桃太郎外伝-新説 鬼ヶ島ー

美月 純

第1話

昔むかしあるところの人里離れた絶海に鬼ヶ島という孤島がありました。


そこでは、鬼たちの家族が、田や畑を耕し、自給自足をしてつつましやかに生活をしていました。


幸いなことに島では鉱物資源が豊富で、金銀や宝石なども採れました。


そこで、時折人間に化けて人里に出て、宝石をいくつか売って生活に必要なものを買うなどしておりました。


人里の市場で時折金や宝石を売りに来る者たちのことを見ている村の若者がいました。


「あいつらどこであんなお宝を見つけてくるんだろう?」

そう思って見ているとある考えが浮かびました。


「そうだ、奴らが引き上げる時あとをつけてやる。ひょっとするとすごいお宝を隠し持っているかもしれねぇ」

そうつぶやくと市があけるまでジッと待ちました。


日が落ち始めた頃、店をたたみ始めた宝石商を見て、若者はその行動を目で追いながら移動をするタイミングを測っていました。


「おっ!動き始めた」

そういうと宝石商に気づかれないように、一定の距離を空けて後についていきました。


前を歩く宝石商の連中からかすかに喋り声が聞こえました。


「今回も宝石は完売、その金でたくさんの日用品も買えたな」

「ほんに、有難ありがたいことだ。贅沢をしようとは思わないが、宝石はまだまだあるから少しずつ売れればいい」

若者は色めき立った。


「あんな宝石が"まだまだ"あるだと、こりゃなんとしてもありかを突き止めてやる」

しばらく行くと一行は海岸に出て、停めてあった船に乗り込みました。


「ちっ、海を渡る気か。どこかに船はねぇかな」

若者が探していると、都合よく手漕ぎの小さな船が海岸に停められていました。


「ちょっと借りるぜ」

誰に断るでもなく船を拝借すると、宝石商の一行の後を追い海に向かって漕ぎ出しました。


もう1時間くらい漕いだ頃でしょうか、一向に島など見えず、宝石商の乗った船はひたすら海を渡っていました。


流石さすがにきついな、相手は数人いたから漕ぎ手も交代できるが、こちとら独り、体力がもたねぇ」


そんな弱音を吐いた所で先に行く船が少し速度を落としました。

その動きに気づき、船の向かう先を凝視すると、夜の星明かりの中に微かな影が見えてきました。


「島か?」

若者は手漕ぎにも力が入り、その影に向かいました。


「島だ!」

確かに目の前に明かりが灯った島が浮かび上がってきました。

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