まあ、盛るかどうかは置いとくとして、そういうのは私も知っておきたいですね。急な引っ越しで忙しかったですが、こうしてゆっくりできるようにもなってきたことですし」


 大量の泡で胸を盛り上げた真耶まや琴乃ことのに同調する。


 「確かにそうだね……。特別な関係なんだよね、僕たち」


 「恋人……ですかね。ええ、私はそらの恋人です♪」


 「恋人……、ありがとう、真耶まや


    セフレじゃないんだ……

    真耶まやは僕の恋人


 真耶まやがセフレでないことを嬉しく思ったそらは期待を込めて琴乃ことのを見つめるのだった。


 「嫁」


 照れくさそうに答える姿に愛おしさが込み上げてくる。


 「ありがとう、琴乃ことのも」


    琴乃ことのもセフレじゃないんだ……

    嫁っていい方はあれだけど、恋人ってことでいいんだよね

    でも、二人はそれでいいんだろうか……

    僕は琴乃ことの真耶まやと両方と……


 「ずるいですっ、だったら私もお嫁さんですっ」


 「お嫁さんじゃない、嫁」


 「同じじゃないですか」


 「同じじゃない」


 泡で作ったおっぱいを琴乃ことのがパチンと叩き潰す。


 「何するんですかっ!」


 「真耶まやは平らな方が似合ってる。そら真耶まやの平らなお胸が好き」


 「そうは言ってくれていますが、いいじゃないですか少しぐらい。私だって大きな胸に憧れがあるんですから。そもそもそらは私の事をどう思っているのですか? まさかセフレだなんて思ってないですよね」


 「思ってないよ。真耶まやが恋人だって言ってくれるなら僕も恋人でいたい。真耶まやだけじゃなくて琴乃ことのとも恋人でいたい。でも……、いいのかな、そんなの。普通一対一だよね。なのに……」


 「他人がとう思うかは関係ない。当人たちが良ければそれでいい。ちなみは琴乃ことの真耶まやも好き。特に平らなお胸が」


 「酷いっ、私も琴乃ことのさんの事好きですよ、ちっちゃくて可愛いとことか……、おおきな胸とか……、ううっ……、羨ましい……」


 そらは二人を抱き寄せた。


 「そら、急にどうしたのですか?」


 「したくなった?」


 「ありがとう、真耶まや琴乃ことの


 「そら……、お礼をいいたいのはこっちですよ。無理矢理押しかけちゃったみたいなのにこうして受け入れてくれて。でも一生離れないですからね。覚悟して下さい♪」


 「琴乃ことのもずっと一緒。皆んなで仲良く暮らす」


    それって重婚なんじゃ……

    今は考えなくてもいいかな


 そう思わなくもないそらだったが、今は考えない事にした。同時に付き合おうとも本人同士が納得しているのだから問題ないのだと。

 ゆいとの結婚を目標としていたそらだったのだが、そのためには二人との関係に終止符を打つ必要がある。


    できないよ、そんなこと……

   ゆいさんの事は……


 諦めよう。そんな思いが強くなっていた。恋人ではない只のセフレ、琴乃ことの真耶まやが居てくれれば十分だと。


 「そら、誕生日」


 そらがあれこれ考えていると、琴乃ことのが話を戻した。


 「じゃあ、私から。私はなんと! 7月7日。やっと巡り会えましたね、彦星様!」


 「う、うん……そうだね、織姫……」


 「どうかしましたか?」


 「僕も7月7日」


 「うそっ……、ほんとに運命……」


 「ううう、琴乃ことのも同じ。琴乃ことのも織姫」


 「すごいっ、そんな偶然って……、ううん、運命なんですもの、当然です♪」


 「うん。と、当然……」


 後に解る事となるのだが、琴乃ことのの誕生日は9月9日なのだった。


 「じゃあ血液型は? 私はA。そらもAですよね?」


 「うん」


 「すごいすごい、ってことは琴乃ことのさんもA?」


 「も、勿論……」


 Oである。


 「こうなる運命だったんですね〜」


 偶々誕生日と血液型が一致しただけだというのに大喜びする真耶まやそらに抱きつき、頬擦りまでする始末だ。


 「(琴乃ことの、気にすることないからね)」


 耳元でそう囁き、そら琴乃ことのを抱き寄せた。



    ◆◆◆◆◆ ❤♀♂♀❤ ◆◆◆◆◆



 三人がイチャイチャしている中、そらのスマホにメッセージが届いていたのだが、そらが返信したのは翌朝の事。


    “忙しいから無理”


 短く一言だけの返信だった。

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